蛇夢(じゃむ)
散歩中、道路脇に1匹の大蛇を目撃した。それはあまりにも長く、全貌を窺い知る事はできない。辿ってみるとそこには…。
その日は、爽やかな晩秋の朝だった。澄んだ空気を吸い込みながら、いつものように近所を散歩していると、ふと道路脇に奇妙なものが目に入った。そこには、一匹の蛇が横たわっていた。
しかし、それはただの蛇ではない。驚くべきことに、その蛇の直径は50〜60センチもあり、青地に黄色と黒の斑紋が規則的に並んでいる。見るからに異様な姿だが、最も驚いたのは、その長さだ。視界の限り、蛇の胴体が続いており、全体像を掴むことができないほどだった。
「なんだ、これは…?」
一瞬、背筋が寒くなったが、蛇はほとんど動かず、ただ僅かに体を揺らしているだけだった。不思議な事になぜかそこまで恐ろしくは感じなかった。それどころか、僕の中の好奇心が騒ぎ始めた。この蛇の全容を確認したいという欲求が頭を支配し、僕は蛇の胴体をたどることにした。
200メートル以上歩いたところで、ついに蛇の胴体の終わりにたどり着いた。どうやら、こちら側は尻尾だったらしい。
「それにしても…でかいな…」
僕は一瞬立ち止まり、その巨大な蛇を再び見つめたが、今度は頭の方へ行きたという衝動に駆られ、踵を返した。元の位置まで戻ると、さらに蛇の胴体をたどって進み続けた。しかし、100メートルほど進んだところで、僕は背筋が凍るような不吉な予感を覚えた。
「この蛇…僕の家の方に向かっている…」
その事実に気づいた瞬間、恐怖が一気に胸を突き刺した。家には家族がいる。お父さん、お母さん、そして妹も。僕は一気に不安に駆られ、駆け足で蛇の胴体を追った。蛇の胴体は、確かに自宅の方向に伸びている。
そして、家にたどり着いた時、言葉を失った。
家のドアは開いていて、蛇の胴体がそのまま家の中に伸びていたのだ。僕は恐る恐る家の中に足を踏み入れたが、いつも感じる家族の気配はどこにもなかった。静まり返った家の中で、ただひたすら蛇の胴体が続いている。
蛇の胴体は2階へと向かっていた。2階には僕の自室がある。僕の足は震えていたが、意を決して2階へと進んだ。ドアを開け、部屋の中に入ると、そこには――。
ベッドの上には、信じられない光景が広がっていた。巨大な蛇の顔がベッドに横たわり、喉元は大きく膨れ、すでに何かを飲み込んでいる後だった。蛇の目が大きく開きこちらを凝視している。
僕は思わず声を上げた。
「うわーっ!!!」
その瞬間、僕はハッと目を覚ました。どうやら夢を見ていたようだ。だが、その夢はあまりにもリアルで、恐ろしいものだった。体中は汗でびっしょりだ。
しかし、目を開けた瞬間、すぐに異変に気づいた。周囲は真っ暗で、体中がものすごい力で締め付けられている。肩の骨が折れそうなほどだ。汗だと思っていたものも、何かベトベトした、凄い悪臭を放つ液体だ。
そして、呼吸ができないほど息苦しい。
「これって…」