学園生活4
「エッシャル女大公様。貴女は、お強いのですか?」
「そちらから話しかけてくる無礼を犯してくるという件に関してまず謝罪をしていただきたいところですけれども? 貴族としての常識すら身についていないのでしょうか? それでよくホスタ様のご学友に選ばれましたわね。本当にすぐにご学友が変わりそうですわ」
「お許しなく言葉をかけてしまったことに関しては謝罪をいたします。しかし、質問にはお答えいただきたく存じ上げます」
「貴方如きに教える義理もございませんが。そうですわね、わたくしに勝てる方は当たり前ですけれどもそうそう居ませんわよ」
前世でのわたくしレベルのランカーがステータス継続したまま転生していれば違うとは思いますけれどもね。
「お相手をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「嫌に決まっておりますわ。貴方程度の弱者を痛めつけてもなんの意味もございませんもの。それとも、貴方はわたくしの事を弱者をいたぶる趣味があると思っておりますの? 確かに弱者はわたくしの前では塵同然でございますけれども、空気中に散らばる塵をいちいち排除するような面倒な事をするほど暇人に見えまして?」
「いや、だって貴女は――」
「わたくしがなんでして?」
「その……弱き立場の異母妹にひどいことをしているそうじゃないですか」
「わたくしには異母妹などいませんわ」
「それは、貴女が認めていないからだって噂で聞いていますし、エウヘニア嬢もそう言っていました」
「ああ、なるほど。カクタス様はやはりホスタ様のご学友から外されるのも時間の問題かもしれませんわね」
「なっ」
「わたくしの家の事情に関して、確認もせず面白おかしく広められた噂を信じていらっしゃる時点でオズウィン侯爵家の跡取りとして随分優しく教育されていらっしゃるのだとわかりますもの。お優しいご両親なのでしょうね。ああ、そういえば遺伝子上の父親は貴方の家にもお金の無心のお話をしていましたわね。大方その事をよく思わなかったご両親が嫌味で言ったことを中途半端にお聞きになったのでしょうね。そしてそれを無責任に言いふらし、身勝手な想像が付け加えられた噂を逆に聞かされて信じているのだとわかるあたり、その低能さがわかるという物ですわ」
「だが貴女の異母妹は――」
「ですから、わたくしに異母妹などいませんの。もしその異母妹と言うのがスノーフレークさんの事をおっしゃっているのでしたら、常識という物を学んでからわたくしの視界に入るようにしてくださいます? なぜ、前エッシャル女大公であるお母様の婿でしかない遺伝子上の父親の元娼婦の愛人の娘を異母妹だと思わなくてはいけませんの?」
「しょ、娼婦!?」
「まあ! そこからご存じなかっただなんて。オズウィン侯爵家は貴方の代になったら傾くのではございませんこと? それとも、身の程を知って優秀と噂の弟君に家督をお譲りになるのでしょうか?」
「そんなわけがないでしょう!」
「そうでしょうか? 少なくとも噂の真偽を確認せず踊らされる方よりはましなのではございません?」
わたくしの言葉にカクタス様は顔を真っ赤にしてこぶしを握り締めて震えていらっしゃいますので、わたくしが言ったことはほぼ図星だったのでございましょうね。
「そ、それが真実だとして、住み慣れた家を一方的にいきなり追い出すのはあんまりではありませんか!」
「貴方は、一度しか会ったことの無い、何一つ労働もしないくせに高価なドレスや宝石を購入し贅沢な食事を望む死んだ親の愛人の子供を別邸に住まわせることが普通だと思っていらっしゃいますの? そうだとしたら随分と慈悲深いのですね。一方的とおっしゃいましたが、彼女の両親が亡くなってから新しく住む家を整えるまでの七ヶ月間、別邸の使用人はスノーフレークさんに一人で暮らせるように様々な事を手ほどきしようとしましたのにそれを拒否したのは彼女でしてよ?」
「ドレスや宝石ぐらい……」
「あら、やはりカクタス様は随分甘やかされておりますのね。もっとも、スノーフレークさんが別邸で暮らしていた時に購入したドレスや宝石の金額を知らないのであれば仕方がございませんけれども、例えるなら外に出かけるわけでもないのに普段用に身に着けていたいというだけで購入した首飾り一つで平均的な伯爵家の一ヶ月分の運用費と言えばお分かりになりまして?」
「い、一ヶ月分?」
「ええ、伯爵一家の生活費ではなく、伯爵家の運用費でございます。ドレスも似たような金額の物を月に数着仕立てておりましたわね」
「え、いや……だって彼女が着ているのは普通のワンピースじゃないですか」
「平民に高価なドレスや宝石が必要でして? 思い入れのある家宝や遺品でしたらともかく、数度身に着けただけの物を取り上げて売却して何か問題でもあるのでしょうか? そもそも、その売却したお金も彼女が今住んでいる家の改築費用にあてましたし、手切れ金という意味合いも含めておりますけれどもご両親を亡くしたお見舞金として、学園に通って卒業するまでに衣食に困らない金額をお渡ししております。それをもってして一方的に追い出したとわたくしにおっしゃるなんて、せめて目上の家の事情は自力で調べてから口にすべきですわね」
「あ……オレは」
反論が思いつかないカクタス様を冷たい目で見ておりましたら、横から小さくため息が聞こえてきましたのでそちらを見ましたら、ベロニカ様が首を横に振っていらっしゃいました。




