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1話 プロローグな非日常

「行くよ皆!」

「えぇ!」

「はい!」

「あいよ!」

「まっかせて!」

『ハァァァアアア』

『ライトスクリーム・フラッシュソード!!』


とある町の一角、そこで怪人「タートル・バックシールド」とヒーロー少女グループ「ライトル・ヒロインズ」の戦いが行われ、そして今まさに佳境だった。

ライトル・ヒロインズが怪人タートルへと必殺の一撃を繰り出したのだ。

ライトルのメンバー5人の力を纏め、5色の光が混ざり合った巨大な光の剣を生み出し、それをタートルへと向けて振り下ろした。


「なっ!? ぐっ、バックシールド全開だぁ!!」


対してタートルは自身の最大の盾である背中の甲羅こと「バックシールド」に両手足と頭を収納、更に自身のエネルギーの殆どを注ぎ込みバックシールドから緑色の光の盾を作成して立ち向かう。

とはいえ……


「いやー、無理でしょアレは」


そう遠巻きに見ながら呟くのは俺こと狼怪人。

名前はブルーウルフ・サイバネティクス。

尤も、後半のサイバネティクスは俺の体が初めて機械と同化した時に追加されたので、正式にはブルーウルフで良いんだが。

話が逸れたが今はタートル・バックシールドの最後の抵抗についてだ。

確かにタートルは高い防御力を持つ怪人として生み出された。その防御力は確かで、あいつのバックシールドならヒーロー達個人の必殺技なら全て防ぎきる事が可能とシミュレーション結果が出ている。

が、残念ながらそれらヒーロー達の個人の必殺技の話だ。

今繰り出されているのは、5人のヒロイン達全員が全力を注ぎ込んで作られた必殺技。


ぶっちゃけ5人の合体技である。


そら1人の攻撃に対しては絶対の防御でも、5人の全力が注がれた必殺技相手になると、それこそ出撃したばかりの元気満タン準備万全なタートルならどうにか耐えれるかもしれない。

しかし、ここまでの戦いでタートルも疲弊している。万全でも防げるかどうか、な攻撃に対して弱ったタートルの守り。

結果は当然ーーー


「ぐっ!? わ、私の絶対防御がぁ!?」

『いっけぇぇぇえええ!!!!!』

「ぐはぁぁあああ!!」


光の剣はバックシールドの生み出した盾を貫き、光の本流に飲まれたタートルはそのエネルギーで消滅間違いなし。

南無南無、と意味があるかは分からないが両手を合わせておいた。

さてさて今回も無事(?)敗北を喫した訳だが。


「今回も僕達の勝ちだ、どうするブルーウルフ」

「そう睨むなよ、レッドイーグル……今はプロミネンスだっけ? それともサンライト?」

「プロミネンスで合ってるよ」


俺に声をかけてきたのは、今まで俺が戦っていたヒーローにして世間の扱い的には俺のライバル。

炎と鷲の力を持ち、鷲をイメージしたアーマーを纏っている赤いヒーロー、レッドイーグルだ。

こいつも俺と同じくーーーレッドイーグルの場合は俺のサイボーグ化と違って正当進化って感じだがーーー後付けで強くなっているタイプ、故に強化形態によって名前が変わる。

が、レッドイーグルは後付けの強化が多過ぎてファイヤーとかとアポロニスとか、ころころ名前が変わるからこいつの正式名を一々覚えられる気がしない。

だから結局レッドイーグルで通している。


「今日もスタコラサッサと逃げ帰るだけさ」

「なら僕もいつも通りに阻止させて貰うよ」

「ははっ、そんな大口は成功させてから言えよ」


レッドイーグルと軽口を言い合いながら、同時に右手を掲げる。

サイボーグ化したことで、特殊合金の爪とエネルギー砲を備えた俺の右手。

それを向ける先はーーー


「お前に追われながらでも、弱ってるお前の後輩を殺す位は訳無いぜ?」

「っ! ライトルズ!!」

「オラアッ!!」


タートルとの戦いで全力を出しきったライトル・ヒロインズ。略してライトルズ。

タートルという強敵を倒した事で、どうしても緊張は緩んでいる。

別にそれは悪いことじゃない。

どれだけヒロインとして、戦士として戦うことを選び覚悟を決めていても……いやむしろ、だからこそ強敵を倒した時の油断ってのはあるものだ。

タートルの奴、ライトルズがあの合体技を発動するまではかなりいい線行ってたからな。


そんな強敵を皆で力を合わせて倒した。


うーん、実に良いシチュエーションだ。

その高揚感と満足感、そしてチームが1つになった一体感の充足感たるや。

彼女達は今、有頂天になっていること間違いなしだろう。

そしてそれは不意打ちを叩き込む上でこれ以上無い、絶好のタイミングだろうな。


「? イーグルさん、どうかーーー」

「っ!? しまった、皆逃げるわよ!」

「とにかくここから離脱を!」

「へっ、てヤバ!?」


ほうほう。

俺の攻撃とイーグルの警告に正しく反応できたのは5人の内3人かな?

最初にイーグルの警告に反応したのはライトルズの中心、パールホワイト・ライトル。

ただしイーグルが何か言ったのを聞いた、程度の認識だな。25点。


次にイーグルの警告から俺の攻撃に気付いたのが二人。

赤色のルビーレッド・ライトルと青色のサファイアブルー・ライトル。俺の攻撃に気付いて回避の選択と仲間への情報共有、悪くない反応だ。

50点をあげよう。


続いてイーグルレッドの言葉を聞いて全力で逃げようとしてるエメラルドグリーン・ライトル。

俺としては自分だけでも生き残ろうとするのは良いと思うけど、チームの一員としてそれは如何な物。って言っても俺はチームらしいチームを組んで戦った事が無いからな、チームとしてのノウハウとか知らんしとりあえず40点としておこう。


最後、ルビーに言われるまで完全に終わったと気を緩めていたシトリンイエロー・ライトル。

もう動き出しが遅い、常在戦場とまでは言わないけどまだ戦いは終わってない自覚は持とうぜ。

でも確かこの子だけ他のメンバーよりも年下と聞いたな……いやでも戦場で年齢とか関係ないか。残念ながら15点です。


「んー、ぼちぼちだなぁ」


とまぁ、俺の攻撃への対応の仕方でライトルズの面々に点数を付けてみましたが、残念な事に及第点の60点をあげられる子は居なかった。

レッドとブルーは悪くないんだけどねー。

だが回避を選んだのは良くない、俺の目的はレッドイーグルから逃げられるように時間を稼ぐ事。


そしてその為に、レッドイーグルを彼女達(ライトルズ)の防御に向かわせる事。


つまりは、ライトルズに避けられるのは論外。

発射したエネルギー弾は、その為の仕掛けを施した一撃だ。

あの攻撃はまず、発射した直後は一発の弾丸として真っ直ぐ飛んで行く。

しかしある程度飛んだ時点でこの攻撃は第二段階へと移行、エネルギー弾が弾け上がるのだ。

具体的には第二段階に移行した時点でこの攻撃は飛行を停止、込められたエネルギーを無数の弾丸として上空に射出する。

そして最終段階。

空中に上げられた無数の小型エネルギー弾がまるで雨のように降り注ぐ。


「なっ……」

「う、そ」

「しまった!? 皆さんガードを!!」


その範囲は広い。それこそ今のライトルズ達では範囲外に逃げられない位。

なので、ライトルズ達の正解の対応は「避ける」ではなく「全員で固まって全面防御」となる。


ま、それをさせないためにわざわざこんな面倒な技を打ったんですけどね?


さて、これでライトルズ達は「回避不可能」な広範囲攻撃に晒される事になった。

俺とて怪人として戦っている歴は長いしそれ相応の力も持っている。

例えライトルズのメンバーが一人一人でガードをしたとしても、それくらいは貫通するだけの威力はあの光弾全てに持たせるくらいできるさ。

つまり、このままではライトルズ達は絶対絶命という訳だ。そんな彼女達を助けられるのはここには1人しかいない。

ニヤリと笑いかけながら、レッドイーグルを見てやる。

レッドイーグルは顔を覆っているマスクの上からでも分かる程の迷いを見せるが……


「ライトルズ、全員ガードを全開にしろ! 僕が迎え撃つ!!」


当然、ここでライトルズを見捨てるならヒーローなんて名乗って無いだろうよ。

降り注ぐ俺の攻撃に対して、真下に移動したレッドイーグル。

ここからどう仲間を守って見せるのかは興味があるが、それを見ていて逃げるタイミングを無くしましたじゃあ話にならない。

てな訳で。


「じゃあなヒーローども! 俺は今回もおさらばさせて貰うぜ!」

「くっ、仕方ない! 『全方位火炎羽弾オールウィングショット』!!」


レッドイーグルが雨のように降り注ぐビームを炎の羽で迎撃しているのを遠目に、俺は狼の本能のまま四つ足で全力疾走を開始。


グングンとそれまで戦っていた現場から離れて、人目に付かない所に向けて走る。


すると不思議な事に、俺の目の前には謎の黒いもやが現れたではありませんか。

こんな怪しい過ぎるもやとか普通の人なら避けて当然、しかし俺は悪の組織の一員なのでそのまま突撃します。

そうして黒いもやの中を走ること数分、出口である光のもやを見つけてレッツジャンプ!

さぁ、その先は!?


ーーーーーーーー


もやの中を走った先に合ったのは、薄暗い洞窟をくりぬいて通路にしましたって感じの通路と、そこをまるで血管のようにこと細かく張り巡らされた無数のパイプ達。

うむ、我が全然愛しくは無いホームと書いて悪の組織のアジトだ!

相変わらず不気味な建物だ(本当に建築物なのか?)と思いながら、すたすたと二足歩行で歩くことおよそ一分。

『怪人調整室』と書かれた看板が掲げてある鉄扉を開く。

その中に居る白衣の男性が、こちらに気付いて声を掛けてきた。


「お帰りウルフ。今日も敗走してきたかい?」

「ただいま戻りましたモーディ博士、バッチリ逃げ帰ってきましたとも」

「それは結構。それで? タートル君はどうだったかな?」

「大体博士の予想通りでしたねー。1対1、それにライトルズ……ライトル・ヒロインズのコンビネーションアタックまでは問題ありませんでした、ただ合体技の光剣は受けきれずに爆発四散です」

「うーん、やっぱりアレは受けきれないか。やはりあの攻撃に対しては回避、もしくは発動の隙を与えない方が……」


声を掛けてきたのは白衣を纏ったこの悪の組織の研究員の1人にして怪人開発の第一人者……らしい(本人談)人物。


俺の上司ことモーディ博士だ。


俺は自分でもテキトーだと思う報告を伝え、それを聞いたモーディ博士は色々と考え初めて自分の世界へと入っていった。

こうなるとこの人はこっちの話なんて聞いてくれやしない。ま、俺ももう話すことは無いから良いんだけどさ。

さて、ちゃちゃっとやることやって仕事を終わらせよう。


「よっとなー」


俺は自らのサイボーグ化している体、その胸部から一枚のチップを取り出す。

これは俺の戦闘データと、見ていた視覚情報のデータを記録しているメモリーチップだ。

それを『抽出』と書かれている、謎の液体を包んだ……冷静に考えると何だろうこれ? 解析用の機械に接続されている瓶……でいいのか? 培養瓶? まぁ、とにかくそういうアレに突っ込む。

こうすると、今回の戦闘で獲得した俺自身の戦闘データを解析して今後の怪人開発やら俺の強化やらに役立ってくれる訳だ。

ついでに報告が苦手な俺に変わり、今回の戦闘についてのアレやコレやをモーディ博士含めた悪の組織の幹部様方に見てもらえる。


いやー、助かっちゃうね。


後は次来る時に回収してまた体に取り込む訳だ。

さて、こうなると次にこの部屋に来るまで俺の胸は空っぽになってしまうので、物理的に埋めるものが必要なわけだ。

『利用可』とラベルが貼ってある、さっき俺がメモリーチップを入れたのと同様の物から別のチップを回収。

それを胸に埋めれば……


「ん、んー、あ、あ、あー。テステス、問題なーし。人化成功っと」


俺の体はサイボーグ化されている狼怪人の姿から、至って普通の人間へと変身を遂げる。

いやまぁ、俺の元々の姿は人間だからこっちの方が元の姿と言えるかもしれないが。

そこら辺は考え初めると哲学だから止めた、ほら蝶の夢を見たのか見ているのかって奴。

とにかく、俺は無事に人の姿を取り戻せた。

そして俺のお仕事はここまで、後はあのメモリーチップを見た組織の人々があーだこーだ言い合って、次の侵攻方法を考える。

そんでその時に俺はまたヒーロー共をぶちのめすのだ。しょうがない、それが俺のお仕事だからね。


「それじゃモーディ博士、俺は失礼しますねー」

「ん、あぁ、お疲れ様ウルフ君。また今度の侵攻まではいつも通りね」

「はい。それじゃ、お疲れ様でしたー」


そうモーディ博士へと挨拶をして『怪人調整室』を出る。そして扉の先にはまたご都合ワープホールこと黒いもや。

その中へと迷うことなく足を踏み入れて、闇の中を歩くこと体感数分。

出口の先は、素晴らしきかな愛しの我が家だ。

高校生の独り暮らしには豪華な1LDK、その自室の扉と繋がったらしいもやは俺が部屋に立った瞬間に消えていった。

次に出てくるのは何時になるのやらだ。

ま、とにかく今は


「疲れた、寝よう」


着替えるか、先にシャワーを浴びるか。

どうしようか悩んでいる俺の視界に移った週のカレンダー……もとい、高校の時間割。


「うぇー、明日は朝一番から体育かぁ」


ブルーウルフ・サイバネティクス。

それが俺の怪人()()としての名前。

そして俺の裏の顔。

なら、表とは何か。

その答えは……普通の人間、だ。


大神(おおがみ)(あお)


それが俺の人間としての名前。

この話は、俺の日常の話。

普通の高校生と、悪の組織の怪人、2つの顔をもつ俺のちょっと変わった日常の話だ。

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