謎のエッセイ・夢の話
あの子の夢を見た。
あの子は前の同僚で、私より5歳若い同期で、でも比べるのもおこがましいほど実績を積んでいて、当然実力も比べ物にならなくて、それなのに仕事の仕方を教えてくれるイイ奴で、何も嫌なことをされていないのに、妬みたくないというそれだけの理由で私は距離を置いていた。
人として挨拶はする。
何か一言褒めて、速やかに去る。そういう距離感。
夢の中で私は、自分の写真をファイルに入れて売り歩いていた。
裸体の上からフォトショップでレースを重ねてオートクチュールのように仕上げたもの、煌々とした照明の中ピンナップガールのように片足を高く上げているもの、衣装を霧吹きで濡らしてわざと肌に纏わりつくようにしたもの、どれも密かに会心の出来だと思っていた。もちろん実際に作ったことはない。けれど夢の中では工夫を凝らした記憶と実感がありありとあって、夢の中では本当に私の作ったものだった。
あの子は私の写真を見て「凄い。それ素敵だね」と言った。
私は殆ど反射的に笑顔を作って「えっありがとう全然そんなことないよ。私これくらいしかできないし、てゆうかこんなの全然本当に大したことないし誰でもできるし、あの子ちゃんの方が仕事もできるしかっこいいじゃん」
と言った。
言いながら、私は自分の言葉に結構ちゃんと傷ついて擦り減っていて、それを上塗りするみたいに余計に笑っていた。上滑っていた。
ふと見たあの子はものすごく悲しそうな顔をしていて驚いた。「なんでそんなこと言うの。私はあなたの作ったものが本当に素敵だと思ったからそう言ったのに。なんでそんな風に卑下するの。」
何も言えなかった。夢はそこで終わっていて、寝ているのか起きているのかも分からない朦朧とした頭で(私はあの子に、認められたかったのだなぁ)とただただ納得した。