第100話 新しい道
能力者犯罪捜査機関の拘置所に捕らえられていたAACAの3人。リーダーの御剣凛奈は身体の時間を戻され、小学校高学年ほどの姿になり脱獄。稲鳴昂輝と笛鳴まつりも脱獄に成功したが、途中で拘置所の追跡者、潮鼓瑞希に足止めを喰らった。稲鳴昂輝が残り辛勝を収めるが、追跡者の斑虎太郎と尾高千穂が増援に来る。斑虎太郎の攻撃により気絶した稲鳴昂輝だったが、拘置所の所長、三久須の指示により2人は稲鳴昂輝を河川敷に放置して撤収した。
稲鳴昂輝は目覚めると病院のベッドの上にいた。
「あ!起きた!りなっち、アル!昂輝が起きたよ」
昂輝の視界には、笛鳴まつりに続いて雨森アルの顔が入ってきた。
「昂輝、大丈夫?」
「ん、、あ、あぁ。ここ、どこだ?」
「ここは機関の病院よ」
「機関の病院だと!!」
昂輝は驚いて飛び起きたが、
「いてぇ、、、」
腹部に痛みが走り、ゆっくりと横になった。
「1人で無茶するから〜。私も一緒に戦わせてくれればよかったのに」
「まつり、それは結果論でしょ。あの時の昂輝の判断は正しいわよ」
「むぅ、、、」
まつりは不満そうに頬を膨らませた。
「何のことだよ。てか、早くここから出ねぇと」
昂輝はベッドサイドの手すりを掴みながら上体を起こした。その時、病室の扉が開いてスーツ姿の男性が1人入ってきた。
「おぉ、目が覚めたか。こんばんわ。AACAのみなさん」
突然の入室者に昂輝は警戒の色を示し、まつりはきょとんとしている。
「、、、?私のことを知らないのか?」
「誰だ」「知らな〜い」
「顔くらいは知っていると思っていたんだが、、、」
予想外の反応に男性が頭を掻いていると凛奈がその素性を明かした、
「この人は拘置所の所長よ」
「!!」
凛奈の言葉を聞いた瞬間、昂輝は三久須所長に飛び掛かった。しかし、井の字に交差した4本の帯がその一撃を阻み、昂輝の四肢をベッドサイドに縛り付けた。
「っ、動けねぇ」
「動かないでいてもらいたい。ここは病院、機関のと言っても一般の患者もいる。大人しくして欲しいものだ。別に君たちに危害を加えるつもりはない」
「ならこれほどけよ!」
「大人しくするのであれば解除しよう」
「ちっ、わかったよ」
三久須所長は昂輝を縛り付けていた能力を解除すると、近くにあった椅子に腰を下ろした、
「さて、何から話そうか」
5人の間に少しの沈黙が流れた後、三久須所長が再び口を開いた、
「そうだな、まずは稲鳴昂輝。君は1ヶ月安静、2週間はここに入院してもらう」
「はぁ?なんでだよ」
「潮鼓瑞希の攻撃による内臓損傷。その上、斑虎太郎にも同じところをやられているな。今はまだ無理をする時期ではない」
「お前に何がーーー」
「わからんとも。だが、君たち4人の素性は私を含めた機関の上層部は知っている。御剣凛奈、稲鳴昂輝、笛鳴まつり、君たち3人の過去についてもだ」
三久須所長の言葉に昂輝は眉をひそめた、
「だから、なんだ。弱みを握ったつもりか?」
「そう邪険にしないでくれ」
三久須所長は一息置いて続けた、
「奴らの情報、それは捜査官の一部しか知らない。だが、君たちはそれを知っている。目的も一致している。そこで、我々機関、特に本部が君たちAACAを監視下に入れる。代わりに、協力関係を結ぶという条件の下、君たちの拘留を解く、というのが本部長の決定だ。まぁ、その提案をする前に脱獄されてしまったんだがな。もちろん奴らに関する情報は共有する」
「情報をもらえるのはありがてぇが、監視されるのは気分が悪りぃな」
「君たちのリーダーはこの条件を呑んだ」
昂輝は凛奈の方を見た。
「私たちも目的を達成することが重要よ。拘置所で時間を無駄にはできない。かと言って脱獄したことで機関の相手をしている余裕もない。情報が得られるなら、その方がいいと考えたのよ」
「その考えはわかるが、監視ってのが引っかかるだろ」
「元々犯罪者の身、仕方ないでしょ」
「それもそうだけどよ」
「私も自由がよかったぁ~」
「あー、で、その監視についてだが、捜査官が24時間見張るなんてこともしなければ、機関の施設内で過ごすことを強要することもしない」
「え!そうなの!自由ってこと!?」
まつりは目を丸くして驚いた。
「完全に自由というわけではない。機関から協力要請があれば君たちにはそれを受けてもらう」
「ちょっと待て。まだ高校すら卒業する年齢じゃねぇのに、どうやって捜査官をやるんだよ」
「ほんとだ!捜査官って、専門学校を出てるもんね。私まだ中学生だよ?」
「君たちは捜査官になるわけではない。今まで通り各々の学校に通ってもらって構わない。4人でアジトに集まってもいい。ただ、こちらから任務を依頼したら協力する、それだけだ。AACAは組織ごと機関の一部となり秘密裏に行動する、と言った方がわかりやすいか?」
「いいのかそれ。その、モラル的に」
「問題ない。君たちの存在は世間には知られていない」
「あれ?昂輝って美術館で堂々と名乗ってなかった?」
ーーーーー
西白共立美術館3階 木漏れ日の間
展示されていた彫刻を盗もうとした凛奈を、警備に当たっていた葉泉支部の支部長橋本千陽は追いかけようとした。
「私は犯人を追うから、ここは任せます」
橋本支部長は他の捜査官に指示を出し、犯人を追おうとするが、何者かが顔に蹴りかかったきた。咄嗟にガードをしたが勢いで片膝をつかされてしまう。
「誰!何者なの」
橋本支部長は攻撃の来た方向に叫んだ。
「俺たちは犯罪のサポートで金稼ぎをする組織 AACA。俺は戦闘員、稲鳴昂輝だ!」
ーーーーー
「あぁ、名乗ったな」
「あの件は笠尾組による犯行ということになっている。君たちのことは表には出ていない」
「そういう問題?」
「まぁ、付け加えれば、機関の幾つかの部隊によって防いだとなっている。所属不明の人物に心当たりがあるだろ?」
「あの女か」
「司もね」
「こっちにも色々と事情があって、隠していることはある。それはどこの組織も同じことだろう」
「うーん、わかるようなぁ、わからないようなぁ」
「特に君たちが心配するような問題はない。今後、君たち3人は主に対能力者の任務に充てられるだろう。死なない程度に戦闘経験を積むといい。それと、雨森アル、君は機関の研究所がその技術を欲しがっている。そちらでの活躍を期待している」
「思ったより自由なんだな」
「監視って感じはしないね」
「それと、稲鳴昂輝と雨森アルの親にはこれまでのことと今後のことを伝えてあるが、自分たちからもちゃんと話すように」
「おう」「、、、」
「では、私は帰る。任務以外は自由にしてくれ。今までのような犯罪はするなよ」
そう言い残すと三久須所長は病室を後にした。
「俺らが機関と協力するのはわかったけどよ、あいつら本気で殺しにきてたぞ」
「知らなかったんじゃないの?」
「昂輝も、指示を無視、することある、よ」
「まだ根に持ってんのかよ」
アルは静かに昂輝を睨んだ。
扉が再び開き三久須所長が顔を覗かせた。
「言い忘れていたが、明日、君たちそれぞれの上司から連絡が来る。テキトーに挨拶しといてくれ。じゃあな」
「上司?」
「監視されてんだかされてないんだかわかんねぇな」
「もしかしたらバラバラに活動することになるのかもね」
そして翌日から、4人は正式に能力者犯罪捜査機関西白本部の監視下に入った。
特殊能力のある世界 第100話 ご覧いただきありがとうございます。
キリがいいような悪いような、第100話で脱獄編終わりです。
次回からは久しぶり(8ヶ月ぶり)に小学生回です。
1年前に投稿した第77話がちらっと関係します。
黒檀の彫刻編は第57~67話です。
投稿から1年半以上たってました。
次回の投稿は2/26(木)です。




