第98話 振動
「脱獄中のお二人さん、暗くなる前に迎えに来たぜ」
「誰だてめぇ」
「俺は拘置所の追跡者、潮鼓瑞希。大人しく連れ帰られろ」
(追跡者?カメラにはほとんど映ってねぇはず)
「どうやってここがわかった」
「俺の能力だ。お前らの足跡を辿った、とだけ教えてやろう。カメラに映らないだけじゃダメなんだよ」
「でも、こっちは2人だもん?そっちの方が不利なんじゃないの?」
(足跡、、、)
まつりが言い返している時、昂輝はある人物の言葉を思い出していた。
―――――
「笛鳴まつり、君は飛んで逃げるといい」
―――――
(じゃあ、俺は、、、電気か)
昂輝は全身に電気を纏うとまつりに言った、
「ここに応援が増えると分が悪い、お前は先に行け」
「でも」
「もし、また2人とも連れ戻されれば二度目はねぇぞ」
「、、、わかった」
「逃がさないよ。"波打つ地面"」
3人の立つ地面一帯が大きく波打ち始めた。
「んだこれ」
「立つのも一苦労だろ?そう簡単に逃げられちゃ困るんだよ」
「じゃあ昂輝、先に行くね」
「お、おう」
まつりは鳥型に変化すると羽ばたいた。
「逃がさねぇつったろ!」
「"電撃脚-瞬-"」
昂輝は地面が上に波打った瞬間、潮鼓の方へ勢いよく蹴り出した。
「一歩で詰めりゃ、この地面も関係ねぇだろ?"電撃爪"」
「勢いだけはいいな。こっちの方は足りてんのか?」
潮鼓は、昂輝の振るった爪撃を避けると頭を掴んだ、
「"揺れる意識"」
相手の頭に触れ、脳を揺らすことで脳震盪を起こし気絶させる技だが、
「手ぇどけやがれ!」
昂輝は潮鼓の顔面を蹴り飛ばした。
「っ、なんで効かねぇ」
「あぁ?なにがだ」
潮鼓は顔を上げると、昂輝が電気を纏っていることに気が付いた。
(こいつ、電気を)
「どうした?たった一撃でダウンか?」
「ほざけ。俺の技が効かなかったカラクリを見抜いてたんだよ」
「一生考えてろ。"電撃脚-瞬-"」
昂輝は再び距離を詰めようとする。対して潮鼓は立ち上がると右肘を後ろに引き、拳を昂輝に向かって勢いよく突き出した。
「"突き抜ける衝撃"」
潮鼓が生み出した空気の振動は拳の直線上を進む衝撃波の槍となり、昂輝の腹部に到達した。
「っ!」
攻撃を受けた昂輝の口からは一筋の血が垂れるが、目に見えるような傷はない。
「痛いだろ?でも、傷はない。不思議だよな?」
「何とも思わねぇよ」
昂輝は血を拭うと、再び地面を蹴り距離を詰めた。
「まだ来るか。"突き抜ける衝撃"」
しかし、潮鼓が拳を突き出した瞬間、昂輝はその直線上から外れるように着地し、再度地面を蹴った。
「ちっ。"押し退ける衝撃"」
昂輝は咄嗟に腕を交差させて受けようとするが、潮鼓の掌が生み出した衝撃波によって接近を阻まれた。
「ほら、止まってないで来いよ」
珍しく、昂輝は挑発に乗らず、潮鼓の能力を分析している。
(さっき、いくつかの薄い壁に進むのを邪魔された。最初は地面を揺らされた。あとは腹への攻撃か、、、)
「おい、どうした?諦めたか?」
「んなわけねぇだろ」
昂輝は四肢に電気を分散させ、走り出した。
「"波打つ地面"」
地面が波打ち始めた瞬間、昂輝は上に跳んだ。
「逃げる先は上でよかったのか?"突き抜ける衝撃"」
昂輝は、両拳から放たれた衝撃波を躱しながら潮鼓の頭上を取った。
(これで、使いきりだ)
昂輝が右手を上空に向けると小さな黒雲が現れた。
「面白そうな雰囲気だな」
「あの坊や、割とやるのね」
2人の様子を1組の男女が眺めていた。
潮鼓も昂輝の方へ両掌を向ける。
「"召雷"!」「"押し退ける衝撃"」
雷と空気の振動がぶつかる。
「くっ、」
「重いな」
拮抗した2つの技は相殺し、昂輝は地面に落下した。
その頃、路地に入った凛奈とアルに2人の訓練生が接触していた。
「こんにちは、御剣凛奈さん」
凛奈は眉間にしわを寄せ、自分と同じくらいの背丈の少女に訊き返した、
「それ、私に対して言ってるの?」
「えぇ、そうよ、AACAのリーダーさん」
「あらそう。なぜ私に声を掛けたの?事によってはこんな街中は不適切だと思うのだけど」
「そうね。でも、わざわざ路地に入ったってことは尾行に気づいてたんでしょ?」
「まぁ、そうね」
「あなた達の集合場所まで同行してもいいかしら?」
「り、凛奈、この人たち」
「機関の、それも本部の回し者ね」
「何か嫌な言い方。私たちはまだ訓練生よ」
「気を悪くしたのならそれは謝るわ。で、目的は?」
「話があるの。それだけ」
「そう。なら、糸を収めてくれるかしら」
(っ!糸?)
アルは凛奈の言葉を聞いて何かに気が付いた。そして、その変化を凛奈は見逃さなかった。
「そっちこそ、礫を浮かせてどうするつもり?」
「お嬢、攻撃はダメだと本部長が」
「わかってるわよ」
少女と凛奈はしばらく睨み合い、互いに能力を解除した。そして凛奈が口を開いた、
「着いてきてもいいわ。その代わり、あなた達以外の尾行は外しなさい。これが条件よ」
「わかったわ。暁くん」
少女は隣に立つ長身の少年に携帯を渡した。
「うっす」
「さて、どこに行くのかしら?」
「ここよ」
凛奈は、AACAの最初のアジト、と書かれた画面を少女に見せた。
「そんな所に招待してくれるの?」
「饗ことはできないわよ。話が済んだらすぐ帰ってもらうわ」
「それは残念」
「ところで、うちのメンバーが訊きたいことがありそうなんだけど」
「!?い、いや、ないけど、、、」
「なにかしら?」
「、、、いつから、その姿、なの?」
その言葉を聞いた瞬間、暁は鉄の鈎爪をアルの喉に突きつけ、凛奈は礫を暁の眼前に飛ばした。
「やめなさい」
「お嬢、いいんですか」
「えぇ、いいわ。それも、目的地で話しましょう。彼女たちが条件を呑むのであれば」
特殊能力のある世界、第98話ご覧いただきありがとうございます。
お待たせいたしました、第98話です。
段ボールに囲まれながら仕上げました。
引っ越しは前も後も大変ですね、特にホコリが、、、。
次回の投稿は2/6(金)です。




