第56話 眠れる獅子
箱の中
「くっ、、、痛ぇなぁ、おい」
小田切は左肩を押さえながら壁にもたれかかっていた。
「ドウダッタ?」
「な、何であんたも箱の中にいんだよ」
「オレハ、デイリジユウダカラナ」
「悪いが任務は失敗だ」
「ナゼダ?」
「邪魔が入ったんだよ。
あんたの言ってた狐の面のチビだ。
捜査官じゃなくて訓練生だって言ってたぞ」
「アイツカ。ドオリデジョウホウガナイワケダ」
「さ、俺は任務に失敗した。
殺すなりなんなりしろ」
「イヤ、ヤメダ。
ソノカワリ、アノクンレンセイトノジョウホウハキチョウダ。
ハナシヲキカセロ」
小田切は少年の戦闘スタイル、武器、
そして戦いから予想した能力について話をした。
「ヤハリ、カンチケイノヨウダガ、
ノウリョクノムコウカトノツナガリハミ
そして、子どもたちの担任の先生が現れたことも話した。
「ソイツニテヲダサナカッタノハセイカイダ。
マダ、コトヲオオキクシスギルノハヨクナイ」
仮面の人物は小田切の話を聞くとその場を去ろうとした。
「おい、ちょっと待てよ。
俺もここから出してくれ、こんなに薄暗くちゃ気が滅入る」
「イイダロウ、ツイテコイ」
小田切と仮面の人物は空間の裂け目に消えていった。
そのころ、少年と駿たちはというと、
「風奈さん、あとは頼みます。
これ以上は関わりたくないので」
「それはいいんだけど、怪我は?」
「大丈夫です、それでは」
少年は3人に背を向けて歩き出した。
「あ、おい!」
駿は少年を追い、声をかけた。
「さっきは助けてくれてありがとう。
正直、おど―――」
「気にするな。
俺の素顔については誰にもいうな、わかったな」
「わかった!
景山さんにも言わねぇよ」
「ふっ、あの人は知ってるよ、バカか。
もっと強くなれよ、待ってるからな」
そう言い残すと少年は去っていった。
「あの人なんだって?」
「もっと強くなれよって」
「あの人は訓練生、松平くんの先輩ですもんね。
さ、早く帰りましょ。家まで送りますね」
(あいつが、先輩、か、、、)
「先生、家まで送るって、また空を飛ぶんじゃ」
波溜が不安そうな顔をして訊ねた。
「ちゃんと車で送りますよ」
「よかったぁ」
波溜を誘拐に来た小田切武人
その目的は不明だが、駿と少年の活躍のおかげで
大きな被害が出ることなく幕を閉じた。
翌日の金曜日
「おい、駿その傷どうした?
昨日の帰りになんかあったか?」
「ま、まぁな。山を自転車で下ったらこけた」
「バカだなぁ~。
ま、俺もやったことあるけどな」
「そんなことより、これ見てくれよ」
駿はガサゴソとカバンを探ると何かを取り出した。
「何が出てくるんだ?
あ!まさか、また買ったのか!?」
「バカ、ちげぇよ。これだよこれ」
駿の手には段ボール製の剣のようなものが握られている。
「すげぇぇ!色まで塗ってあんじゃん!」
拓也は目を輝かせているが、
「駿くん、その剣はすごいけど、
まさか、宿題、、、」
「おい涼太、こいつは工作しててもしてなくても
宿題をやってこねぇよ」
「、、、確かにそうだね!
僕にも持たせて!」
「お前ら、失礼な、まぁやってねぇけど」
「男子はいつも賑やかだねぇ~」
「駿がうるさいだけよ、
ほんっと影響されやすいバカなんだから」
「あれ?波溜ちゃんなんかあった?」
「なにもないわよ。
和華、あれ黙らせてきて」
「え~、私じゃ無理だって」
「俺はもっと強くなる!
機関に入った時のために武器の練習だー!!!」
教室中に駿の声が響いた。
「うるさいっ!」
「なんだ?やんのか、波溜」
「やんないわよ、バッカじゃない」
「駿くん、強くなりたいのはいいけど、練習相手は?」
「ん~、そうだよな~」
駿は教室を見渡し、司と信介を一瞬見るが、
「涼太はバスケだろ?
拓也!お前も武器作れよ」
「俺かよ!よーし、月曜日待ってろよ」
「おい、駿」
呼ばれた駿は司の方を向いた。
司はそれを確認すると、消しゴムを投げつけた。
「ってぇ、何すんだよ!」
「強くなるんだろ?
ナイフだったら、顔に刺さってるぞ?」
(あのやろぉ~)
駿は消しゴムを拾い上げると司に投げ返した。
が、司は動じることなくでキャッチした。
「おい司、ナイフだったら手切れてるぞ」
「これは消しゴムだ、アホか」
「あのやろぉ」
駿はお手製の剣を振り上げ、司に仕掛けるが
振り上げた腕は捕まれ、振り下ろせない
そのうえ、デコピンを喰らわされた。
「ぐぬぅ~」
その様子に周りも笑っている。
「俺の勝ちか?
いつでも相手してやるぞ」
「あれって、司くんなりの優しさ、かな?」
「さぁね、男子は分かんない。
和華がそう思うなら、そうなんじゃない?」
「駿くんより強そうなのは確かだねぇ~」
「司!俺の相手もしやがれ!」
拓也の手には円筒状に教科書が握られている。
そして、駿と同じようにデコピンで負けた。
子どもたちが騒いでいるころ、
葉泉支部の捜査官、松浦優莉は任務にあたっていた。
(はぁ、候補地何ヶ所あったっけ~?
早く当たり引けないかなぁ)
彼女はジュースを片手に
鷹と狐の面を被った少年を連れている。
「今日の現場はここよ。
タカメラは上空の撮影、
圭坊は地上の西側をお願い」
1羽と1人は静かに頷くと探索を始めた。
「さーてとっ、私は東側か」
松浦はベルトに結ばれた鞭をほどくと、山へと入っていった。
特殊能力のある世界 第56話 ご覧いただきありがとうございます。
小田切は何とか生き延びているようですね。
少年か駿と再戦することはあるんでしょうか?
そして、優莉はタカメラと圭坊を連れて何を探しているんでしょうか?
次回の投稿は4/20(土)です。
また、この後、サイドストーリ No,0 厚木則弘も投稿します。
併せてご覧ください。
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