婚約者が楽しそう2(フリティラリア)
「そこにイベントあるのなら!」
「ベストを尽くすがその運命!」
「運と物理を握り締め!」
「心を無にして悟りを開き!」
「目的達成に全力投入!」
「使えるものは何でも使い!」
「最強パーティーで立ち向かえ!」
「邪魔するものはぶっ飛ばす!」
「死にたくなければそこをどけ!」
「どいたとしてもぶっ飛ばす!」
『それが我々廃ランカー!』
最後の言葉と共にロジーを含んだ十人がポーズを決め、その背後が盛大に爆発した。
近づこうとしていた魔物は当たり前だが爆発に巻き込まれて消滅している。
しかし、一ついいだろうか?
「共闘の練習とは?」
何か相談していたと思っていれば、突然叫びだした口上に思わず必死に魔物と戦っていた体が固まり錆びたブリキ人形のようにギ、ギ、とそちらを見てしまった。
相談しながらも魔物を倒していくのはおかしいとか思う前に、なんというか、流石ロジーの同類と悟りを開きそうになったが、相談内容はもしかしなくても共闘の練習方法ではなく今の口上と演出についてだったのか!?
我が茫然と視線を向ける先では、うまくいったのか十人が笑顔を浮かべてハイタッチをしている。
ロジー、キャラが変わっているぞ。
あと、今使った爆発物はまさかとは思うが例の超範囲攻撃魔道具を改良したものじゃないよな?
それに別のグループが「こっちもあれやりたい!」と言いだしているように聞こえるが、気のせいだと思って良いな?
流星群への対応を、そんな子供のおままごとみたいなノリで乗り切ろうとするのが神人だと我は思いたくないのだが、我の目に映っていたり聞こえているものは気のせいでよいのだな?
「それにしても生フィラはそこそこ強いね~」
「あれだったらちょっと近くで暴れても大丈夫そう」
そこそこか、そうか……。
「ですから、わたくしのフィラ様を愛称で呼ばないでくださいませ。確かに長い名前から愛称の方が馴染みがありますけれども、フィラ様はわたくしの番でございますのよ」
「やぁ~ん、嫉妬? 嫉妬しちゃっているの? かわいぃ~! オネエさんキュンキュンしちゃう~」
待て! 今、そこに居る超絶美女から野太い声がしなかったか!?
「嫉妬なんていたしませんわ。だって、番である以上フィラ様がわたくし以外に目を向けるなんて絶対にございませんもの。けれども、それを踏まえたうえでフィラ様を愛称で呼ぶのはわたくしだけであるべきですわ。皆様はフィラ様の新しい愛称を考えてくださいませ」
「うーん、フィラっちはフィラっちだしなぁ」
「でも番って強力だし、あんまり刺激するのもやばいだろ?」
「確かに、しかもウィスタリアさんだし」
「そろそろブルーローズと呼んでいただきたいですわ。今のわたくしはそちらの名前ですし、世界樹システムへのユーザー名もブルーローズの正式名称で登録し直しておりますもの」
「あー、慣れないんだよな」
「慣れなくてもそうしてくださいませ。呼ばないのでしたら神人様方ってお呼びいたしますわよ」
「うぁっさぶいぼ立ったわ。やめてーな、冗談きついわ」
「でしたらご精進なさってくださいませ」
「んー、ジャスミンちゃんはフィラちんの新しいあだ名考えたよ! ティリちんってのはどう?」
「あー、一部でそう言っている人もいたよねぇ」
「フィラ様以外の呼び方でしたらなんでもよろしいのではございませんの?」
ロジー、その言葉に我は喜んでいいのか悲しんでいいのかわからないのだが。
「いいんじゃないのか? ティリで。呼び名とか下らないことに時間を割くのはどうかと思うし」
我への呼び名より貴殿達のあの訳の分からないポーズと口上の方が大事なのか!?
「ところでさっきの爆発演出に使った魔道具ってなにー?」
「指向性を持たせた範囲攻撃魔道具ですわ」
「おー、魔道具の改良とかやっぱり転生してリアルになったからこそできる醍醐味だよな」
「わかる。ゲームじゃどう頑張ったって所詮は運営(神)の掌の上だし」
「ウィス、じゃなくってブルーローズさん。魔道具でこうなんか、光線ドバー! みたいなの作れない?」
「それって破壊光線的な?」
「そうそう、白色破壊光線と黒色破壊光線!」
「それって元ネタエロゲーじゃんか! ブルーローズさん知ってんの?」
「破壊光線という単語自体は聞いたことがございますけれども、特撮系のネタではございませんの?」
「ほらぁ、エロゲーの方は知らないじゃん」
「破壊光線とまではいきませんけれども、レーザー発射装置的な魔道具は作りましたわ。まだ実験もしていないので効果のほどはわからないのですけれど」
それ、予想効果が一撃でAクラスダンジョンを木っ端みじんにするって言っていたものじゃないか!?
しかも使い捨てで使用後に本体が大爆発する可能性があるとか言っていたなっ。
「さてっと、遊びもこのぐらいにしてそろそろちゃんと走りますか」
「そうですわね。湧きに関しては現状の三十倍まで上げることが出来るのでしたわよね?」
「そのぐらいの湧きじゃないと総合ノルマ達成が心配だし、手ごたえ無いしね」
「んじゃまぁ、殺りますか」
そう言った瞬間、先ほどまでの砕けたのほほんとした雰囲気から一転して、全員が無表情になりまさしく一方的虐殺が始まった。
我、いらないのではないだろうか?
むしろ、あの中に混ざって共闘するとか、死ぬと思うのだが。




