表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

第四話 とけてしまえよ期末試験 1

7月。それは世の学生たちがそわそわしだす時期。夏休みが近いのもあるが、その前に「きまつてすと」とかいう行事があるからだ。

多くの生徒は夏休みに気を取られて勉強をサボりがちで、泣きを見る。案の定穂高もその一人だった。

「テルえも〜ん、勉強教えてよ〜!」なんて、某猫型ロボットみたいな名前で僕を呼ぶ穂高。やっぱりか、と思いながら勉強を教えてやるのが休み時間のお決まりになっていた。

ある週末、「次の土日、暇?」と聞いてくる穂高。予定はないよと答えると、「休日一人で勉強する気にならないから勉強会しようぜ!」と。一人で勉強できないって子供かよと思ったけど、僕も一人でいるのはつまらないので勉強会の約束を受け入れた。正直、楽しみだ。


土曜日。暑い。外にも出たくなくなる程に暑い。スーパー、コンビニ、ショッピングモール。誘惑が次々と視界に映ってくるが、今日はそんなところに寄っている時間などない。目的地はただ一つ。穂高の家だ。

「ここ…かな?」

教えてもらった住所に着くと、そこには「大衆食堂 あべや」と書かれたのれんのかかった建物があった。暖簾をくぐって扉を開ける。

「いらっしゃいませ〜!」

元気な掛け声と共に姿を現したのは、人間の夫婦。どちらも若々しい。にしても、狼獣人である穂高の両親がどちらも人間であることには驚いた。そんな意外な発見も束の間、穂高が降りてきた。

「いらっしゃいテル!上がって〜」

こんなに暑いのに、髪だけの僕より体毛が多いはずの穂高の方が元気って、一体どういうことだよ。体力だけはバカみたいにあるんだから、こいつ。

「始めようか」


「はぁ〜っ疲れたぁぁ」

気づけば空はオレンジ色に染まっていて、時計に目をやると短針が7を指そうとしていた。腹減ってきたなぁ、と思いつつ、テルの方を見た。テルも疲れた顔をしていて、こちらを見ながら

「僕もなんだかいつもより疲れたよ」

と言って机に突っ伏した。

「そろそろ飯の時間だし、せっかくだから食べて行きなよ」

「…じゃあお言葉に甘えて」

疲れているのもあるのかも知れないけど、なんだかテルの顔に元気がないように見えた。見ると、料理にもあまり箸をつけていない。料理を口に運んだ後、

「おいしい」

と呟いたのが聞こえた。頬に何か光ったのが見えた気がした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ