婚約いたしましょう5
【世界樹システム接続開始】
―世界樹システム接続開始―
―認証開始―
―接続資格確認開始。繋ぐ者確認、天穿つ者確認、理の母確認―
―ユーザー名確認―
―ブルーローズミアアステリ=アンデルフ=ファンタリア=エッシャル―
―認証完了―
―オーダーをどうぞ―
【転移オーダー。転移先、魔国王宮内離宮水月宮。同伴者フリティラリアウーゾアステリ=キャルイス=ティリアン】
―転移オーダー確認。座標確認―
―出現場所リストアップ―
【Cの庭を選択】
―出現場所確認―
―転移開始―
その瞬間体が崩れるような感じがしてそのすぐ後に再構築される感覚に襲われます。
うーん、『花と星の乙女』での転移ではこのような感覚はありませんでしたけれど、実際にゲームの中に入って転移を行うとこういう感覚に襲われるのかもしれませんわ。
なんと言っても転移ですもの。
―転移完了―
―オーダーをどうぞ―
【オーダー終了】
―認証。世界樹システム接続終了―
世界樹への接続を終了して周囲を見渡しますと、全体的に落ち着いた色合いの花で整えられている庭が目に入りまして、流石にこのようなスチルは見たことが無いので、『花と星の乙女』のゲームの中でもやはりわたくしの知らないことはあるのだと思い知らされてしまいます。
そもそも、魔国なんていう物が名前だけの登場でゲーム上ではスチルすらなかったので当然なのですけれどもね。
それにしても、転生してから初めての転移ですし、同伴者がいるなんて初めての事でしたので少し心配でしたが、問題なく転移できてよかったですわ。
「では、魔王陛下にお会いしに行きましょうかフリティラリア様。……フリティラリア様?」
なんだかお顔の色が優れませんわね。
「きっ君、い、いい、今のは、今のは何だっ」
「転移ですわ」
「いやっ転移はもっと違うだろうっ」
「そう言われましても、世界樹に接続して行う転移以外存じませんので比べようがありませんわ」
フリティラリア様曰く、人族には扱えない魔法ですが一部の亜人と魔人が使用できる転移魔法というのは召喚魔法に似ているもので、転移元と転移先をゲートと言われる召喚陣で繋ぎそれを通って移動するものなのだそうです。
それで、わたくしが行った転移は転移先に転移対象を『再構築』するものなのだそうですわ。
ふむ……、やはり人族には転移魔法は使えないという事ですのね。
わたくしは世界樹がありますので問題はありませんけれども。
「こんな転移など聞いたことが無い。危険すぎる。世界樹が関わっているとはいえ、万が一にでも事故が起きないとは言えないのだぞ」
「事故ですか」
「再構築に失敗して体に欠損や異常が起きたらどうするつもりなんだ」
「今までそんなこと起きませんでしたわ」
「だから、万が一の事を言っている」
これは、心配してくださっているのですわね。
うーん、折角の心配を無碍にするのも申し訳ないですけれど、人族に転移魔法は使えませんし、今後も時間の有効活用(横着)の為に使用すると思いますのよね。
「もし万が一のことが起きれば、それはわたくしが世界樹システムを正しく利用出来なかったという事ですわ。つまりはそういうことです。その時は潔く現実を受け入れるしかないと思いますの」
「世界樹に接続しないという発想にはならないのか……」
「数少ない活躍の機会ですし、使って差し上げないのも可哀想ですわ」
『花と星の乙女』には設定上神様が存在していますけれど、ゲーム上で登場はしないので神世界があるという設定でも神が世界樹を使うかはわかりませんもの。
調停者になる資格を得た時に言祝ぎ(呪い)を頂いたのでいらっしゃるのでしょうけれども、姿は見ていないのですよね。
いえ、恐らくですが行こうと思えばいけるのですよ、神世界。
行きたいかと言われれば、別に行きたくはないのですけれどもね。
地下世界に関しては、『花と星の乙女』ではダンジョンがあるエリアとなっておりまして、魔物が住む世界でございますので何度も行ったことがございます。
『花と星の乙女』における魔物は瘴気を纏った動植物もしくは思念体、または瘴気より発生した存在となっておりまして、魔人とは区別されております。
魔人というのは魔人という種族であり、人族の上位種族に位置しているのです。
亜人は、エルフ、ハイエルフにダークエルフ、ドワーフ、獣人が該当しますわ。
逆を言えばそれ以外の亜人でも人族でもない者は魔人扱いですのよ。
エルフはハイエルフに、ハイエルフは魔王に忠誠を誓う種族ですし、ダークエルフは孤高の種族ではありますが力では魔王に敵いませんので逆らうことはありません。
ドワーフと獣人は人族に近いですわね。
魔人の中にも様々な種族がいるのですが、そういえばフリティラリア様はどのような種族なのでしょうか?