第67話 閉場
昂輝の放った稲妻は天井を突き破った。
「もう!あっぶないなぁ、人が話してるときに!
殺す気はないって言ってるのに、なんで、、こう、げ、、き、、、?」
女性はパラパラと落ちてくるカラフルな物に気が付き、天井を見上げた。
(これって、まさか)
「やっと、、気づいたか。
はなっから、お前なんか狙ってねぇよ」
途端、一面にステンドグラスの装飾をされた天井は崩壊を始める。
「あ、ちょ、それはやばっ、、、」
崩れた天井と共に女性も木漏れ日の間の床に落ちてきた。
「もぉ~、何すんのよ!」
「おい、引きずり落としたぞ」
「何で落ちてきたかわからんが、よくやった」
「糸だ、気づけアホ」
昂輝が言い終わるが早いか、点火が早いか、
誠斗は両腕の痛みに耐えながら両脚の炎で飛んだ。
「人が見逃すって言ってるのになんで聞かないかなぁ」
「こっちがその気じゃねぇんだよ」
しかし、誠斗が放った蹴りは蜘蛛の巣状の糸に止められた。
「ちっ、堅ぇな」
「さっきより威力ないじゃん。
それでもやるの?」
「るせぇな!」
誠斗は蜘蛛の巣状の糸にもう一度蹴りを入れたが、
蹴りに合わせて糸がしなり、
昂輝の横まで跳ね飛ばされてしまった。
「人が作ったチャンスを、無駄にすんなよ」
「あぁ?お前こそ、休んでね―――」
昂輝は誠斗の前から消え、女性の背後をとった。
(あの野郎、壁にもたれて充電してたのかよ)
「倒せば繭は消えるんだろ?」
「えぇ、そうよ」
既に昂輝は頭を蹴ろうとしていた。
(はやっ)
間一髪、女性は刀身を伸ばし蹴りを受け止めた。
そして、昂輝を包むように右手から糸を伸ばし始める。
「っ、捕まってたまるかよ」
昂輝は距離をとった。
その時、
「中にいるのは確実に敵だ、注意しろ!」
「「はい!」」
木漏れ日の間の入り口から3つの声がした。
「やっば、捜査官かな。
じゃ、あんた達大人しく捕まりなさいよ」
女性はそう言い残すと天井に糸を伸ばし、外へと去っていった。
「あいつ、捜査官でもないのか?」
「知るかよ。
あの繭解いてねぇなら、どうしようもねぇな」
そして、3人の捜査官が木漏れ日の間へと入ってきた。
「笠尾組、村井誠斗、そしてお前が稲鳴昂輝だな」
「だったら何だ?」
「お前たちを捕まえる」
「かかって来いよ、大人しく捕まる気はねぇぜ」
昂輝が捜査官たちに向かって言い放ったが、
誠斗は鼻で笑って歩き出した。
「はっ、勝手にやってろ」
「待てよ、俺はお前との決着もついてねぇんだぞ」
「知るか。俺はバカな弟を連れて帰る」
「おい!」
「なんだ?両腕骨折で3人相手はきついのか?」
誠斗は1人の捜査官の横に飛ぶと拳を握った。
「"バーン・フィスト"」
腹を殴られた捜査官はうずくまった。
「ぐ、ぅ、、、」
「1人減らしたぞ、あとは自分でやれよ」
誠斗は北館へと消えていった。
その後、昂輝は2人の捜査官を倒した。
村井誠斗は弟の勇斗を連れて、裏口の捜査官と交戦した後、美術館を後にした。
木漏れ日の間と裏口の捜査官からの通信が途切れたことは、
橋本支部長にすぐに伝えられた。
「そう、わかったわ。
あなたたちは中に入らなくていいわよ。
警備を裏口と二手に分かれて警備を続けて」
「しかし、中には―――」
「大丈夫、彫刻は無事よ。
外の警備が手薄になる方が、一般人を危険にさらすわ」
「わかりました。それでは2名を裏口の警備に当てます」
「中の戦いは落ち着いた様ね」
「AACAと笠尾組は彫刻を盗れず、捜査官にも負傷者数名、展示会は中止」
「何とも言えない結果ね」
「せめて、あなた達だけでも捕らえられるといいんだけどね」
「でも、実弾も能力も使い切ったでしょ?
逃がしてくれてもいいんじゃない?」
「そういうわけにもいかないんだよね、、、」
その時、再び橋本支部長に通信が入った。
「橋本支部長大変です!
木漏れ日の間周辺から煙が上がっています」
通信を聞いて後ろを振り向いた。
確かに、木漏れ日の間およびその周辺から煙が上がっている。
「これは、、、、、よくないわね。
出入口から2人、裏口から1人中へ、私も向かう。
火元の特定と美術品および仲間の保護」
千陽が凛奈に背を向け走り出そうとしたとき、凛奈が口を開いた。
「千陽さん、最後に1ついい?」
――――――
昂輝は捜査官を倒した直後、空を仰いで寝転がった。
「あーーーー、うごきたくねぇーー」
曇っていた空が晴れ間を見せ、木漏れ日の間に光を入れる。
「あんたが壊さなきゃ、天井がきれいだったのになぁ」
壊れた天井からまつりが入ってきた。
「うるせぇな、仕方ねぇだろ」
「早くここから出るわよ」
「外にもいんだろ?特に支部長がよ」
「今、リーダーと交戦中だってさ。
でも、こっちにおびき寄せるらしいから」
「どうやって?」
「さぁ?私はこれを並べて待機って言われたから来ただけ。
屋上に数本とこの部屋に数本」
「発煙筒か、でもそれだけじゃだめだろ」
「そろそろ、合図が来るらしいよ」
「あいずねぇ」
すると、木漏れ日の間上空に何かが飛んできた。
「あ、来たよ、合図」
――――――
美術館の外では、来場者たちが心配そうに建物を眺めていた。
その中には迎えを待つ赤城兄弟の姿もある。
「お兄ちゃん、あれ」
陽が上空を指さす。
「紙か?ひらひら舞ってんな」
美術館上空に何かが飛んできていた。
そして、その浮遊物は突然燃え上がり消えた。
それに次ぐように建物から煙が上がり始める。
「お兄ちゃん、さっきまでいたところが!」
「何が起こってんのかわかんねぇけど、もう少し離れようぜ」
「う、うん。
そういえば、溝さんは、、、」
「あの人は大人だから大丈夫だろ。
何かとトラブルに巻き込まれる人だけどな」
西白共立美術館
特別展示会『黒と木目の世界』
一般来場者および展示作品への被害なかったが、
建物損壊、展示会の残りの日程の中止に幕を閉じた。
「左之江玄造、黒檀の昇り龍、、、
紅玉ノ眼」
男性は読んでいたパンフレットを閉じると、美術館でのことを思い返した。
(やはり、雷系の能力はかっこいい)
「メダッテナイダロウナ」
「顔は見られてますがね、大丈夫でしょう。
それより、能力の話をしましょう」
特殊能力のある世界 第67話 ご覧いただきありがとうございます。
やーっと、彫刻編終わります。
(長かった、、、)
短めの話を挟みつつ、第一部、ラストといきましょう。
次回の投稿は9/7(土)
最近やることが増え投稿がまちまちで申し訳ないですが
頑張ります。
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※誤字脱字等は後でします、大目に見てください。