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学園生活9(スノーフレーク)

 乗合馬車で王宮の前に行くと、初めて見る無駄に豪華な門を見上げた。

 十人以上いる門番にうんざりしたけど、そのうちの一人に近づいて作った悲しそうな表情を向けた。


「あの、中に入りたいんです」


 私の言葉に門番が柔和な微笑みを向けてくる。


「通行書や招待状はお持ちですか?」

「持ってないです」

「それでは申し訳ありませんが、お通し出来ません」


 柔和な微笑みのまま、きっぱりと拒絶されて思わず怒鳴りたくなったけど我慢した。


「中にお姉様が居るんです! 私、お姉様に会ってどうしても言わないといけない事があって!」

「王宮でお勤めの平民の方ですか。お姉様のお名前は? それと貴女のお名前もお伺いしてもよろしいですか?」

「お勤めっていうか……。お姉様の名前はブルーローズです。私はスノーフレーク=エウヘニアです」


 私がそう言うと、門番の表情がすっと抜け落ちたように無くなって、今度は有無を言わせないような張り付けた笑みを浮かべてきた。


「どうぞ、お引き取りを」

「なっ、どうしてですか! お姉様に会わせてください!」

「エッシャル女大公様の異母妹と詐称する不審者を王宮に入れるわけにはいきません」

「私は不審者なんかじゃありません! 私が入れないんだったらお姉様がここに来ればいいじゃないですか」

「エッシャル女大公様の安全をお守りすることが我々の仕事です。不審者が居るとわかっているような場所にお越しいただくことは出来ません。エッシャル女大公様の異母妹を名乗る平民のスノーフレーク=エウヘニアと言う女性が来たという事は記録いたしますのでご安心ください」


 そう言った後で、さらに「それではお引き取り下さい」と強い口調で言われて、私は一歩後退った。

 門番が腰にぶら下げている剣にさりげなく手をかけたせいで。


「い、一般市民を脅す気ですか?」

「何の事でしょう?」


 貼り付けた笑みのまま淡々と返事を返す門番が不気味になって他の門番を見たけれど、こちらに視線を向けているやつは何人かいるけど、全員が同じような笑みを浮かべてる。


「お、王宮の門番にひどい事をされたって皆に言いますからね!」


 そう言って逃げるように乗合馬車の方まで走っていって、しばらくしてやってきた乗合馬車に乗りこんで平民街に帰った。


 乗合馬車を降りて市場に行って食料を買うついでに、王宮の門番に脅されたという話をしてあげたけど、聞かせてあげた人たちの反応は微妙なものだった。

 中には睨んでくる人もいて、そいつの店では何も買わないでやったし、今後いかないようにしようって決めたわ。


「それで私、お姉様に皆を脅すような事はしないでって説得しないといけないのに、お姉様は間違ってるって教えてあげないといけないのに、どうしてお姉様は私を避けるのかわからないんです」


 夕暮れの広場に居たかっこいい吟遊詩人に私は今まであったことを涙を流しながら語ると、吟遊詩人は「大変ですね」と寂しげな表情を浮かべて僅かに体を傾かせた。

 こいつ、見たことあるから攻略対象者よね。

 でも、全然覚えてないから攻略してないキャラだわ。


「異母姉に家を追い出されたのにも関わらず、姉の為を思って行動する勇気を持つとは、まるで物語のようです」

「そんな、私にとっては当たり前ですから」


 恥ずかしそうに言うと吟遊詩人がにっこりと微笑みを向けて来てくれた。


「とても良いお話を聞かせていただきました」

「私こそ、愚痴を言ってしまってすみません」

「いえいえ。お礼に貴女にアドバイスをさせていただいてもよろしいですか?」

「ぜひお願いします」


 吟遊詩人の言葉に頷くと、じっと目を覗き込まれて、怪し気に揺らめく紫色の瞳にクラリと頭が揺れた。


「身の程をわきまえた方がいいですよ。至高の御方への無礼が許されているという幸福に酔いしれることが出来ている間に、死ね」


 グラグラと揺れる視界に、紫色の光が残って、フツリと消えた。


 気が付いた時、私はすっかり暗くなった広場の地面に倒れ込んでいて、ヒロインである私が倒れているっていうのに誰も気にしないとかふざけんなとイライラしたけど、どうして広場で倒れていたとかは覚えていないし、そもそもどうして広場に居たのかも覚えていない。

 そもそも、今日って何をしていたんだっけ?

 ……ああ、そうだ。

 クラスメイトに虐められて、それを扇動している悪役令嬢にやめるように訴えるために王宮に行ったけど、手回しをされていたせいで門前払いにされたんだったわ。

 ったく、ヌルゲーのくせに攻略もうまくいかないし、悪役令嬢もゲーム通りに動かないなんてクソゲーすぎ。

 それにしても、攻略対象の好感度が上がらないとゲームの世界に転生した意味ないし、どうしようかな。

 このゲームってなんか色々出来たけど、錬金術とかRPG要素とか箱庭要素でお金も増やせたんだっけ。

 でも別にお金に困ってないし、私がそんな事する意味ないか。

 錬金術とか初期に作れる物なんて労力の無駄って感じだし、冒険者ギルドに売っても大した売り上げにならないのよね。

 チュートリアルで一通りはやったけど、やっぱり乙女ゲームは攻略対象とイチャイチャするのが一番の醍醐味なんだから余計な事はしたくないわ。

 あーあ、こんな事ならもっと楽に落とせてかっこいいキャラの事攻略しておくんだった。

 オープニングで出会ったキャラには定期的に話しかけてあげてるけど、どれもいまいちな反応なのよね。

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