第7話 氷と色
翌土曜日夕方、山津市の事故現場
一人の男性警官が人を待っていた。
「お待ちしておりました。能力者犯罪捜査機関の方ですね」
「はい。私が今回協力させていただく、えらいひとです。」
「はい?」
「ですから、」
「はいはい、先生はいいから、私が説明します。」
先生と呼ばれる人物は自己紹介を同行者の女子学生に遮られる。
「この人は、苗字が江良、名前が威人なんです」
「そうでしたか。これは失礼いたしました。」
「して、現状は?」
江良先生は事故現場の様子を尋ねる。
「能力によって盛り上がった所は発生から数分で元に戻りました。
しかし、道路の破損が激しく、修復を行っているところです」
「なるほど、能力の限界ですかね。犯人の特定はできていますか?」
「できています。防犯カメラを調べたところ、怪しい男が一人。
その男は事故発生時は地面に手をつき、事故を見届けると現場から去っていきました」
「じゃぁ、そいつで決定じゃねぇか。早くとっ捕まえに行こうぜ」
「ゆーくんはちょっと黙ってて」
「同行者が賑やかですみません。その人物の身元は把握できていますか?」
「はい、土井一という人物です。
被害者の一人と面識があり、先日もトラブルを起こして警察が出動する騒ぎになっています」
「では、その土井という人のもとへ向かいましょうか」
江良先生たち4人は土井の住んでいるアパートの前についた。
「見張りに付けている警官から、そろそろ帰ってくると連絡がありました」
「わかりました。あ、もし戦闘になったら2人とも頼みますよ」
「え!?私たちが!?」
「なんだ彩、びびってんのか?」
「びびってないけど、何の準備もしてないよ?」
「すみません、私戦闘は専門外ですので」
((じゃあなんで現場に来たんだよ!))
「皆さん、見えました。あの男です」
ホームセンターの袋を両手にぶら下げた男が歩いてくる。
「あのー、もし?土井一さんでしょうか?」
江良先生が土井に話しかける。
((なんで勝手に話しかけに行ってんの!?))
佑と彩は江良先生の行動に驚いている。
「たしかに、私は土井一ですが、何か御用でしょうか?」
「あ、私は能力者犯罪捜査機関の者でしてね。
先日の事故の件でここに参りました」
土井の表情が一瞬こわばる。
「その件と私に何の関係が?」
「まぁ、あなたの仕業だろうと踏んでましてね、証拠もありますし」
((えーー、何でそんなにストレートにいくの!?))
江良先生の言動に佑と彩は再び驚く。
(だからこの人苦手なんだよなぁ)
土井は袋を置き、中身の包装を破りながら口を開く。
「そうですか...。それは残念です。
こんなに早く捜査機関が来るとは思いませんでしたよ」
「やはり、あなたの仕業だったんですね」
「大人しく捕まる気はありません。念のため買い物をしておいてよかった」
すると、土井は袋の中から土を一面にまき散らした。
「やべっ、先生離れろ!」
「戦闘は初めてですが、そうですね、侍でも作ってみましょう」
まき散らされた土を中心に周りの砂や石が集まり始める。
「私は日本の歴史が好きでね。侍が実在するとこんな感じでしょうかね?」
刀を持った身長1,7mくらいの侍の像が江良先生に襲い掛かる。
「おっと、これは。氷堂くん、高木さんあとは頼みます」
「土の造形かぁ、なかなかいいんじゃぁねぇの。
俺もいくぜ、“氷の彫刻 刀”」
佑は両手で氷製の大刀を持ち応戦する。
「ちょっと、ゆーくん、私道具少ないんだって!」
「じゃぁ、先生たちでも守ってろ」
「ガキの能力者か!?ふん、機関の訓練生ごときに負けるか!」
侍像の刀が振り下ろされるが、佑はそれを刀身で受け止める
「おいおい、石も混ざってんのか。刃物ってより鈍器だろ」
防戦一方の佑にもう1体が攻撃を仕掛ける。
「ゆーくん、後ろ!」
「彩なんとかしてくれ」
「もう、ほんと考えなしなんだから。“青い銃撃”!」
彩の持つ絵具チューブから水属性の弾丸が放たれ、侍像の刀をはじく。
「あ、あたったー、やった!」
「ちっ、能力者が2人もいるのか。これは逃げるしか、」
「てめぇ、逃げんじゃねぇ」
「先生、追いかけてください」
「もちろんです。私も逃がすつもりはないので」
「追いかけさせるわけないだろ!土で動きを止めてやる」
土井が再び地面に手をついたその時、
―ビュンッ―
「う゛、なんだ、」
何かが土井の右足をかすめ、膝をつく。
「誰だ!俺に何しやがった!」
「何って、くないを投げただけだ」
狐の面を被り、黒のパーカーに身を包んだ人物が
土井に向かって歩いてくる。
特殊能力のある世界 第7話 ご覧いただきありがとうございます。
訓練生の佑、彩 VS 土井一
そして現れた謎の人物。
どんな結末になるのか楽しみにしていてください。
昨年バイト先の子どもたちに頼まれて書き始めた小説ですが、
次回からついにバイト先にもっていけなかったストーリになります。
何が言いたいかというと、下書きが底を尽きたということです。
仕事をしながらですが、執筆活動頑張りますので、
応援のほどよろしくお願いします。
面白かったら、周りの友達にも勧めてくださいm(__)m
GWは地元に帰ります!
3,4日は大学院生時代の思い出の地を巡る予定です。
皆さんもGW満喫してください!!
第8話の更新は5月9日20時頃です。