流星群イベント1
「九時方向上空に流星群確認」
「瘴気密度レベル495確認」
「総合ノルマ百七億八千体確認」
「開始から終了まで三百六十時間」
「地表に接触まであと十五分三十秒」
皆様が観測をしていく中、わたくしはフィラ様の隣で戦闘服に身を包んで静かに空を見上げております。
転生してから、既に発生した氷の下の流星群は体験しておりますが、このように実際に空から降ってくるのを見るのは初めてでございますわね。
流星群、『花と星の乙女』では黒い星の固まりのような物がいくつも降り注ぐスチルでございましたけれども、実際に視認いたしますとそれぞれが瘴気の塊であることが分かりますわ。
それにしても、総合ノルマが百七億八千体とは中々に厳しいですわね。
沢山湧いていただかないと達成出来ないかもしれませんわ。
一応、わたくし共のチームで最大三十倍まで湧き速度を上げることも可能ですが、念のため魔物発生率を上げる魔道具の発動準備もしておいた方がいいかもしれませんわ。
「やっぱりブルーローズさんの氷星花装備いいなぁ」
その声にそちらを向きましたが、皆様それぞれ似たり寄ったりの特殊装備でございますわよね。
「我としては、露出が多いのではないかと思うのだが……特にスカート部分が短いレベルではなく、ほぼ下着が見えているように思うのだが?」
「ご安心なさってくださいませ、下着に見える部分も装備の一部でございますわ」
「そういう問題ではないのだが……。前が短いのに後ろがふんわり長いスカートとか、胸はかろうじて隠しているが腹部が思いっきり出ているとか、肩がむき出しなのに短い手袋はしているとか、ロングアーマーブーツで隠れていない部分の足が生足とか、いろいろ気になるのだが」
「わたくしよりも過激な装備な方が多いと思いますわ」
そう言って視線を向ければ、局部だけをかろうじて隠している水着に近いような装備とか、逆にフルアーマーのような装備とか、本当に個性的な装備ですわね。
「しかし、ロジーの武器は相変わらず扇子なのか」
「これが手持ちの中で一番攻撃力が高いのですもの、仕方がございませんわね。わたくしはイベント報酬で武器は希望しておりませんでしたもの」
「神人の方々が持っているのは全てそのイベント報酬なるものなのか?」
「ほとんどそうですわね。中にはわたくしのように普通に錬金術で作ったものもあるようですけれども」
「普通……」
フィラ様が上空を見上げましたけれど、そんなに流星群が気になるのでしょうか。
「あ~ん、滾っちゃうわん。肩慣らしも楽しかったけど、本番はやっぱり感慨深いわよね~」
「氷の下の流星群はねー、肩慣らしだからー、物足りないよねー」
「そう言って氷の封印を壊したのは誰です。まったく、おかげで時間終了まで遊ぶはめになりましたよ。まあ、あの魔道具は研究の価値がありましたので面白かったですが」
不思議ですわよねえ、ちょっと魔道具の実験をしただけですのに、気が付いたら周囲の氷がボロボロになっておりましたもの。
わたくしが作った魔道具のせいだけではございませんけれども、あの程度の攻撃に耐えることが出来ない封印なんて何の意味があるのでしょう。
もっと努力なさるべきですわよね。
そんな事を考えていますと、隣でフィラ様が「やっぱり我は距離を取っていよう」と呟きまして、呪文を唱えると光球をいくつも作っていきます。
「フィラ様、こちらは?」
「記録用の魔法だ」
「なるほど。ちなみにお伺いしますが、耐久性はどのぐらいございますでしょうか」
「耐久性?」
「わたくし達、装備からも分かっていただけるように誰が一番魔物を倒せたか数を競いつつ本気で走りますので、巻き込まれて吹き飛ぶのではないかと少々心配になってしまいましたわ」
「装備だけを見ただけでそんな事は分からないからなっ。というか、数!? 競う余裕があるのか!?」
「折角の共闘でございますので、刺激が欲しくて」
「共闘だろう! 競争じゃないだろう!」
「好敵手と書いて『とも』と呼ぶ的なものでございますわ」
「まったくわからん!」
「それで、耐久性はどのぐらいございますの?」
「普通の攻撃なら問題はない。『普通の』攻撃ならな」
「では問題はございませんわね」
わたくしの言葉にフィラ様は口元を引きつらせた後、光球を離れたところに移動させてしまいました。
最大拡大率で記録を、などとおっしゃっていますので後でどのような魔法なのか詳しく聞かせていただきたいものでございますわね。
改良いたしましたら、わたくしが傍に居ない時のフィラ様のご様子を好きな時に拝見することが出来るようになるかもしれませんもの。
ふむ、我ながらいい考えですわね。前向きに検討いたしましょう。
「ブルーローズさん、世界樹システムへの接続状況はどう?」
「良好ですわ。皆様のスコア表示もばっちりでございますわよ」
「オーキードーキー!」
「それではロジー、我は邪魔をしないように離れておく」
「まあ! 遠慮なさらずともよろしいのですわよ。フィラ様はわたくしの番なのですから、お傍で思いっきり戦ってくださいませ」
「我を蘇生させる手間をかけさせるのは悪いのでな」
「その程度の事、手間ではございませんわ。フィラ様のためですもの」
「……いや、やはり邪魔をしたくはないからな」
フィラ様はそう言って転移なさってしまいました。
「おー、いちゃついてんなぁ。若いもんはそうでないとあかん」
「番の為に自分の活躍の場を譲るとか、愛だわっ」
「ジャスミンちゃん感動しちゃったぁ。でもでも、ティリちんの本気の活躍も見たかったねぇ。なんたって絶対攻略不可の人気No1キャラだもん」
「すでにわたくしが攻略済みでございますわよ」
「幼女からのプロポーズとか、胸アツ!」
「七歳でございましたので少女でございましたわよ」
「ほんならロリやな」
「もっと言えばアリコンかハイコンですね」
そんな話をしている間にも流星群は近づいてきております。
「地上への接触までのカウントダウン開始いたしますわ」
わたくしの言葉に皆様が武器を構えて不敵に笑った後、表情を消して降ってくる流星群を見上げました。




