第54話 剣と拳
「お前、もう少し粘れよ」
その声に駿は恐る恐る目を開け、声の主の顔を見る。
「!?」
「面を着ける時間、なかったじゃねぇか」
「お、お前、何で、、ここに」
駿を助けた人物は狐の面を着けると小田切の方を向いた。
「さっきの女の子なら、学校に着いた。こいつの勝ちだ。
小田切武人だな、ここからは俺が相手をさせてもらう」
駿を助け出したのは、
駿たちが葉泉支部での社会科見学で出会った少年だった。
「おい!相手させてもらうって、あいつは―――」
「俺はお前とは立場が違うんだよ」
「はぁ?何言って―――」
少年の背中にできた傷が駿の目に入る。
「お前、その傷、、、」
「俺らは怪我をしようと死のうと、一般人を守る義務がある。
わかったら離れてろ」
「俺らって、お前な―――」
「おい!そこのお面の坊主!
お前も小学生か?あんまり首突っ込むと―――」
「安心しろ、俺は機関の訓練生だ。
背丈で判断されては困る」
「そいつはすまんかった。
訓練生なんだな、それなら本気でやるがいいか?」
「もちろんだ。
俺も試したい武器があるんだよ」
少年はそう言うと腰に手を回し鞘から柄を引き抜いた。
「ん?なんだ、そいつは」
少年の右手には刀身のない刀の柄が握られている。
「こいつが俺の武器だ」
少年は目を瞑り深呼吸すると、右手に集中した。
すると、柄から刃が伸び小太刀の様になった。
「ほぉ、そいつは面白いもんもってんな」
「だろ?頼んで作ってもらったんだ。
機関の人間だって証明になったか?」
「あぁ、充分すぎる。
遠慮なくいかせてもらう」
小田切は両手を体の前に構え、剣へと変化させた。
その構えはボクサーのそれを彷彿とさせる。
小田切はそのまま少年への距離を詰める。
(普通の二刀流じゃないな)
小田切は撃つ角度、身体の角度を変えながら
剣に変えた拳を少年へと何度も伸ばす。
「おい、その刀は飾りか?
反応はいいが、防戦一方だな、訓練生さんよ」
「悪いな、想定外すぎて戸惑ってんだ」
「まだ訓練生だもんな、度胸は認めてやるよ」
小田切の右のボディーフックが少年の服を掠めた。
「実力も認めてもらわないと
駆けつけといて格好つかねぇだろ」
少年は小田切のパンチを潜り抜け近づく
(良い動きじゃねぇか)
小田切は少年の動きに合わせ、後ろに下がり、アッパーを放った。
(っ、)
少年はその攻撃を避けるとそのまま距離を取った。
「いい動きだが、そのお面、外したくないらしいな」
「素顔見られていいなら着けてねぇよ。
俺は小田切は会社員と聞いていたが、そっちこそいい動きをするな」
「会社員で間違いねぇが、傍らボクシングもやっていてね。
多少なら動ける方だ」
(能力犯罪歴は前回が初犯だが、能力便りでない動き。
優莉さんを前にしても余裕があったのはその自信ゆえか)
少年はウエストポーチから苦無を取り出すと左手に握った。
「さて、第2ラウンドといこうか」
次は少年から、小田切へと距離を詰めた。
ここは、葉泉市内とある廃墟
犯罪をサポートする組織AACAのメンバーが円卓を囲ていた。
「アールー、先週の分け前まーだー?」
「昨日、送った」
「うっそ~」
まつりはそう言いながらスマホを確認した。
「あ!あった!7万かぁ~」
「はぁあ?何でお前が俺より貰ってんだよ」
昂輝が声を荒げた。
「え?だって、昂輝は留守番じゃん?」
「ちっ、俺も現場に出せよ」
「昂輝は、やりすぎるから、案件を選ぶ」
「くそっ!
そういえば、アル!この前のメールの件大丈夫だろうな」
「うん、ここってことを、ピンポイントでは特定されない。
ただ、送信元たどった時に、ここが候補に出るくらい」
「え!?ここに捜査官くるの?」
「んなもん、返り討ちにしてやる」
「つーかーれーるー。
てか、どこが来るの?支部?本部?」
「支部でしょうね、
本部は山津市内と西白全域に及ぶ犯罪、
あとは支部で手が回らない時にしか動かないわよ」
「葉泉支部か、どんな奴がいんだよ」
「さ、私は興味ないから」
「昂輝、知りたいなら、調べようか?」
「調べるって?」
「アルのことだからハッキングでしょ~?」
「うん、どうする?」
「そこまでする必要ねぇよ。
またこっちの情報を相手にやんのか?」
「じゃあ、浅いところだけ」
(やんのかよ!)
アルはそう言ってパソコンを2台用意した。
十数分後
「出たよ」
「なにが」
「葉泉支部の捜査官、全部で4人。
支部長は橋本千陽、他に景山省吾、松浦優莉って人がいる。
あと一人いるみたいだけど、顔も名前も機関の配属表にない。
今年から配属みたいだけど、、、」
「機関の配属表にもねえ奴いんのかよ。
で?そいつらの能力は」
「それ以上は、、、」
「さすがにそこはシークレットでしょ~」
「ちっ」
「橋本千陽は拳銃を使う雷属性の能力者よ」
「え?」
「りなっち、知ってるの?」
「、、、、、」
特殊能力のある世界 第54話 ご覧いただきありがとうございます。
小田切の戦闘シーン前回はなかったですからね、
手を剣に変え、パンチの要領で繰り出すスタイル。
剣士って感じではないですね、格闘家に近い。
そして、少年はお面の下は見られたくないようです
(駿には見られちゃったんですけどね)
さて、次回の投稿は 4/6(土)です。
作者の諸事情で今後の投稿は21時までに行います。
ご了承ください。
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