第101話 真昼の肝試し
夏休みも中盤に差し掛かる8月上旬の日曜日
能力者犯罪捜査機関による入山禁止が解除された五養山の西南の山道入口に4人の子どもたちの姿があった。
「ってことで、ここで肝試しをする!」
堂々と宣言した芽吹小学校の4年生、松平駿の頭上には、透き通るような青空が広がり、太陽が輝いている。
「、、、何でお昼からなの?」
指旗和華が当然の疑問を投げかけた。
「そんなの決まってんだろ。子どもだけで夜に出歩くのは危ないからだ!隣町だしな」
「てっきり夕方からだと思ってたよ」
本庄拓也はポテチを頬張っている。
「学校なら夜でも許可出たんじゃないかな?ほら、5年生たちは学校で肝試ししてたし」
「あれって保護者会のイベントでしょ?このバカはそんなこと思いつかないって」
湯滝波溜は相変わらず駿への当たりが強い。
「誰のことだバカって!」
「あんた以外に誰がいんのよ!」
「拓也だって俺とそんなに変わんないだろ!」
「お昼から肝試しするって言ってるあんたをバカって言ってんの!勉強の話なんかしてない!」
「ま、まぁ、2人とも落ち着いて」
「お前ら腹減ってんのか?」
拓也が2人の間にポテチの袋を差し出すと、2人は1枚ずつ食べた。
「はぁ、ほんっと、、、」
「何だっていいんだよ!さっさと行くぞ!晩飯までには帰らないとなんだから」
駿に続いて3人も五養山に入って行った。
その様子を家から見ていた女性が1人、
(え!今のって子ども?危ないことがあったばかりなのに)
不安に思った女性は4人を追いかけることを決め、身支度を整え始めた。
五養山は葉泉市でも屈指の心霊スポットだが、太陽輝く真夏日にそんな雰囲気は微塵もない。
「なぁ駿、何にもねぇぞ」
「昼間だしなぁ、雰囲気もねぇなぁ。あちぃなぁ」
「何であんたまでダルそうなのよ!あんたがやるって言ったんでしょ!」
「なんかもっとこう、暗い雰囲気とかあるかと思ったんだよ。これじゃハイキングじゃねぇか!」
「拓也くんがお菓子食べてるし、余計にそんな感じがするね」
「拓也!お菓子禁止!」
「なんでだよ!あ、お前も食べるか?」
拓也はチョコチップクッキーを駿の目の前に差し出した。
「、、、、あーもう!もらうよ!」
「だいたいよぉ、ここに幽霊なんていんのか?」
「別にいるなんて言ってねぇだろ。このクッキー美味いな、もう一枚くれ」
「ほいよ」
「昔たくさんの人が死んだのって、このルートの近くじゃないし、かなり上の方なんだけど。あんたちゃんと調べたの?」
「調べてねえ。心霊スポットってことと廃墟があるってことだけで選んだ」
「はぁ、これだから勢い任せは」
「でも、今日のこと絵日記に書けるからいいんじゃない?ほら、毎週1つ描くことになってたし」
「そんな宿題あったか?」
「あったよ。俺はバイキングに行ったこと描いた」
「宿題のことをすぐに忘れるあんたの方が怖いわよ。取り憑かれてるんじゃない?」
「たしかに」
「言えてるな」
「んだよ3人ともよぉ」
「絵日記に描くのはいいけど、誰か写真撮れる?」
「うちはスマホ持ってきたよ」
「俺も!」
「じゃあ、写真撮りながら登ろ?花もたくさん咲いてるし」
「「賛成!」」
「肝試しだって―――」
「それはあんたの計画ミス。せいぜい心霊写真が撮れることでも願ってなさい」
「あれって合成だろ?」
「駿くん、それを言ったら心霊スポットだって、、、」
「和華、いいのよこいつは」
「おい駿見ろよ、あひる〜」
拓也は2枚のポテチを咥えてアヒル口を作っている。
「お!面白いじゃん!写真撮るからこっち向け」
駿は笑いながらいろんな角度で拓也の写真を撮り始めた。
(あんたが1番楽しんでんじゃん)
一通り撮り終えると駿は写真を見返し始めた。
「それ、そんなに面白い?」
「面白いだろ!今から司に送り付けてやるんだよ。なあ、どれがいいと思う?」
「何で司くん?涼太くんとかの方が面白がってくれそうだけど」
「あいつは今日の誘いを断ったからな。写真見て悔しがればいいんだよ」
「ふーん、で終わりそう」
「ね、興味なさそうよね」
「じゃあ、そんな司でも笑いそうなの選んでくれよ。拓也、いいのあったか?」
「どれも面白ぇよ」
「はぁ、貸しなさい」
波溜はスマホを取ると和華と写真を見始めた。
「どれもくだらないわね」
「2人とも動いてるからブレてる。どれを送っても無視されそう」
「ほんとにね。司も不憫だわ」
「なんかいいのあったか?」
「どれも素晴らしいですー」
波溜は心にもないことを言った。
「ねぇ、波溜ちゃん。途中から写ってるこれなに?」
「ん?どれよ」
「10枚目あたりから左下に赤いのが写ってて」
「ほんとだ。花じゃないの?」
「でも、私たち動いてないよ?」
2人が振り返ると、確かに山道の端に赤い何かがある。
「あれ、かな?」
「だと思うよ。ねぇあんたたち、あの赤いの何?なんか落とした?」
「知らねぇ。何も落としてねえよ」
「お菓子のゴミ落としたかな?」
拓也が近づこうとすると、赤い何かがガサゴソと動き始めた。
「「「「!!」」」」
「動いた?」
「か、風だろ?」
「風なんか吹いてないわよ」
すると、その赤い何かはひょこっと起き上がった。
「動いたね」
「うん、動いた」
「こっち歩いてくんだけど」
「子ども?」
「ばか、人形よ」
4人は顔を見合わせ、一目散に走り始めた。
「やっぱ居んじゃんか」
「何であんたが一番に逃げんのよ、どうにかしなさいよ」
「俺のお菓子狙われてる?」
「んなわけないでしょ、さっさと走りなさい」
「急に動いておなかが、、、」
「拓也くん、食べすぎるからぁ」
拓也が息を切らしながら振り返ると十数メートル後ろを人形がテトテトと走ってきている。
「うわぁぁ、きたぁぁ!」
拓也は一気に3人の前に出た。
(え!やっぱり子どもだ、この山は危ないことがあったの知ってるのかな?早く止めに行かなきゃ)
特殊能力のある世界 第101話ご覧いただきありがとうございます。
8ヶ月ぶりの小学生回。もう少しほのぼの感を出したいなと思いながらも、
状況とか、感情面とかの表現に悩んでたら、投稿日になってしまいました。
(まぁ、いつも予告より遅く投稿してますけど、、、)
人形のサイズ感だけでも伝われば幸いです。
次回の投稿は、3/14(土)です。
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