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婚約者の前世(フリティラリア)

「ロジーの前世はどんな人生だったんだ?」


 ある日の夕食後、ずっと気になっていたことを聞くと、ロジーは首を傾げた。

 異世界の記憶を持っている者は、一部記憶の欠損がある者もいるからもしやロジーもそのタイプなのだろうか。


「『花と星の乙女』に出会ってからは人生を捧げておりましたわね」

「何歳で死んだとか、仕事とか、家族の事とか、名前とか、ゲームの知識以外は覚えているのか?」

「ああ、そういうことですのね。何歳で死んでしまったのかについてはよく覚えておりませんけれども、四十は超えておりましたわね。お金には一切困りませんでしたので仕事はしておりませんでしたわ。面倒な様々な財産の管理は専門家に任せておりましたのでそういう事で煩わされることもございませんでしたわ。家族に関しては父親の存在は存じませんの。母は結婚はしませんでしたが祖父母の命令で遺伝子提供をしてもらいわたくしを身ごもって出産いたしましたわ」


 これはもしや想像以上に聞いてはいけない話題だったのでは?


「その母もわたくしが物心つくときには亡くなっておりまして、わたくしは祖父母に育てられましたが、祖父母は流行り病で続けてなくなってしまいまして、多額の遺産を子供の頃に相続いたしましたの」

「それは、残念だな」

「いえ、特には。少々面倒な親類が後見人になると騒いだ程度ですわね。そのころには通信授業で学んでいた学校も飛び級で大学まで卒業しておりましたから、そういった方々では太刀打ちできない方に成人までの後見人をお願いして解決しましたわ。あとは、わたくしは幸運な方でございましたので、定期的に入ってくる収入以外にも気まぐれに手を出す宝くじで資産は増えていく一方でしたわね。研究に参加して欲しいというお誘いはありましたが特に興味も持てず、やる事も特に無いと何かしようと思っていた時に、ちょうど『花と星の乙女』に出会えましたのよ。それと前世の名前でしたかしら? 覚えておりますけれど、必要でして?」

「え、あ、覚えているのか」

「わたくしの前世の名前は――――と申しますのよ」

「ん?」

「どうかなさいまして?」


 口は確かに動いていたのに、音が聞こえなかった。


「もう一度聞いてもいいか?」

「ですので――――ですわ」


 やはり聞こえない。

 今まで、前世の記憶を持った者が自分の名前を発するのに制限がかかったこともあると聞いたこともあるし、ロジーもそうなのかもしれない。


「まあ、前世の名前がなんであったとしてもロジーであることに変わりはないか」

「そのように思うのでしたら聞かなければよろしいではございませんか」


 呆れたように言うロジーに「すまない」と謝りつつも、ロジーの前世と言うのは随分変わっているのではないだろうかと思ってしまう?

 それともそういう事が普通の世界だったのか?


「ロジーの前世の世界では、ロジーのような者が他にもいたのだったな?」

「それは、『花と星の乙女』に関してですの? それとも、わたくしのような人生を送っている者がいるかという意味ですの?」

「後者で」

「滅多にいないと思いますわ。少なくとも、前世でわたくしと全く同じ状況の方というのはわたくしが存じ上げる中では居ませんわね」

「そうか。前世のロジーは不幸だったのか?」

「それはありませんわね。幸いにも『花と星の乙女』に出会えましたので退屈という事もございませんでしたもの。個人的にも不幸とは思いませんし、わたくしの置かれた状況を客観的に見て不幸だという事も難しいと思いますわ」

「では、満足であったか?」

「何をもって満足とするかによると思いますの。けれども、わたくしは前世でも今この時でも、出来たはずなのにしなかったことで後悔することはしないようにしておりますわ。もし、後にすればよかったと思ったとしても、それを踏まえたうえでその時の行動を後悔しないように心がけております」


 にっこりと微笑んで言うロジーに、「そうか」と言って頭を撫でた。


「なんですの? 急に頭なんて撫でて」

「番が頑張っているのを褒めるのは、番の特権だろう?」

「なるほど。そうなのであれば、わたくしはお仕事やレベリングを頑張っていらっしゃるフィラ様を褒めなくてはいけませんわね」

「レベリングに関しては不承不承だ」

「あら、いずれ魔王になる御方なのですから、強くて損をする事はございませんわよ」

「魔王、か」


 魔国最上位統治資格保有者ではあるが、人族のロジーが番である我は魔王になるのかは難しいな。

 番を失ってしまえばそのものは狂ったり後を追ったりすることが殆どだ。

 ロジーがいくら強いと言っても人族であることに変わりがない以上、寿命という物から逃れることは出来ない。

 そうなってしまえば我は……。


「あ、もしかしてわたくしの方が魔王に相応しいと思っていらっしゃいますか? 確かに能力的にはわたくしの方が強いので魔王に相応しいかもしれませんけれども、これまで築き上げてきた物と言うのであればやはりフィラ様の方がよろしいと思いますの。たとえ魔人が上位の者に絶対服従だとしても」


 気にすべき問題は、そこではないぞ、ロジー。

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