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第一話 茨に縋った少年の話

——周りに合わせるのは苦手。でも一人でいるのも嫌。

そんな、わがままな僕の話。


『いいか照斗(てると)、お前は将来いっぱいお金を稼いで、たらふく美味いもん食べて、目一杯人生楽しんで幸せになるんだぞ』

「うんっ!でも…」

『どうした?』

「その時は、おとーさんも、おかーさんも一緒においしいもの食べたい!」

『…ありがとうなぁ照斗ぉ!お父さんも叶えられるように頑張るからな!』

『いつかきっと…叶えましょうね』

「やくそくだよ!」———


これが病院で交わした、両親との最後の会話。

僕の両親は、僕がまだ小学生ぐらいの頃に亡くなった。孤児となった僕は、裕福な伯父夫婦に引き取られた。


いわゆる「親ガチャ」と呼ばれる概念の中で、「裕福な家庭」というのは当たりの部類に入るんだろう。だが、それはあくまで「親ガチャ」の話で、僕には関係なかった。

僕は勉強が嫌いだ。それなりに優しい人や信頼できる人が周りにいればそれでいい。それなのに。

僕の「父さん・母さん(そだてのおや)」は、僕をいい大学に行かせたがった。

朝から晩まで勉強、勉強、勉強。別に勉強が好きなわけでもないし、特別いい仕事に就きたいわけでもない。かつて見つけた夢も、やりたいことも、全て否定されて取り上げられて。そのくせ勉強を拒否すると「お前は引き取ってやった恩を仇で返すつもりか」と怒り出す。彼曰く、「一流企業に就職すればたくさん稼いで幸せになれるから。お前のため」だそうだ。

僕の幸せは僕自身にしか決められないはずなのに。まるで僕にでもなったような口ぶりだ。だから僕は育ての両親が、特に父さんが嫌いだった。


もちろんそんな親だから、高校進学の時もすごく揉めた。

第一志望はふたりから指定された高校を、第二志望以降は自由に書けたので、滑り止め程度の雰囲気で適当に調べて出てきた高校を書いておいた。ただ、表記上は第二志望なだけであって、そこが僕の本来の第一志望だった。

3月。僕は見知らぬ机に向かっていた。たった一つの薄い冊子。でもそれは今まで読んだどの本よりも重く感じた。なぜなら。

「始め」

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