第82話 百花の蕾
ドッヂボール中に指旗和華の能力が暴走した。
突如現れたチューリップ型の大砲から放たれた弾は、
体育教師の植木信夫に向かって飛んでいった。
「先生、逃げて!」
「逃げるには及ばん」
植木先生は砲撃の正面に立ち、中腰に構えた。
「"大樹造形-剛腕"」
両腕から生えた木材が先生の両腕をつつみ、巨大な腕を成した。
「なんじゃありゃ!」
「先生の能力、あんなのだったのか」
植木先生はその両手で砲撃を包むと握りつぶした。
「ふぅ、、、」
植木先生は額の汗を首にかけた白いタオルで拭い、口を開いた、
「で、誰の能力だ?危ないだろ」
「、、、私です」
俯いたまま、和華が答えた。
「ん?指旗、か」
少し首を傾げ、続けた、
「いつから能力を使えるようになった?」
「えっと、先月からで、さっきのは―――」
「和華は今まで、ヒマワリしか咲かせれなかったの!
今さっきのチューリップは初めて!」
能力について知っていた波溜が話に割り込んだ。
「怒りはしないから安心しなさい」
「え?怒らないんですか?」
「なんだ?怒って欲しいのか?
今のは明らかに能力の暴走、制御できなかっただけだ」
「何でそんなのわかんだよ」
「簡単に言うとだな、
今の技は、お前らのレベルで使える強さじゃなかったからだ」
「おぉ、和華すげぇじゃん!」
「和華ちゃんすごいね」
「俺からも訊きたいことがあるぞ」
「なんだ、赤城兄」
「俺が能力を上手く使えなくて壁を凹ませたり、
昇降口のガラス割った時は怒ったよな。
何で、和華は怒られねぇんだ?」
「あのなぁ、お前、この1学期だけで何回怒られた?」
「ん~、月に2回は怒られてるな」
「その度に、俺はなんて言ってる?」
「ぶつかる物がない公園で練習しろ」
「守れてるか?」
「守れてねぇけどよ、いける!って時があんだよなぁ」
「それでもダメだ!その時は俺に言え、校庭でテストしてやる」
「お、いいぜ!楽しみにしててくれ」
「何であんたが上からなのよ!」
「ってぇな、海!なんで、叩かれ―――」
「2人とも騒ぐな。
全員今日は解散。下校しなさい。
指旗は青屋先生と話をするから、職員室に来なさい」
「「「はーい」」」
皆が下校するなか、和華は職員室に居た。
「青屋先生、お時間良いですか?」
植木先生は、和華たち4年生の担任である青屋風奈に声を掛けた。
「はい、大丈夫ですよ。なにかあったんですか?」
「ドッヂボール中に指旗の能力が暴走したので、
今後のことも含めて話が必要かと思いまして」
「児童や建物への被害はありましたか?」
「いえ、全て無事です」
「それならよかったです。
ちなみに、何が咲いたんですか?」
「チューリップを模した大砲です」
「う~ん、武器、ですか、、、」
「はい。なので、赤城兄のように外での練習も危ないかと思いまして」
「そうですね。
指旗さん、その技が出た時の事を教えてもらえますか?」
「はい、、、。
今までみたいに、ボールを跳ね上げる技を使おうとしたら、
チューリップが出てきて、急にドン!って、、、」
「ちなみに、お母さんやお父さんは能力のこと知っていますか?」
「まだ、話してないです」
「わかりました。
では、まず、ご両親に能力のことを話してください」
「はい、、、」
「そこで、これから能力とどう付き合っていくか話をしてください。
これからも使いたいのであれば、制御するための練習が必要です。
今日みたいなことが怖いのであれば、使わないことも選べます。
お家には先生からも連絡しておくので、
心の準備ができたらご両親とお話してください。
それまでは、能力を使うことを禁止します」
「わかりました」
「今日は帰っても大丈夫ですよ。
外でお友達も待っているようなので」
青屋先生が視線を向ける先には、職員室を覗く駿と波溜の姿があった。
「あ!」
「2人とも心配なんでしょうね。
あ、それと、」
青屋先生は和華にだけ聞こえる声で何かを伝えた。
「え!先生、何でそれを?」
「皆さんの担任ですから。
じゃ、気を付けて帰ってくださいね」
「指旗、また2学期な!」
青屋先生と植木先生は、和華を笑顔で見送った。
「青屋先生、能力の事知ってたんですね」
「すみません。
機関のデータベースでは仮登録なので学校への報告ができなくて」
「ですが、未成年者の能力者情報の提供は
保護者、若しくは所属している教育機関でしたよね?
ご両親は知らなかった。教育機関から報告する場合は一度職員会議を行う」
「その通りです。でも、それは原則」
「つまり、今回報告したのは、訓練学校に所属する者若しくは機関に所属する捜査官」
「さすがは、元捜査官ですね」
「やめてください。昔の話です。俺も衰えました」
植木先生は苦笑いを浮かべた。
「指旗さんの能力、そんなにすごかったですか?」
「暴走した能力を止めるのは骨が折れますね。
でも、本当にすごいは」
「えぇ、指旗さん本人ですね」
2人は正門をくぐる3人の背中を見送った。
「大丈夫だった?怒られてない?」
「うん、これからどうしたらいいか教えてもらった」
「和華元気になった?」
「う~ん、少しだけ?」
「急にあんなの出てきたらびっくりするよね。
うちもびっくりしちゃった」
「大砲、かっこよかったじゃねぇかよ。
俺は羨ましかったぜ」
「あんたねぇ、少しは和華の気持ちも―――」
「なぁ?和華も一緒に捜査官を目指さね?」
「あんた、うちの話聞いてる?」
「、、、、、、」
「ほら!黙っちゃった」
「あ、わ、わりぃ」
「うんん、いいの。
能力のこと話すとママとパパに何言われるか不安で」
「うちはね、見たことない能力だったみたいで面白いって言われた。
和華の能力はお花だし、悪い印象はないと思うなぁ」
「えぇー、俺はもっとカッコいいのがいい!
あとよ、色んな能力つかってみてぇな」
「はぁ、能力の2個持ちなんて、滅多にいないんでしょ?」
「!?いんのか!そんな奴」
「ねぇ、駿くんのかっこいいってどんなの?」
「う~ん、今日の大砲もかっこいいけど、
なんかさ、相手を追いかけるビームとかもかっこいいよな!
あとは、相手の攻撃をそのまま跳ね返したり」
「なんか、、、」
「戦い向きだね」
「戦って勝つのがかっこいいだろ!」
どこか誇らしげな駿に2人は駿らしさを感じながら笑った。
「そういえば、あんた、司との勝負はどうなったのよ」
「2学期に持ち越しだな」
「1回くらい勝った?」
「さぁ?どうだったかなぁ」
((勝ってないやつだ))
「じゃあ、私こっちだから。またね。
待っててくれてありがと」
「ん、また2学期ね」
「じゃあなぁ~」
特殊能力のある世界 第82話 ご覧いただきありがとうございました。
和華の能力回、あと1話。
親に能力の話をする回を書きます。
そしたら、橋本支部長救出編(5話に収めたいけど、、、)を書きます。
タイトルのままだけど、
特殊能力のある世界ってどんなかなって考えながら書いてます。
生活に馴染ませる感じ?難しい。
急に能力使えるようになったら、周りも驚くだろうし、、、。
では、次回の投稿は6/1(日)です。




