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転生者が溢れた世界で  作者: nanotta
異界と冒険者の町
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ポルデゴ北西の洞窟

二つ前の「ポルデゴ」を飛ばして投稿してしまっていたので、割り込ませました。申し訳ありません。

「あれはどういう魔法なんですか?簡易魔法でも似たようなものがあるなら欲しいところですが、ピンとくるものがありません。解体所でも血抜きは面倒な作業だったはずですが」


 歩き始めて少し経つと、重さに慣れたのか喋りだすエリィ。中々の根性だ。


「俺の素質が"動かす"とかそういうのみたいなんだよ。ナイフを射出したり、投げた剣を引き寄せたりしただろう?その流れで、何の抵抗もない相手ならあれくらいはできるようになった」


 可能なら剣を手元に引き寄せるだけでなく、直接相手に突き刺したりしたいものだが遠隔操作は全然だ。魔法の通りやすさを優先している剣を使っているのになんとか手元に引き寄せられているだけでしかない。


「念動力?とかいうやつですかね。簡易魔法にはなさそうです」

「いや、手元のものしか基本的には動かせないから、その名前は相応しくないかなぁ」

「そうなんですね。えーと……そうするとむしろ使い道少なさそうな気が。手元のものを動かすってそれ、手で動かすのとどう違うんでしょう」


 確かに、こんな体にならなければ少なかったかもしれない。

 むしろ手足を失ったことで方向性が変わった可能性もあるが。何にせよそれほど不満はない。


 手足を動かしたり何かを射出する他にも、汚れを浮かせて綺麗にしたり傷やへこみを自分で直せたり。さっきみたいな血抜きもできる。十分使い道がある方じゃないだろうか。


「まあ使い方次第かな。射出速度とかはけっこうなものだし、特に不満はないよ」


 そもそも、あらゆるタイプを網羅できる簡易魔法が便利すぎるのだ。


「ね、簡易魔法だったら点発動?だかなんだかのやつで血抜きできるんじゃない?」


「直接血に対して魔法を使うんですか。確かにそれならいけそう……というか実質的に念動力みたいなことできますねそれ。そうかそういう方法がありましたか。まあ、とても買える額じゃないので血抜きのためになんて不可能ですね。簡単に使えるようならどこででも使ってるでしょうし、当然かぁ」


 点発動、というのは要するに魔法の遠隔発動だ。敵の近くに直接魔法を発生させたりしたい時の能力。俺が手元にない剣を操るのもこれに当たるのかもしれない。というかそこらへんの関連でヒノは思いついたのかな。


 よく考えると死体の中の血液に対して魔法を使うのも遠隔発動な気もするが、個人の魔法は簡易魔法と違ってなんとなくな部分が多いからな。雰囲気でいけたのだろう。




 目的の洞窟は巨大なドラゴンが出入りできそうなほどの大きな口を開けている。


 洞窟前にはいくつかの冒険者パーティが休憩していたり、荷車を引く商人が売買をしていたりする。


 この商人は主に洞窟内の戦利品を冒険者から安く買い町で売る、ある種の運び屋だ。俺たちも今までは結構利用していた。かなり買い叩かれるので、今後利用しないで済むとなれば嬉しいものだ。


 ランタン代わりの腰に吊るせるよう細工された光る石や洞窟の地図なども売っているが、既に持っているので用はない。他に洞窟前でやっておくべきこともないので、立ち止まることなく通過する。


 洞窟内は当然暗闇になるわけだが、光石もあるしさほど問題ない。

 暗闇で目が利くように訓練することも簡単で、冒険者に限らずこの世界の住人は月明りだけでも問題なく生活できる。

 今持っている光石は安物で大した光量はないのだが、影になっていなければこれで十分見える。感覚的には少し薄暗いというだけである。


 明かりよりも、問題は別のところにある。洞窟内のいたるところが崩落を繰り返したのか岩だらけ。大小の岩で視界は通らず足場は不安定になっており、その隙間にモンスターが潜んでいることもある。


 元々洞窟を構成していた岩はとんでもない硬度があり、鋭利になっている部分にぶつかればただでは済まない。天然の凶器。


 入り口近くで軽く目を慣らしたら、十分に注意をしながら慎重に深部へ進む。特定の目的地があるわけではなく、どこかに新たに発生した異界の門や特殊個体がいれば良いなという曖昧なものである。


「大丈夫か?」


 とエリィに声を掛ける。数百キロを背負ったままこの悪路を進むなんて、とてもやりたくはない。というか不可能だろう。


「ま、まあなんとか」


 ときおり短距離ながらピョンと岩から岩へ飛び移りながら移動するエリィを見るに、やせ我慢というわけではなさそうだ。

 ……すごいな。なんでこれで俺の方が強いのか、よく分からない。戦闘に使う力ではないということだろうか。


 BGM程度に聞き流していたエリィの話では、荷運びも散々やってきたと言っていた気がするから、そうした部分が十分に鍛えられていたのだろうが……思っていたよりもエリィの話していることは誇張じゃなく事実な部分が多いのか?


 そんな事を考えながら進んでいると、モンスターに出くわす。人の子供ほどの大きさがある火炎イモムシが二体。

 イモムシと言っても、虫らしい鉤爪状の足が付いており、ムカデの方が近いかもしれない。蝶に成長することもない。丸っこいフォルムからイモムシが連想されたから付けたというだけの名だろう。


 動きに関しても、長い体をバネのように伸縮させ飛び跳ねることで素早く動ける。イモムシとは程遠い。

 また、名前の通り口から火を吹く。節の隙間からも一応火を出せるが、こちらはおまけ程度。


 ヒノとエリィが魔法を飛ばし、その隙にナイフと剣で二刀流になった俺が攻める。


 タイミングを見計らってイモムシは火を吐いてくるので、そこで正面からナイフを射出。自分で吐いた火によって視界が塞がっているので、直前までナイフに気付かずあっさりと倒せた。


 もう一匹はヒノの魔法が着弾し爆発。怯んでいるところをヒノがそのままメイスで顔面を叩き潰した。顔や裏側以外はそこそこ固いので顔面を潰すのはセオリーだ。


「……すごいですね。何もできませんでしたよ」

「慣れている敵だから、今更慎重になることもないしな。小振りだし」


 火を吐いたところにナイフを飛ばすという、倒し方が決まり切っている相手なので楽なものだ。


 イモムシの頭が付いている一つ目の節に剣を突き立て持ち上げる。尻尾側がだらんと下になるようにして数秒待ち、手ごろな岩や壁に押し付けながら剣を動かし節を切り取る。

 いくつかの体液が漏れ出し、その中で茶色いものを水袋に入れる。可燃性の液体であり売れるからだ。

 もう一匹目をやろうとすると、既にエリィが処理をしていた。経験があるみたいだ。


「一人でこいつらと戦ってたのか?」

「一応そうですね……それなりに苦労してましたが」


 悔しそうな表情をするエリィ。

 ソロだと何匹いようと全て一人で対処しなければならない。仲間が戦っているところを観察することもないので、戦い方の改善も難しい。

 一人だと宿代なども高くつくことが多く、情報代を稼ぐにも苦労するだろう。


 その悪循環を感じていたからこそ仲間を探していたのだろうが。


「じゃあ襲われても問題ない?」

「まあ、はい……」

「二匹は?」

「えっと、どうでしょう。正直、この荷物では……」

「そりゃそうだよね~」


 その荷物を持ったまま戦う前提なら、二匹相手は危なくて当たり前だ。俺ならそもそも動けない。一匹を捌くのだって別に期待して聞いたわけじゃないのだが……

 援護をしてくれたり時間を稼いでくれればそれで十分のはずが、普通に戦えるのかこいつは。


 もしかして俺が謀られてたりするのか?ズルしておいて何だが、なんで模擬戦のとき俺は順調に勝てたんだ。


 その後、小振りの火炎イモムシが一体だけ出たタイミングがあったので任せてみたら、普通に倒せた。

 槍を持ったまま、さらには槍の穂先から簡易魔法を使えるのが便利そうであり強かった。目の前でバリアを展開しても炎で視界を遮られそうだと思ったが、槍の先なら距離が空いているので余裕があり問題ない。


 ただ倒すだけでなく、しっかり背嚢を守る立ち回りをしている。上出来だ。


「スガさんみたいにすぐ倒したかったのですが、ちょっと怖くてできませんでした。あれってもしナイフが外れたり効かなかった場合はどうするんですか?私はこの状態じゃ避けられないし攻撃した直後にバリアの魔法を使うのも難しそうだしで、どうにもできなさそうなんですけど。何か方法があるんでしょうか?」


 中身のない部分で庇いながら我慢する。……あまり答えになってないし、やめておこう。


「荷物のこともあるから無理せず防御優先で良い。俺だってその状態で背嚢を守りながらは難しい」


「そうなんですね。接続魔法があればバリアと攻撃を合わせるだけですけど、そんなお金ないですし。あれ、でも思ったんですけどバリアを飛ばしてそのまま攻撃すれば良かったりしますかね。あぁでもバリアは離れるとすぐ弱くなるんでした。じゃあそのまま突っ込めば良かったり?でも重くてそんなスピード出ないかぁ」


 喋らず頭の中で考えることができないのだろうか。まあ効率を高めようと頭を捻るのは良いことだとは思うが。

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