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第59話 木漏れ日を遮る雲


西白地方、山津市

西白共立美術館では『黒と木目の世界』と題して、

黒檀(こくたん)でできた様々な彫刻の展示会を行っていた。

美術館の3階、北館と南館の間にまたがる木漏れ日の間には

今回の目玉作品『黒檀の昇り龍-紅玉ノ眼-』が展示されている。


しかし、この展示会にはその彫刻を狙う者たちが潜入していた。


そして、今展示会は開場時間を迎え、

第1グループが館内へと入っていった。


第1グループとして入館した大学生 奥井(おくい)実和(みわ)のスマホに1通のメールが届いた。


「俺は彫刻には興味ねぇ」


(はぁ、釣れない奴)

実和はそのメールを読んで溜息をついた。


第1グループとして美術館に入ったのは計10人、

中には彫刻を狙う者もいるが、我先にと走る者は一人はいない。

ここで走ると悪目立ちし、計画に支障をきたす恐れがあるからだ。


AACAのリーダー、御剣(みつるぎ)凛奈(りな)は木漏れ日の間に入ると、

インカムを通して中の状況を共有した。


「中央に獲物、警備4人」

「思ったより少ねぇな。

そろそろ第2グループ入るぞ、計11人」

「11?」

「ああ、何かにぎやかな兄弟がいてな」

「こちらまつり、裏口付近でジョン・スミス発見。接触するよ」

鳥型になって飛んでいたまつりは急降下し、人の姿に戻り、ジョンに声を掛けた。



「ねーねー、こんな所で何してるの?」

(なんだ、この子どもはどこから?)

ジョンは突如現れた少女を不思議に思いながら答えた。

「私は今仕事中です」

「でも、ここの人じゃなよね?制服じゃないし。

何のお仕事なの?」

(もう、何ですかこの子どもは、早く終わらせて、、、)

「私は美術館の人ではないです。あのカメラに用があるんです」

カメラを指したジョンの指先から鉄の針が飛び出す。

が、その針を火の玉が打ち落とした。


「!?何ですか、あなた」

「あのカメラ、私たちが使ってるんだよね。壊さないでくれる?」

「こんな子どもも、私たちの敵になるのですか」



その頃、館内では、

第2グループの11人が木漏れ日の間に到着しつつあった。


「すっげぇー、見てみろよこれ!」

1人の男の子が走って『黒檀の昇り龍-紅玉ノ眼-』に近づいた。

「お兄ちゃん、走ったらダメだってば」

そのあとに続いて、もう1人男の子が入ってきた。

2人の男の子に葉泉支部支部長の橋本(はしもと)千陽(ちはる)が近づく。

「君たち、ここにある作品はどれも大切な物なの。

転んでぶつかるといけないから、歩いて回ってね」

「はーい。

あ!周りにもたくさんあんじゃん!

おい!(よう)、こっちにこいよ」


走ってはしゃいでいるのは、芽吹小学校6年 赤城(あかぎ)(こう)

その後ろを歩いているのは1つ下の弟 赤城(あかぎ)(よう)だ。


「なんだあのガキども」

「大丈夫、ただの来場者だろ」

笠尾組の下っ端が2人を睨みつける。

「おい、次はじじいが近づいてきたぞ」


歩行器を押したおじいさんが顎鬚(あごひげ)をなでながら、彫刻に近づく。

「ふぉっふぉっ、これはまた見事な」

老人は彫刻を様々な角度から眺めている。


(くっそ、なんなんだあのじじい、早くどけよ)

笠尾組の下っ端が怒りをあらわにしている。



「ねぇ、お兄ちゃん、あっちで彫刻見てる人みたことない?」

陽は入り口付近の彫刻を熱心に見ている人物を指さす。

「ん?あ!あれ、みぞさんじゃねぇか!」

洸はその人物のもとに駆け寄った。


「みぞさーん」

「ん?誰です?私を呼ぶのは」

「なぁ、みぞさんだろ?なんでここに居るんだ?」

洸がみぞさんと呼ぶその男性は、以前、杉谷(すぎたに)真菫(ますみ)による連続誘拐事件の際に、

洸と共に箱の中に閉じ込められており、

自らを溝隠(みぞかくし)更吉(こうきち)と名乗った人物であった。


「おー、君はあの時の子か。

私は仕事みたいなものだよ。木彫りにも興味があってね。

君たちこそ何でこんな所に?」

「龍かっけぇって思ってきた!」

「僕はそんな兄の付き添いです」

「そうだったのか。

で、ここはもう見終わったのか?」

「おん、こくたんって初めて聞いたけどかっけぇ色してた」

「北館2階にも作品はあるようだから、早く行くといい」

溝隠はパンフレットを眺めながら、2人にすすめた。

「マジで!?それならは―――」


その時、館内のすべての電気が落ちた。


「わ、なんだよ」


「停電!?誰の仕業(しわざ)だ!」


この日の天気は曇り

晴れの日は天井のステンドグラスから光を取り入れる木漏れ日の間も

この日に限っては暗闇に包まれる。


(さて、始めましょ)


この暗闇の中、計画を実行に移す者たちがいた。

それに警備の中で唯一気づいたのは橋本千陽だった。

暗闇の中、木漏れ日の間から出ようとする犯人に1度発砲する。


― パンッ ―


「うわっ、何の音!?」


「誰だ!何してやがる」

「おい、待てやたらにうごくんじゃねぇ」


しかし、弾丸は軌道を変え、床に着弾した。

(!?軌道が、、、)


「私は犯人を追うから、ここは任せます」

橋本支部長は他の捜査官に指示を出し、犯人を追おうとするが、

何者かが顔に蹴りかかってきた。

咄嗟にガードをしたが、片膝をつかされてしまう。


「誰!何者なの」

橋本支部長は攻撃の来た方向に叫んだ。


「俺たちは犯罪のサポートで金稼ぎをする組織 AACA。

俺は戦闘員、稲鳴(いななき)昂輝(こうき)だ!」


昂輝の名乗り終わりと同時に館内の照明が復活する。


(決まったぜ!完璧なタイミングだ、アル)

特殊能力のある世界 第59話 ご覧いただきありがとうございます。


遂に動き出したAACAと笠尾組

昂輝はあんなに堂々と名乗っちゃって大丈夫なんですかね?

(もちろん、ダメです!)


杉谷真菫による連続誘拐事件は第25~27話です


次回の投稿は5/11(土)です。


SSの最新話「SS No,0 黒木章」投稿したつもりでしたが、できてませんでした。

なんなら、書いたデータも消えてたので後日改めて投稿します。

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