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まじでどこ行ったの、白夜の団

「きっと来る途中で何かあったんだよッ! 私は来た道を引き返すべきだと思うッ!」

「うーむ。その可能性もありますが、白夜の団(ホワイトナイト)には一歳児のトワ殿もおります。吾輩は、先に宿に向かったのではないかと考えております。まずは近隣の宿をかたっぱしから当たるべきでしょう」

「つーかよ。ユータスの奴、もうくたばってんじゃねえの?」

「……ッ! な、なんて事言うのよッ!」

「俺は、その可能性が一番高いって言ってんだよ。ユータスは真面目ちゃんだから真っ先に冒険者ギルドに顔をだすはずだ。来てないなら道中で何かあったんだろ。あいつらの戦力じゃ対処するのは難しい」

「…………ッ! そ、それは……」

「言い返せねえじゃん。お前もそう思ってんだろ」

「う、うるさいッ! じゃあどうしろっていうのよッ!」

「わかんね」

「はあ? 何それ。言うだけ言って、ふざけてんの? あんたが先にくたばる?」

「怖っ。暴力はんたーい」


 冒険者ギルドに併設せれている酒場にて、白熱した議論が繰り広げられている。

 主に私が白熱していて、レイジィは……わりと論理的だ。

 それが受け入れられないし、ムカつく。


 八つ当たりだと頭ではわかっている。

 でも、無理。吐き出してぶつけないと、私の心は、はち切れてしまいそうだから。


「まあまあ。お二人とも、少し冷静になりましょう。これらはあくまで可能性の話です。いくつかの可能性にあたりをつけ一つずつ、つぶしていけばおのずと道は開けてくるのではないでしょうか」

「ううっ、トンさん……」

「しかしまずは、白夜の団(ホワイトナイト)が無事だと仮定しましょう。ええ、自らに言い聞かせるのです。でないと良いアイデアも浮かびませんよ」


 爆発寸前だった私の胸が、少し落ち着きを取り戻す。

 私は大きく息を吸った。


「ふうぅー。うん。ユータス様は……、白夜の団(ホワイトナイト)は絶対、無事ッ!」


 口に出して言ってみると、少し希望が見えてきた。

 そうだ。私がテンパってどうする。

 そのしわ寄せは、ユータス様にいくんだから。


「まあ、その方が前向きだわな」


 レイジィも煽ってはきてたけど、真剣に考えてくれている。


「そうです。前向きに、考えていきましょう。ではさっそく行動に移すとしましょうか。まずは近辺の宿をしらみつぶしにあたるのです。吾輩とまりりん殿で手分けしてあたりましょう。

 レイジィ殿は白夜の団(ホワイトナイト)が入れ違いに冒険者ギルドに来訪する場合にそなえて、ここで待機していて下さい。日が落ちた頃に再び合流しましょう」

「うん、わかった。また後でッ!」

「あいよ」


 不安な気持ちを無理矢理かき消し、私は早足に冒険者ギルドを後にした。


 ※ ※ ※


 近辺の宿を、鬼気迫る想いで駆けまわっていると気がつけば夜になっていた。

 私が冒険者ギルドの酒場の扉を開けると、テーブルには既にトンさんとレイジィが無言で座っている。


「――この辺りの宿には、白夜の団(ホワイトナイト)はいなかったよ」

「そうですか。吾輩の方もまりりん殿と同様、収穫なしであります」

「冒険者ギルドには来てねぇよ。ちっ、ユータスの奴、どこにいんだよ」


 周囲のがやがやとした喧騒に反して、私達の周りだけどんよりとした空気に包まれている。


「ううっ、ユータス様……。どこに行っちゃったの……。ううっ、ぐすっ」

「まりりん殿、気を確かに。白夜の団(ホワイトナイト)は絶対、無事であります。さあ、もう一度言ってみてください。白夜の団(ホワイトナイト)は絶対、無事と」

「……白夜の団(ホワイトナイト)は、絶対、無事ッ!」

「そうです。無事です。ささっ、涙を拭いて下さい」


 トンさんが差し出してくれたハンカチで、涙をぬぐう。

 ダメだ。弱気になっちゃダメだ。

 近隣の宿のいなかったのは、想定内じゃないか。


 でも……気持ちが追い付かない。


「現実的は話をしようぜ。なあイートン、この後はどうするつもりだ?」


 完全にポンコツと化した私をしり目に、レイジィが話の筋を戻す。


白夜の団(ホワイトナイト)がカドケスの町にいる可能性は低いでしょう。であれば、やはり来る途中で何かトラブルがあったと考えるのが妥当でありますな」

「だな」

「おそらく、街道で追い着くことができなかったことから、近くの宿場町に滞在している可能性が高いでしょう。明日の早朝から街道を南下して、宿場町を順に当たってみてはどうでしょうか」

「まあ、そうなるわな。いいと思うぜ」

「それで良いですか? まりりん殿?」

「……うん。ありがとう。トンさん、レイジィ」


 明日以降の方針は決まった。

 きっと私だけだったら、積んでたよ。

 オロオロして泣くだけで。

 二人が仲間で良かった。

 

 ※ ※ ※


 翌朝。

 私達は、金にものを言わせて最高品質の馬を一頭、買い取った。


「では、まりりん殿、レイジィ殿。気を付けて行ってらっしゃいませ」

「うんッ! トンさんも、よろしくね」


 一晩経って、私は気持ちを切り替えた。

 私は、切り替えの早い女。

 いつまでもくよくよなんてしていられない。


 馬上にはレイジィと私。

 トンさんはカドケスの町で待機だ。


「まじかよ。俺、カドケスに待機希望なんだけど」

「仕方ないでしょ。私もトンさんも、馬に乗れないんだから」

「馬車で行けばいいだろ」

「それじゃあ遅いのッ! それにトンさんにはやってもらう事があるし」


 トンさんには、まだ訪れていない宿の捜索と、万が一、白夜の団(ホワイトナイト)が別ルートでカドケスの町にやっていきた場合に備えて、町に待機してもらう事になった。


「わかったよ、しゃあねえな。まあ、ユータスは知らない仲じゃねえし。クソだりぃけどな」

「素直じゃないな」

「うっせえわ」

「ふふっ。事が全部うまくいったらお小遣い奮発してあげるよ」

「ぐすぐすしてる暇はねぇッ! 行くぞ、まりりんッ!」

「おおーッ!」


 相変わらす現金な奴だ。照れ隠しの可能性も微レ存だけど。


「そんじゃあ白夜の団(ホワイトナイト)の元へ。レッツゴーッ!」

「ご武運をッ!」


 私達は、昨日入ってきたカドケスの町の北門を出て、街道を南へ駆けて行った。


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