第97話 迎え
牢屋を壊し、拘置所の建物から出た昂輝とまつり。
追跡者の鍛冶機灯と対峙する2人は、数人の看守たちに囲まれた。
「もぉ!囲まれてるじゃん!」
「めんどいけど、やるしかねぇな」
その時、アルから通信が入った。
「そっちにもう1人の追跡者が向かってる。早くそこを離れて」
「昂輝、ダメ!時間がないって」
「はぁ?なんで」
まつりは首を素早く右に振った。
「ちっ、わぁったよ」
「逃げるの分かっとって逃がすわけないやろ」
「簡単に逃げれるとは思ってねぇよ。まつり、時間稼げ」
昂輝の身体に電気が集まり始める。
「わかった!"緋毛氈"」
鳥型になったまつりは炎を纏い、看守たちの間を縦横無尽に飛行し始めた。
「あっつ」
「鳥の能力者か」
「動いとる方に気ぃ取られず、止まっとる方を狙い。多少のケガは覚悟の上やろ」
鍛冶機は右腕に筒状のアタッチメントを取り付けると昂輝に狙いを定めた、
「準備中のところ悪いけど、許してや」
(しまった!)
まつりが昂輝の方へ飛ぶが、筒から放たれた鎖付きの矢じりが昂輝の左腕に刺さった。
「いてぇな」
「まずは1人確、、ん?」
しかし、昂輝は矢じりが腕に刺さった瞬間に鎖を握り深く刺さらないよう受け止めていた。
「お前さん、そんな反応できるんなら避けれたんと違うか?」
「あぁ、できたかもな」
昂輝が鎖を思いっきり引っ張るとそれに吊られて鍛冶機の右腕が引っ張られた。しかし、鍛冶機はアタッチメントを外し、左手でしっかり握った。
「綱引きなら負けんで」
鍛冶機は右脚のダイヤルを回しボタンを押した。しかし、その瞬間、昂輝は腕に刺さった矢じりを引き抜き手を離した。
「しもた!」
反対側の張力を失った鍛冶機は両足から噴射された炎の推進力のまま後ろに飛んでいった。
「あいつは後回しだ。さてと、」
昂輝は看守たちを見渡すと、そのうちの1人に急接近する。
「見せしめ。"起電爆衝"」
雷撃に巻き込まれた看守はその場に倒れた。
「さぁ、お前らどうする?」
「どうするもねぇよ」
「看守をなめるなよ」
「"火之矢羽根"」
まつりの攻撃が看守たちを襲うが、今度はそれらを鍛冶機のガトリングが相殺した。
「もう戻ってきやがった」
「そんな遠くまで飛ばされとらんわ」
鍛冶機は近づいてくると倒れている看守を一瞥した。
「あぁあ、瑞希の部下をやりよって。まぁ、俺の部下やないからええか」
鍛冶機はガトリングのアタッチメントを外し、ブレードに付け替えた。
「今度は接近戦か」
「こっちの方が、周りを気にせず戦えるやろ?」
ブレードを構える鍛冶機に対し、昂輝は両腕に電気を纏った。
「昂輝!逃げるって言ったでしょ!」
まつりは両脚で昂輝の肩を掴み、飛び立とうとするが、
「おっも」
身体が浮き上がらず、蹴りを入れた。
「いてぇな、何しやがる」
「もう1人が来る前に逃げるの!」
「わぁったよ」
昂輝は頬から垂れた血を拭うと両手を地面に着いた、
「"起電爆衝"」
地面が砕かれ、土ぼこりが鍛冶機たちの視界を奪った。看守の1人が風で土ぼこりを払ったが、その時には既に昂輝とまつりは塀を越えようとしていた。
「なんや、あいつも飛べたんか」
昂輝とまつりが塀を越えて少し経ったとき、追跡者の潮鼓瑞希が到着した。
「あら?逃げちゃったんですか?最初からいた方がよかったんじゃないですか?」
「いやぁ、逃げることを優先されたさかい、変わらんやろ」
「そうかもしれないですね。じゃっ、始めます」
そう言うと潮鼓は地面に手を着いた、
「"波打つ地面-探索"」
「おい、日が沈むまでにけり付けろよ」
「うっす?、、、え!斑さん!?」
「虎太郎!いつから居ったんや」
「ずっとだ」
木陰から1人の男が姿を現した。
「お前が囲まれたときはどうしようかと思ったが、あぁ、俺は今勤務時間外だからな」
「そんな最初から居ったんか」
「じゃあ、言ったぞ。日が沈むまでにな」
「うっす」
斑虎太郎は木陰の方に向かい、再び鍛冶機たちの前から姿を消した。
昂輝とまつりが脱獄して1時間が経った頃、アルは拘置所に凛奈を迎えに来ていた。
「えっと、あの、、、すみません」
「どうかしましたか?」
「あ、い、妹を迎えに来るように、言われてて、、、」
「あ!ちょっと待っててください」
守衛は状況を察すると、少女のお兄さんが迎えに来たことを所長に伝えた。
「妹さん、もう少しで出て来るそうなので待っててください」
「あ、ありがとうございます」
拘置所から出てきた凛奈はアルを見つけると駆け寄った、
「お兄ちゃん!お待たせ」
喋り終わると同時に服を強く引っ張ってアルを屈ませると、小声で言った、
「早く行くわよ」
「え、あ、うん」
「守衛のおじちゃん、バイバーイ。飴もありがと~」
「はい、じゃあねー。気を付けて帰るんだよ」
「はーい」
拘置所の門をくぐり大通り出ると、凛奈は周囲を睨みつけた。
「ねぇ、凛奈」
「なに?」
「この後、だけど」
「そうね。今2人につなげれる?」
「うん、できるけど」
アルは拘置所が見えなくなると昂輝とまつりに通信を入れた、
「まつり、昂輝、聞こえる?」
「あぁ、聞こえる。そっちはどうだ」
「問題ないよ。凛奈と一緒にいる」
「やった!無事全員出れたんだね!」
「まつり、まだ油断はできないわよ。追跡者は?」
「ん~、今の所出会ってないけど」
「そう、それならいいわ。そのまま最初のアジトを目指して」
「最初のアジトって、あの周りカメラ多いだろ」
「気にしなくていいわ。どこを目指しても同じよ」
「ま、まぁ確かにそうか」
「じゃあ、またあとで」
「おっけ~、またね~」
「最初のアジトか」
「1年ぶりくらいかなぁ?」
「もっとじゃね?ま、とりあえず無事に着くことからだけどな」
しかし、その数十分後、河川敷を歩く昂輝とまつりの行く手を1台のバイクが塞いだ。
「脱獄中のお二人さん。暗くなる前に迎えに来たぜ」
特殊能力のある世界 第97話 ご覧いただきありがとうございます。
2026年初投稿、今年もよろしくお願いします。
年内に第2章の半分強くらいは書きたいと思いつつも、
AACA脱獄編が既に予定より4話オーバー。
書きたいことは尽きないです。
次回の投稿は1/18(日)です。




