第11話 前日
時間はさらに流れ、
ついに学内選抜前日の放課後になった。
イベントの前ということもあり、
芽吹小学校はいつにも増して賑やかである。
5年生クラス
「さっちゃん、悪いけど僕は先に帰るよ。
お兄ちゃんが調子に乗って滅茶苦茶してそうだから、見とかなきゃ」
「あ、陽、ちょっと...」
「行ったな」
「丈巳!いるなら止めなさいよ。明日の確認があったのに」
「お前は何を慎重になってんだよ」
「だって、勝ちたいじゃん」
「俺らが前衛なんだから、大丈夫だろ」
ヘビ顔の男子が得意げに言う。
「うーん、麻由も何とか言ってよー」
「んー、ま、いいんじゃない?
あ、そうだ、開がさっちゃんとたけを呼んでたよ。体育館に来いって」
「もー、なんでそんなに自由なのよ!」
「はぁ?俺もか?もう水筒空だから帰りたいんだけど」
「たけにはジュース奢るってさ」
「なら、行ってもいいか。沙雪行くぞ」
「あー、もうわかったわよ」
6年生クラス
以前、体育館の壁をへこませた張本人、
赤城洸が瞬足の能力を駆使し教室を走り回っている。
「っっしゃー、明日は選抜だーー!!!
俺が!一番目立ってやるぜ!!!!」
「洸!うるさい、教室で走るな!」
女の子が教卓を叩いて怒っている。
「選抜の前日くらい堅い事言うなって」
「あんたがぶつかってきたら、うちら吹っ飛ばされんだからね!
周りに気を使いなさいよ。」
「大丈夫だって、見てみろ、少しずつ制御できるように―――」
教室のドアが開き、5年生の陽が入ってくる。
「お兄ちゃん!何で教室はしってるの、帰るよ!」
「げ、陽!? あっ!」
―ガシャン(バシャン)―
「お兄ちゃん!?」
「あーあ、また洸がやったよ」
洸がテラスへ続く窓ガラスに激突した。
陽もクラスメイトも何かに激突する洸は見慣れているが、
やはり、陽は心配が先行するようだ。
「いってーな。陽!急に声かけてくるなよ」
ガラス片に囲まれながら、びしょ濡れの洸が喋っている。
「洸!だから、走るなって言ったでしょ。
余計な手間かけさせないで!」
再び教卓を叩いて、女の子が怒っている。
そして、教室後方のドアから男の先生が入ってきた。
「6年!一体何の騒ぎだ!」
「げ、植木」
「赤城洸!まーた、お前か。
それと、ちゃんと先生を付けろ!」
「・・・すんません」
「で、けがはないか?」
「海のおかげで無傷です」
「選抜は明日だぞ、ケガするようなことはするな!
弟が迎えに来てるんだから、おとなしく帰りなさい」
「わかりました」
「植木先生、兄がいつもすみません」
「あー、気にするな。気を付けて帰れよ」
4年生クラス
「よーしお前ら、練習するぞ」
帰り支度を終えた駿が声を掛けた。
「あんたはレシーブまだまだだもんね」
「うっせぇなー。
なぁ、おい、司たちも、、
あれあいつらは?」
「司くんなら、涼太くんと朱里ちゃん連れてどっか行ったよ」
「なんだってんだよ、前日だぞ、皆で練習を―――」
「あらー?皆さんは今日も練習ですか?」
青屋先生が出席簿を取りに入ってきた。
「あ、青屋先生。うちらの練習付き合ってくれません?」
「30分ならいいですけど、今日の体育館使用は5年生のはずでは?」
「校庭でやります」
「熱心ですね。わかりました。
そうと決まれば、早く行きましょ」
「「はい!!」」
3年生クラス
「真帆ちゃーん、帰ろー?」
「んー...」
「どうしたの?」
「明日、選抜なのになぁって」
「練習?」
「んー...」
「お?まーた真帆が難しく考えてんのか?
選ばれるのは4年生以上、俺たち3年は選ばれないんだからいいだろ」
「そうだよねぇ...」
「圭くんに流されちゃだめだよ」
「な、お前、そんなこと言うとこれ見せないぞ」
圭は手に持っているタブレット端末を2人に見せつける。
「は?お前じゃないし、美姫って名前がありますけど?
てか、何よそれ」
「去年の学内選抜の映像」
「「えっ!?」」
「いつの間にそんなの手に入れたの」
「さっき学と先生に頼みに行ったらもらえた」
「へぇ、あんたやるじゃん」
「あんたじゃねぇよ。圭って名前がありますけど?」
「うっざ」
「あ、でも碧たち帰っちゃったかも...」
「あいつらなら、昇降口で捕まえたからよ。
はやく図書室行くぞ。スクリーンで見れるんだってよ」
真穂、美姫、圭は図書室に向かった。
各学年、それぞれの前日を過ごし、学内選抜当日を迎えた。
芽吹小学校正門前
以前、山津市での事件を解決した2人の訓練生が
誰かと待ち合わせをしている。
「ここが、芽吹小ねぇ。
俺なら2度と小学生とかやりたくねぇわ」
「ゆーくんも勉強嫌いだもんね」
「あぁ、むり。俺なら学校サボってるわ」
「最近もたまにサボってるくせに」
「悪かったな。で、俺らはどうしとけばいいんだ?」
「正門にいたら、迎えに来てくれるって」
「氷堂くーん、高木さーん、こっちですよー」
校舎内から二人を呼ぶ声がする。
「俺らを呼んだのってあの先生か?」
「そうよ、4年生の担任をしてる青屋風奈先生」
「あの人が!?思ったより、ゆるい感じだな」
「じゃあ、行こっか」
氷堂佑と高木彩
2人の見学者を招いて
芽吹小学校学内選抜が開幕する。
特殊能力のある世界 第11話 ご覧いただきありがとうございます。
本日は佐賀のホテルから投稿です。
出張で昨日から佐賀に来ております。
さて、本日は少しだけキャラ紹介。
芽吹小学校の賑やかしといえば、
4年の松平駿と6年の赤城洸ですね。
この二人は共通して、焼き魚と裁縫が嫌いです。
骨を取ったり、針と糸で縫ったりと
ちまちましたことが苦手なんですね。
まぁ、僕も焼き魚は嫌いです。
僕の好きな食べ物は甘いもの(特にチーズケーキ)。
誕生日は毎回食べてます。
次回 第12話は6月8日(木) 21時頃投稿予定です。
2週間の長期出張頑張ります。