第77話 五養山の廃墟
犯罪サポート組織AACAの4人がアジトでアルのノートについて話している頃、
アジトの建つ山、五養山に1人の人物が入ってきた。
彼女は、6月の下旬にこの山に建物を見たという、証言が気になり入山していた。
2週間前の日曜日、葉泉支部、第2訓練室
―――――
訓練を終えた、沖和司、松平駿、景山省吾が話をしていた。
「なんだ、松平。もう限界か?」
「そりゃあ、きついっすよ。
青屋先生強すぎっす、先生やめて捜査官やればいいのに」
「あら?それは、褒められてる?
褒めても先週の宿題はなくならないわよ?」
青屋先生はボールを拾い終えると、3人の会話に入りに来た。
「げっ、宿題、忘れてた」
「松平は技術訓練の前に、そこだな」
「あと、落ち着きのないところも直せよ」
「お前が落ち着きすぎなんだよ!
俺は、これでいいの。ムードメーカー!!!」
「はいはい、わかりましたー」
「てめぇ、この、テキトーに流しやがって」
「でも、冷静さも大事ですよ?
今日の松平君は勢いでボールを投げて、
相手を見極めることが無いように感じましたからね」
「でもよぉ」
「確かに、冷静すぎてもダメですが、状況は把握しましょう。
特に今日はチーム戦だったんですから」
「う~ん、どうやったら、、、、、あ!」
「ん?どうしました?」
「司!肝試し行こうぜ!」
「はぁ?なんだ急に。行かねぇよ」
「肝試し中でも落ち着いてたら、冷静って言えるだろ?」
「その考えは否定しねぇけど、行かねぇ」
「何だよ、釣れねぇな。
景山さんと先生はどうっすか?」
「俺も行かない」
「私も行かないですねぇ」
「第一、どこに行く気なんだよ。
この辺で肝試しできそうな所なんかないだろ」
「あそこに行くんだよ。
球技大会の帰りに俺が見つけた建物。
心霊スポットだって開さんも言ってたし」
「あ~、何か言ってたな、。
洸さんみたいに行方不明になったら探しに行ってやるよ」
「な、そ、そんなことになるわけ、、、」
「なんだ?怖いのか?」
「べつに、、、そんなこ、とねぇよ」
「はいはい、そうですか。
景山さん、オフィス行っていいですか」
「言っとくけど、支部長は仕事中だからな」
4人はオフィスに移動すると、パソコンを立ち上げ地図を開いた。
「司、何すんだよ」
「お前が言ってた建物が何か調べんだよ。
ビビってんだろ?」
「、、、、、、」
(葉泉北からの帰り道、、、、。
駿が乗ってた側から見えそうな山は、、、。)
「沖和くん、覚えてるんですか?」
「はい、隣でうるさくされて寝れなかったので。
、、、ありました、この山です」
司は地図上の1つの山を丸で囲った。
「おい、司。ここって」
「五養山、ですね」
「五養山?そこってこの前調べたんじゃ」
葉泉支部の支部長、橋本千陽が顔を上げて言った。
「調べた?なんかあったんすか?」
「あ、、、松平くんもいたの、、、。
えーっとー、、、」
橋本支部長が言い訳を探していると景山が口を開いた。
「前に犯罪組織のアジトがあったから、追加調査したんだよ。
でも、ここには建物なんかなかった」
「俺は見たんだけどなぁ」
「これっすよね。当時のホテル」
司が画像を出すと駿が大声を上げた。
「これ!!これが建ってた!!!」
「うるせぇ!」
司が反射的に駿の腹を殴り、膝をつかせる。
「て、、、てめ、ぇ」
「そういうところが落ち着きねぇんだよ」
「く、そ、、、覚えてろ」
「沖和くん、なんで五養山?」
「心霊スポットだから、肝試しに行くって、駿が」
「心霊スポット。聞いたことあるけど、最近はどんな噂が?」
「突風が吹いたり、木の枝が落ちてきたり」
「何もないのに壁にぶつかったり、火がついたりするとも聞きました」
(こいつ、もう復活したのか)
「、、、、、、、、、」
「支部長どうかしましたか?」
「橋本支部長も肝試し来ますか?」
「私は遠慮しとくね」
―――――
(この山は元々温泉で有名な観光地。
ホテルや旅館はいくつかあったけど、今はその影もない。
廃墟をアジトにしていた犯罪グループは一人の警官が捕まえた。
後日行われた捜査で、アジトは調査されているけど、
建物のその後については記述がない)
千陽は以前ホテルが建っていた高台に辿り着いた。
「う~ん、向こう側の景色が見えるだけ、なんだけどなぁ」
辺りも見渡すが変わった様子は何一つない。
(こういうことするの、あんまり良くないけど、、、)
千陽は小石を拾うと、ホテルの建っていた方向に投げた。
― コツンッ ―
小石は宙で何かに跳ね返った。
「!!」
「まつり、いいわよ」
「らじゃ!」
突如、宙に横一列の炎が現れ少しずつ地面へと降りていく。
そして、その炎の通った所から、先ほどまでなかった廃墟が姿を現した。
(こ、これって)
廃墟の正面玄関がゆっくりと開く。
(罠、だとしても、、、)
千陽は拳銃の弾倉を確認すると、廃墟に足を踏み入れた。
特殊能力のある世界 第77話 ご覧いただきありがとうございました。
建物を隠す方法としては、
球技大会編(第31話)初登場の米井才の能力でもできますが、
対象が大きいので、今の彼では無理です。
廃墟の過去については、『特殊能力のある世界 サイドストーリ SSNo,0 アジト』をご覧ください
次回の投稿は、2月23日(日)です。