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学園生活7(カクタス)

 はあ、気が付いたら救護室のベッドの上とか……。

 エッシャル女大公様が目の前に来たと思ったのが最後の記憶ってことは、意識を落とされたんだよな。

 もしかしなくても吹き飛ばされてそのショックで意識を失ったって考える方が可能性としては高いかもしれない。

 イレイシー侯爵令嬢も容赦なく吹き飛ばされていたし。

 受け身を取るのもシールドを張る余裕もないとかわけわかんないんだけど。

 あー、全身痛いし、最悪。


『本当に能力のあるかたは、真実を見ていらっしゃいますわ』

『努力をするのは当たり前ではございませんこと?』

『責任を他人に丸投げして好き放題していることと同じですわ』


 あー、頭も打ったな。痛くて泣きそうなんだけど。

 ……オレより、弟の方が能力を期待されているなんて知っているし、あいつの方がエッシャル女大公様に目をかけられているって知っているから、別に今更あんな事言われたぐらいでショックなんか受けないし。

 でも、エッシャル女大公様の婚約者候補として名前が出ているのはオレなんだから、もう少しオレを気にかけてくれてもいいじゃん。

 オレはエッシャル女大公様より生まれが遅いから、社交界デビューのパーティーにも参加できなくて、あの方が滅多に参加しないパーティーで初めて姿を見て挨拶をした時は緊張でうまく話せなかったけど、それでも……。


『その辺に転がっているくだらないお世辞に興味はありませんわ』


 オレなりに必死にエッシャル女大公様の事を褒めたのに、氷みたいな視線を向けられてあんな風に言われて、もう行けみたいに視線をそらされたら印象最悪でも仕方ないじゃないか。

 他の子息や令嬢も、エッシャル女大公様は冷たいとか、怖いとか言っていたし。


『ブルーローズ嬢は、ちょっと自己表現が得意じゃないんだよ』


 ホスタ様がそう言ってかばっているけど、自己表現とかそういうレベルじゃないだろう、あれは。

 明らかにこっちと仲良くなる気が無いって感じるし。

 なのに……、なんであんなに綺麗に笑うんだよ。


「わけわかんない」


 弟に向けたことのある優しい笑みとは違ったけど、あんな笑みは卑怯だろう。

 そう考えて顔が熱いと思っていると、引かれたカーテンの向こうに人影が写り込んで動いた。


「カクタス様、目が覚めましたか?」

「……エウヘニア嬢?」

「はい、中に入りますね」


 妙に馴れ馴れしく接してくるエッシャル女大公様の異母妹、じゃないか、自称異母妹。

 母親が愛人だっていう事は知っていたけれども、元娼婦とは思わなかった。

 許しもしないのに名前で呼んで、今も返事をしていないのにカーテンの中に入ってきて当たり前のようにベッドに腰を掛けている。

 貴族令嬢だったら絶対にないであろう行動に、平民はこういうものなのかと呆れていたら、Sクラスに在籍している平民には「一緒にしないでほしいですね」と睨まれた。


「担架で運ばれているのを見て心配で追いかけてきたんです。大丈夫ですか?」

「ああ」

「先生が治癒魔法をかけていましたけど、私、本当に心配で」

「問題はない。まだ痛みは残るが、治癒魔法をかけられているのだったらこの痛みもすぐに引くだろう」

「痛みがあるんですか? 担架で運ばれていましたし、何があったんですか?」

「剣術訓練場で多分エッシャル女大公様に吹き飛ばされたんだろうな」

「お姉様に!? ひどいです!」

「油断したオレが悪いんだ」

「いいえ! お姉様はいつだってそうです。相手を思いやる気持ちが無いから平然とそんなことが出来るんですよ。しかもカクタス様にひどい事をするなんて、そんなのあんまりです。私だったら絶対にそんなことしません!」

「そりゃあ、君にやられるわけがないだろう」


 Hクラス程度の能力しか持っていない平民に意識を落とされるなんて、Sクラスに在籍する者としてありえない。

 ため息を吐き出すと、エウヘニア嬢がもじもじと手を動かし、じっとオレの顔を見てくる。


「あの、痛みが引いたら一緒に帰りませんか?」

「は?」

「せっかくの機会だし、仲良くしたいって思って」

「一緒にって、俺は専用の馬車があるから馬車停めに行くけど、君は?」

「あ、……よかったら、家まで送って欲しいなぁって思うんですけど」


 この平民は何を言っているんだ?


「君は普段の通学はどのようにしているんだ?」

「乗合馬車を使っていますよ」

「だったら今日もそれを使えばいいだろう。オレがわざわざ送る必要はないだろう」

「そんな! たまにはいいじゃないですか」

「そんな事をして、周囲に誤解でもされたらどう責任を取ってくれるんだ」

「え、責任を取るのはカクタス様ですよね」


 その言葉に、身分の低い貴族令嬢や平民が既成事実を作って婚約に持ち込んだり愛人の座についたりするから注意をするようにという父の言葉を思い出して眉をしかめてしまう。


「君は、最低だな」

「え」

「悪いがオレは一人で帰る。君といると何をされるかわかったものじゃないからな」


 同じ馬車で帰って、あらぬことを騒ぎ立てられたらたまったものじゃない。

 ただでさえ平民街に侯爵家の馬車で行くなんて目立って仕方がないだろうに、そんなこともわからないのか?

 あれでよく、才女たるエッシャル女大公様の異母妹だなんて自称できるな。

 ああ、汚らわしい。

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