第47話 届かない攻撃
学校球技大会 2回戦第2試合
芽吹小学校 対 竹ノ杜学園竹ノ杜小学校
第1セットは2対7で竹ノ杜小学校が先取した。
今はセット間の休憩時間、
芽吹小学校は第2セットの人選でもめている。
「お前な!なんで俺が交代なんだよ!」
「慎悟と開さんは何で点が取れた?」
「たしかに、俺は点を取ってないけど、そんなにミスしたか?
お前の方がミスしてんだろ」
「ミスがあったのは認める。
駿、俺の質問に答えたか?」
「は?質問?」
「慎悟と開さんはなぜ点を取れたか、を訊いたんだ」
「、、、答えてない、な、、なんでだ?」
「2回とも相手のブロックがなかったからだ」
「言われてみれば、、、」
「当事者からすれば、ブロックより能力がないの方がしっくりくるけどな」
「たしかに、あの能力は厄介だ」
「なら、なおさらこっちにも能力でのブロックが必要だと思わないか?」
「あった方がいいな。
でも、なんで俺なんだ?」
「より強い攻撃が打てるのは慎悟と開さん。
それに、駿は後衛でも活躍できそうだからな
3セット目に備えて、休んでろ」
「たしかにな!今日の俺はレシーブもいい!!
わかった!2セット目、絶対取れよ!
取れなかったら、『霊獣アニマ』のシールチョコ1箱な」
「それくらい安いな」
「決まりだ!」
「松平、そういうやりとりは先生として―――」
その時、2階から氷堂佑が降りてきた。
「智将さんは、負けず嫌いだもんなぁ?」
「うっせぇな、何で居んだよ、学校行け」
「佑さん!お久しぶりです!」
司が悪態をついた後、駿が駆け寄った。
「おう、久しぶりだな元気小僧」
「誰だ?この兄ちゃん」
「あー、俺は氷堂佑、訓練学校の4年だ」
佑が自己紹介を終えると、植木先生がやって来た。
「氷堂くん、友達の応援をしたいのは分かるが、
一応、関係者以外立ち入り禁止なんだよ」
「そうですよね、じゃ植木先生こいつら頼んますよ。
頑張れよ、チビたち」
そう言うと佑は手を振って2階に戻っていった。
「3セット目の俺の活躍、見といてください!」
「ちっ、余計なことを」
「司くん、佑さんに当たりきついよね」
「初対面でいきなりいたずらされてたからな」
「確かに、ぐっすり寝てたのにね」
「で、他に作戦はあるのか?」
「消えるサーブは俺が取る、くらいか」
セット間の休憩が終わる頃、一人の男性が青空のもと目を覚ました。
「ん゛、ん~、あぁ、来ねぇかぁ~」
男性は体を起こすと大きく伸びをした。
「そのようですね、誰も来ませんでしたよ」
男性は近くに転がっている石を1つ拾うと、
体育館の方に投げた。
― バチッ ―
石は何かに弾かれて宙で跳ねた。
「やっぱり、出れねぇか~」
男性は周囲にも手当たり次第石を投げるが、全て弾かれる。
「はぁー、取り囲まれてやがる。
ほんとにあんたを倒さねぇとダメか?」
「ダメですね、私にも立場があるので」
「めんどくせぇなぁ。
さすがに先生が多いのは予想してたが、
捜査官も来てるとは思わなかった」
「お仲間の遅刻もですね」
「まぁ、あいつらがチクったって考えもできるが、、、
もうこの際どうでもいいか。
あんたを倒さないといけないことには変わりないもんな」
「私は、いつでもいいですよぉ?
待ちくたびれちゃったくらいです」
「じゃぁ、サクッと終わらせよう」
男性は四肢を狼のそれに変化させると、
女性捜査官に飛び掛かった。
― ピーー ―
「これより、第2セットを開始します」
芽吹 竹ノ杜
津田麻由 元原開 佐鯉斗真 米井才
沖和司 旅津沙雪 川合倖羽 上武かこ
片桐朱里 木本慎悟 狐塚早知 峰石翔
第2セット最初のサーバーは芽吹小学校 津田麻由
第1セットを振り返り、どこに打つか作戦を立てている。
(相手の攻撃パターンは消えるトス、翼で飛んでスパイク、
あと、あの高速バックアタックかな。
このセットはさっちゃん入ってるし、ボールが見える方がいいよね)
そして、才に向かってサーブを打った。
才が上げたボール、その落下地点には早知がいる。
さらに、翔が助走のため後ろに数歩下がった。
(1回戦で見た雪の壁、まずは速さで振り切れるか試さないと)
翔が跳び、早知の両手にボールが落ちようとする時、
早知は自らに起こっている異変に気付いた。
(、、?翔が腕を振り下ろす位置、タイミングが、見えない?)
早知は咄嗟に斗真にトスを上げるが、
その攻撃は開のブロックに阻まれる。
― ピッ 芽吹 1-0 竹ノ杜 ―
「うぉぉぉぉ、芽吹が先制!?」
「あんなに苦戦してたのにね」
「バックアタックかとおもったぜ」
「フェイクだったのかな?」
今日行った計3セット、そのすべてを圧勝している竹ノ杜小学校、
そこから先制点を取った芽吹小学校に会場は盛り上がる。
ただ、一人を除いて、
「、、、、、、、、、」
そして続くラリー、倖羽が両翼を広げ羽ばたこうとするが、
少し浮き上がった所で翼が消滅した。
「あわっ、!」
既に上がっていたボールを何とか斗真が打つが、
これは沙雪の能力に阻まれる。
(まただ、今度は倖羽の能力が消えたのと同時に、
私の能力も使えなくなった)
― ピッ 芽吹 2-0 竹ノ杜 ―
その頃、外では、
「くっ、、、なんで俺の攻撃が、この爪が届かねぇんだ」
特殊能力のある世界 第47話 ご覧いただきありがとうございます。
今回のサブタイトル「届かない攻撃」
攻撃をしているのは竹ノ杜小学校、
そして、とある男性。
彼の能力は狼でしたね。
さて、「狼色」という言葉があるようです。
どんな色を想像しますか?答え合わせはご自身で調べてみてください。
それを知ったうえで、第45話を見てみるのもいいですね。
次回、第48話は2/17(土) 19時ごろ投稿予定です。
三連休の方も多いことでしょう、楽しく過ごしてください。