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転生者が溢れた世界で  作者: nanotta
異世界は
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成長

 俺が半月集中して訓練していたもの。それが攻撃の防ぎ方である。


 最初はスケルトン相手にやれそうな練習をしようと思っていただけなのだが、効率良く倒そうとしていく過程で、どうしても攻撃を防がなければいけない場面に煩わしさを感じた。


 格好良く駆け抜けながら倒せれば良いが、敵の攻撃をもろに受け鎧に傷を付けながら駆け抜けて格好良い筈もない。


 倒す為にこちらから近づくのだから、相手も当然そこに合わせて攻撃してくる。この攻撃を完全に避けることは難しい。

 相手をするスケルトンが一体のみであるならまだしも、複数となると下手な動きをしてしまえば他の方向の敵からすると隙となる。複数の敵と距離感を変えずに一つの攻撃をいなすとなれば、防ぐという行動になる。

 

 もちろん全てをよけ続けられれば何よりだが、鎧や剣がある中で全てを解決する俊敏性はとても確保できない。


 確実に攻撃を受ける場面が発生する。

 そこで正面から防いでしまうと足が止まるし、相手も仕切り直しが効く。だから徹底的に受け流し、次の一手に自然と繋がるように意識した。


 防ぐだけに一ターンを使うのではなく、防ぐついでに相手を一ターン行動不能、あるいは防御しながら攻撃するというイメージ。


 近いことはもともと行っていたが前者は「決まったら嬉しい」程度のことでしかなかったし、後者は先に攻撃を当てたり避けながらの攻撃だった。防具の性能ありきだったり、周りの安全が確保できていたからこその技だった。


 防具の性能を活かすという意味では間違った選択ではないが、この先も同じように防具任せで良いわけはない。

 

 防御と一言に言っても、その方法は多種多様。


 ダウザッソンが行なっていた飛んでくる大根を弾くという技術。

 恐らくあの大根は、本来なら防御不可能な二段構えの魔法だ。通常の防御方法では大根が足元に落ち蔓にやられる。それを勢いを殺さず、なんなら足しながら遠くに弾いていたのだ。

 防御の最適解を見つける判断力と、即実践可能な技術力。


 当初は他のことを試していたのだが、スケルトンと戦っているうちにその重要性に気付き、磨いた。数が少なそうなら職持ちスケルトンも相手にした。



 勝手に人型相手がメインだと思っていた技術だが、ハイエナ相手にも十分機能する。

 速度に追い付いて来た頃、咄嗟に防ぐのではなく受け流そうとしてしまったのだがこれがハマった。


 相手が剣を使っているわけでもないのでイメージ通りの受け流すという形ではないのだが、横から飛び掛かってきたハイエナを剣で受け止める瞬間、そのまま横に逸らしながら剣を立てることに成功し重症を与えられた。

 図らずもカウンターが成功しているようなものである。しかもそれが何度も続く。


 そりゃあ休息も惜しんで馬鹿みたいに鍛錬に励んでいたのだから何の効果もないとは思いたくなかったが、これ程変わるとは。



 俺以外にも、いや俺以上に戦闘法があからさまに変わっているのがミリリだ。

 確実に筋力は増しており、戦斧捌き自体も改善され今や通常の用途のおいては一丁前に扱えているが、それを言いたいのではない。


 武器からして変わっている。

 戦斧自体はそのままなのだが、柄の部分に鎖が付いている。邪魔にならないよう細めな鎖は持って振り回すには少し頼りないが、投げた斧を手繰り寄せるには十分。そう、投げている。


 ハイエナやグールは素早いのでただ投げても当たらないが、カウンターを仕掛けたもののあと一歩のとこで察知され届かない、という場面で投げ距離を稼いでいる。

 投げることを想定された作りでもないので上手く飛んでおらず、距離も威力も控え目だが突然射程が延長される初見殺し的な要素でダメージを与えている。


 不安定な飛び方を見ているとなんだかこっちまで不安になるので、良い戦法かは分からない。何かしら試してみたい気持ちは分かるのだが。一応成功しているしやめろというのも違う気がして難しい。


 チャンピオンのフレイルに憧れたように思える。もともと投げることが好きそうだったし、こうした道を辿ることになったのだろうか。


「あれはどうなんでしょうね」


 というのはヒノ。横でサンゴも頷いており不安を感じているのだろう。


「まあ、有効な場面でしか投げていない……よね?」


 念のため確認してみる。一応そこについてはサンゴも同意見のようで「一応」と返事を貰う。


「無理に投げてるわけじゃないなら、とりあえず様子見かな。やっている本人も不格好なのは分かってるだろうし、そのうち何かしら改善するかもしれないし」


 ファンタジーに謎武器は付き物だ。現実的な面で壁は高く鎌使いなんかは極少数だと聞くが、ゼロというわけじゃない。あれはあれで形になる可能性もある。


 最後のハイエナを倒し切ったミリリの元へ向かいながら、そう自分を納得させた。



 良い調子でハイエナを狩っているとサンゴに「流石だな」と褒められ「リーダーとしてある程度はな」と返す。少しすかした言い回しになってしまった気もするが結構嬉しかった。


 サンゴは今やハイエナ相手に一切手こずらない。同じ速さで動いているとまではいかないが、勘に頼る必要もなくしっかりと速度に対応できている。魔法も合わされば完封である。


 完全に一段上の存在な雰囲気があり、エノンの言っていた通りな気がするものの、こちらからパーティを分けた方が良いとは別に思わない。

 サンゴ本人がもっと上を目指したいとパーティを離れるなら分かるが、特に不満も無いそうなので別に良いだろう。


 確かな手応えを感じ、成長を噛みしめた一日だった。


 それなりの期間を使ったとはいえ、闘技場が良い切っ掛けになり皆の能力や意識が上がった。

 現状の狩場はもう問題ないとくれば、自然と意識は次へ向く。



 ◇



「二層へ行こう」


 改めて数日間ハイエナを狩り、もう得られるものも無さそうだと判断した。

 反対する者がいるはずもない。むしろ、ヒノなんかは「やった!」とはしゃいでいるくらいだ。


 気持ちは分かる。


 正直ヒノはハイエナに対する戦闘ではあまり変わっていない。それもそのはずで、主に修行期間で磨いたのは魔法の部分だからだ。


 せっかく向上したはずの能力も、毛皮の売値を下げないよう魔法を制限している現状では全く活かせない。……いや、滅茶苦茶有効に使えてはいるのだが、最初から完璧な形で運用していたので変化がなかった。

 すっきりしない心持ちだっただろう。


 二層での狩りについて、不安が無いとまでは言わないがそれほど心配はしていない。


 本来ハイエナと同じレベルの狩場であり、ここで快適に狩りを行えている今の俺たちなら環境に慣れるまでの苦労があったとしても、基礎的な部分では他の二層初挑戦の冒険者たちより上回っているはずだ。


 木々が生い茂る中じゃ俺とヒノの連携魔法で狙撃とはいかないだろうが、サンゴの魔法の問題もなくなったし、憂いはない。


 すっかりくたびれている鎧は買い直すことにした。度重なる攻撃で今や穴が開いている部分もある。今の狩り場ならそれだけで大きな影響はないが、二層の森には南西の森よりも強い角兎なんかもいる。丁度穴の部分に突き入れられたら大惨事だ。


 損傷の部分が広がり本格的に壊れる可能性もある。初見の相手をしている時にタイミングが重なる可能性を考えると危険過ぎる。


 グレードを上げたい気持ちはもちろんあるのだが、如何せん金が無い。半月の休みが響いている。


「あー……」


 とやる気のない言葉すら失うのはミリリ。傷や汚れが蓄積し、あまり気にならない見た目になっていたのに逆戻りである。

 視線に対する慣れもあり最近は気にも留めていなかったが、羞恥心も再燃しそう。


 一度気になってしまうと引き摺るもので、散々同じ鎧で出歩いていたはずなのに恥ずかしい。いざ二層に挑もうという今日もそそくさと移動する。


「よし、行くぞ」


 気合を入れて階段を登る。武器を持つ手に自然と力が篭る。

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