第102話 五養山の廃墟2
駿たち4人は山の中腹にある廃旅館に逃げ込むと、駿は中に転がっていた廃材で入り口を塞ぐバリケードを作った。
「よし、これで入ってこれねえだろ」
「ないよりはましだけど、、、」
「隙間から入ってきそうよね」
波溜と和華の2人はバリケードを不安そうに眺めていた。
「拓也!階段は使えそうか」
「大丈夫!俺が乗っても壊れそうにないよ」
「よし、隠れる部屋を探すぞ」
「駿くん、ここは平気なのね」
「あ?だって明るいじゃねぇか。俺が怖いのはお化け」
時刻はお昼過ぎ、駿たちが入った廃旅館の壁の穴や窓から日光が差し込み建物の中を照らしていた。
「あの人形だけどよ、お化けじゃなくて能力なんじゃないか?」
拓也がグミを噛みながら言った。
「何でそう思うんだよ」
「俺が近づこうとしたとき転けてたろ?お化けってさ、浮いてるから転けなくね?」
「拓也の言う通り、能力の可能性もあるわね」
「だとしたら、私たちは誰かに狙われてるってこと?」
「能力なら話は別だ!俺がとっちめてやるよ」
「ダメに決まってんでしょ!!」
駿が拳を鳴らした瞬間、波溜が強く止めた。
「何でだよ!俺は捜査官になるんだから能―――」
「じゃあ訊くけど、どうやってとっちめるつもり?」
「そりゃあ、あいつは小さいからな、蹴っ飛―――」
「はぁ、訊くだけ無駄だったわ。拓也、このバカが人形に近づかないように腕掴んどいて」
「ん、いいけど」
拓也は波溜に言われて、駿の右腕を掴んだ。
「離せよ!」
「早く隠れる場所を探すわよ」
波溜は足早に建物内を歩き始めた。
「あ!待て!俺が先頭を歩くんだよ!」
4人が2階の大部屋に身を潜めた頃、人形は入り口のバリケードを眺めていた。
(あの子たちはここに隠れたのね。入りづらいし危ないし、、、もうっ!)
案の定、人形はバリケードの隙間から建物の中に侵入した。
「絶対に人形に手を出したらダメ。もし上がってきたら私たちに知らせる、わかった?」
「見張るだけだろ。わーったから、お前もあっちに引っ込んでろ」
駿は波溜を手で払うと、部屋の入口から顔を出し廊下を見渡し始めた。
(物音はしねぇし、どっちの階段も異常なしっと)
他の3人は今後の話し合いを始めていた。
「あのバカ絶対わかってない!」
「まぁ、駿くんだもん仕方ないよ。でも、あれが能力だとしたら誰か呼んだ方が良いよね」
「誰かって誰だよ。学校に電話しても誰もいないんじゃね?」
「機関は?」
「葉泉支部の番号知ってる?」
「わかんない」
「俺もしらね」
「お前ら何をこそこそ話し合ってんだ」
「機関に電話したいけど番号がわかんないって」
「それなら俺がわかるけど、、、」
駿はそう言いつつも少し考えた。
「けど何よ。電話しなさいよ」
「いやぁ、怒られそうじゃね?」
「知んないわよ!企画したあんたが一人で怒られなさいよ」
「駿には悪いけど、怒られてくれ」
「まぁ、みんな怒られるよ」
「んー、、、。あ!そうだ!」
駿はスマホで誰かに電話を掛けると、和華へ渡し、そそくさと部屋の入口の方へ走った、
「じゃ、あとは頼んだ」
和華は渡されたスマホの画面を見て声を上げた、
「え!なんで!」
「大きい声出さないでよ」
「ごめん。でも、だってさ、これ」
和華はスマホの画面を波溜と拓也にも見せた。
「はぁ?何考えてんのあいつ」
「断られたって言ってたくせにな」
その画面には、沖和司と表示されていた。
― プルルルルル、プルルルルル、プルルルルル ―
「この音、つーくんのスマホでしょ」
「あぁ」
「つかさぁ、誰からだ?橋本支部長か?任務か?」
「任務だとしてもお前は連れてかねぇよ」
「ちっ」
「早く出てあげたら?」
司は画面に表示された、松平駿の文字を見て顔をしかめた。
「あの顔は子どもの誰かだな」
「多分、駿くんって子ね」
「何の用だ」
「あ!司くん!ちょっと助けてほしいんだけど」
「和華か、どうした」
「みんなで肝試しに来てるんだけど、途中で、なんか人形に追いかけられて」
「今どこだ」
「五養山。廃墟の中に隠れてる」
「廃墟つってもなぁ、、、。どの山道から入った」
「西南の入り口」
「わかった。ちょっと駿に代わってくれ」
「ん」
「駿くん、はい。代わってだって」
「んだよ、俺は外の見張りしてんのに」
駿は渋々スマホを受け取ると拓也を呼んだ、
「拓也、交代だ。ちょっと司と話する」
「えぇ~、おれ?」
「他に誰がいんだよ!頼んだぞ」
「おう、司。代わ―――」
「何で俺に掛けてきた。景山さんの連絡先知ってるだろ」
「いやぁ、規制解除されたばっかだったし、怒られるかなぁって」
「お前一人で怒られればいいだろ、俺を巻き込むな」
「はぁ!お前までなんだよ」
「とりあえずそっちに向かう。それまで他の奴らにケガさせるなよ」
「おう!まかせとけ」
「つーくんどうする?景山さんに言う?」
「今メールした」
司がそういうと、さっそく返信がきた、
「うわ、もう返ってきた。俺ら3人で様子見に行けだってよ。よかったな佑、任務だぞ」
「しょぼそうだけどな」
「任務は任務なんだから、しょぼいと言わずに行くの!早く車出して」
「げ、俺の車かよ」
「当たり前でしょ!あ、人形の能力ってどんなのだろ?何か情報ある?」
「んなの、データベース見たらいいんじゃね?」
「ねぇ、つーくん、景山さんなんか言ってた?」
「何にも言われてねぇけど、考えはある。俺らは好き勝手にデータベースにアクセスできないしな」
司は、ある人物にメールを送ると車に乗り込んだ。
(あ!)
拓也は3人に駆け寄ると、人形が2階に上がってきたことを伝えた。
「どっちからだ」
「俺らが上がってきた方」
「じゃあ、皆んなはもう一方の階段から下に降りてバリケードを崩してくれ」
「皆んなはって、あんたまだなんかする気じゃないでしょうね」
「するに決まってるだろ。バリケード崩すまでの時間稼ぎだ」
「で、どうやって時間稼ぎする気?」
「ちょっと、波溜ちゃん。またケンカに、、、」
「んなこと、これから思いつくに決―――」
「まだ何も思いついてないのね」
「、、、、、、」
「はぁ。拓也、お菓子の空箱貸して」
「?いいけど、どれ?」
「とりあえず、全部出して、早く」
4人の前には大小さまざまなお菓子の空き箱が6つ並んだ。
特殊能力のある世界 第102話 ご覧いただきありがとうございます。
卒業シーズンですね!卒業おめでとうございます!
また、今年も新入社員の足跡が聞こえてくる時期になりまして、仕事が大忙し。
作品設定に関して、今回のサブタイトル、五養山の廃墟2。
第77話でも書いたように、五養山は元々温泉で有名な観光地。
その時に建てられたホテルや旅館の跡が廃墟となってたくさん残っています。
それもあって、葉泉市屈指の心霊スポットなんですね。
次回の投稿は、3/28(土)です。




