2 私の生涯魔力の残存量が残りわずかとなりました
みなさん、ご無沙汰しております。
廃聖女はどこへ行くのかと、Aさんの追跡を試みておりましたが残念ながら汽車に私は乗る事ができず、乗車拒否されてしまい、その後彼女がどうなったのか……わかりません。
今回、私は副業としておりました聖女の魔力をたくさん使うように食あたりの患者さんばかり、リポーターの仕事を休んで、なんと2000人近く治療ばかり行っておりました。この3か月、聖女としての仕事に集中しておりましたので、私の生涯魔力残存量が一気に減ってしまい、私も本日、聖女を引退することになりそうです。
以前、リポートさせていただいたAさんのように私も、涙を流すのでしょうか……。
あまり普段から泣く方ではないので、泣かないのではないと思っているのですが、今日、廃聖女になったわたしがどこにいくのか、このマイクをずっと肌身離さず持っておきますので、みなさんは真実をご覧ください!
歩きながら私のことを紹介したいと思います。
ちなみに私、キャサリンはプロフィール通り34歳独身です。
恋人は2年ほど前に別れてからはおりません。
聖女歴は意外と長くて驚かれることが多いのですが30年になります。
子供のころに聖女認定されて小さい傷ばかり専門に治しておりました。
村では聖女キャサリンと呼ばれて、ちょっと浮かれていた時代もございますが、その頃は「井の中の蛙大海を知らず」と、東方のことわざがございますように、私レベルの聖女は山ほどおりましたし、私は不出来な聖女だったのではないでしょうか。
お待たせいたしました。
こちらが、私の聖女としての職場です。今日はあと一人で魔力がつきそうですので、どんな方が最後の治療に来られるのか、少々胸が高鳴っております。
あ!患者さんが来られました。
20代と思われるとても素敵な男性です。いったいどこを怪我されたのでしょうか。
マイクは横に一旦おきますが、宜しくお願いいたします。
「今日は、どうされたのですか?」
「実は、指の逆剥けが痛くって……」
「まぁ!それは大変ですわね! 私の最後の魔力はこの青年の治療で終えることとなります。みなさん、今までどうもありがとうございました。……それでは治療を始めたいと思います」
「皆さん、私の最後の回復魔法の光は見えましたでしょうか? 私は魔力が弱いのでカメラ越しではわかりにくかったかもしれません」
「あ~。私の両手が自然と天に向けられます。勝手に両腕が無意識に上がっていっております……
アアアアアアア なんとも言えない癒しの力でしょうか。今までの私をねぎらうかのように空から今、まさに見えない力が降り注いでおります!!」
マイクが遠かったので、私の音声が乱れたおりましたら申し訳ございません。
今、マイクを持ちましたが……まだ手が震えております。
心の中も充足感といいましょうか感動で満ち溢れております。
え? 何? 涙ですか? あら! 私、知らない間に涙を流しておりましたが気が付いておりませんでした! これはヤラセではございませんよ。本当に自然と流れてきているのです。