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第73話 キレ者


庭に侵入したライオンの能力者を火の玉が吹き飛ばした。


「ここは、あっしに任せてくれやせんか?」

護衛No,5が振り返ると、

護衛No,15、斗升合蔵の右手の平から煙が上がっていた。


攻撃を受けた侵入者は立ち上がると斗升を睨みつけた。

「あぁ?能力者か」

侵入者は再びライオンの姿に変化(へんげ)すると、斗升を狙って走り出した。

「ずいぶんと、お怒りのようでさぁ」

斗升は困った表情で頭を()いている。

「百獣の王の前にひれ伏せ」

ライオンは吠えると斗升に飛び掛かった。

しかし、斗升は前転でその下に潜り込むと腹部に狙いを定めた。

「"第1炎舞 赤葡萄(あかぶどう)"」

両拳に炎を(まと)った連撃が腹部を捕らえ続けるがびくともしない。

「こりゃあ、重てぇな、、、」

「ったりめぇだろ、動物型(ビーストモード)なめんなよ」

侵入者は右の前脚で斗升を殴り飛ばした。

「ぅおっ」

「No,15!大丈夫か」

「あ、あぁ、問題はねぇな」

斗升は崩れた塀をどけるとスーツの土を払った。

1頭の獅子がその様子を見つめている。

「ちっ、ほぼ無傷化かよ」

「いやぁ、ぶつかる直前に炎を噴射させたんでさぁ。

ぶつかってたら痛かったろうなぁ、でもあの一撃は喰らったぁなぁ」


「こちらNo,5、庭の侵入者はライオンの能力者であることを確認、応―――」

「応援は、いらねぇよぉ」

No、5の通信を斗升が(さえぎ)った。

「なっ、いらないってあんた」

「ほぉ、強気だな。護衛のおっさんよぉ?」

「No,5さん、すんませんが、あのスーツケースの中身取ってくれやせんか?」

「あれは市長からの預かり物なんじゃ」

「あれぁ、()()()()代物(しろもの)よ」



その頃、護衛No,14、南雲支部の支部長である四阿紫水は

"すり抜け"の能力に関して1つの仮説に辿(たど)り着いていた。

「すり抜け能力を持つ侵入者Aは書斎に戻りました。

物置に戻る可能性もあります。1階の護衛は気を付けてください。

私は子ども部屋の方を見に行きますので、

仕事部屋の護衛には試してほしいことがあるのですが、、、」

四阿支部長は考え付いた対策を伝えると廊下に出た。


一方、子ども部屋の侵入者は護衛を外に放りだした後、部屋を見渡していた。

「、、、、、、あぁ。

ここぁ、ターゲット、いねぇかぁ」

侵入者はドアを鎖で壊し、廊下へ出た。

(なんだぁ、あの部屋、誰か出てきやがったな)

侵入者は寝室から出てくる四阿支部長を見つけると鎖を伸ばして攻撃を仕掛けた。

(鎖!?)

四阿支部長は咄嗟(とっさ)に刀で鎖を払うが、その鎖は柱を(えぐ)り、削った。

(弾丸に近い勢いでの射出、、、)

(避けるのか、ただの護衛ではないな)

「2階廊下、鎖の能力者侵入者Bを確認、応戦します」

そう言うと、四阿支部長は鎖を引っ張り、侵入者Bを1階ホールに叩き落した。

(力も()ぇな)


廊下での音を聞いた侵入者Aは恐る恐る壁をすり抜けて寝室を覗き込んだ。

(ふぅ、あいつなかなかやる奴だったが、ここを空けたのはミスだろ)

侵入者Aは寝室に足を踏み入れると、

市長の居る仕事部屋側の壁に右手を当てた。

(これで俺らの任務も終わりだ)

右手は徐々に壁をすり抜け、仕事部屋へと入って行った。しかし、

(ん?なんだ?)

男の手は壁をすり抜けてすぐ別の何かに触れた。

(か、べ?いや、それはすり抜けたはずだ)

1度手を引き抜くと、手を入れる位置を少しずらして何度も試した。

しかし、何度やっても壁をすり抜けた手は別の何かに触れてしまう。

(ちっ、正面から行くしかねぇか)

男はマガジンを銃弾で満たすと廊下に出る機会を伺い始めた。


幾度と襲い来る鎖を刀で払いながら、四阿支部長は笑みを浮かべた。

「何がおかしい」

「いや、銃声がしないので、

私の考えは正しかった、と思いましてね」


―――――


四阿支部長は廊下に出る前に仕事部屋の護衛にある指示をしていた。


「仕事部屋の護衛には試してほしいことがあるのですが、、、」

「こちらNo,1、言ってみてくれ」

「仕事部屋の本棚と寝室側の壁の隙間を少し空けてみてください」

「そのくらいなら、すぐできるが理由(わけ)を教えてくれ」

「すり抜けの能力の再発動には体が完全に通過する必要がある、と考えると、

本棚によって部屋の様子を見えなくするだけでなく、

隙間を作ることで能力の再発動を防げる可能性があります。

すると、侵入者Aはすり抜けによる不意打ちを実行できない、という考えです」

「身体が完全に通過できない程度の隙間を作ればいいんですね」

No,8が本棚に手を当てながら返した。

「はい、そう言うことです」

「わかった、やってみよう。

正面から来てくれるなら、対応しやすいからな」


―――――


「、、、やはり、ただの護衛ではないようだな」

「すみません、訳ありでして」

「あんたに勝てば、俺の株は上がるか?」

「えぇ、確実に」


「No,8、廊下の様子はどうだ」

「今のところ異常なしです。

侵入者の能力は、すり抜け、鎖、そしてライオン。

隠密に襲撃って気はないようですね」

「そんな都合のいい能力の組み合わせなんかないんだろうよ」

特殊能力のある世界 第73話 ご覧いただきありがとうございます。


次回は1/19(日)投稿予定です

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