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乙女ゲームスタート4

「お姉様! こんなところにいたんですね!」


 学園に通っている生徒や教職員を含めた千人近くが食事を摂ることが可能な学食って、『花と星の乙女』のゲーム画面上では大きい食堂程度にしか描かれておりませんでしたけれども、実際に目の当たりにするとその迫力はすごいものがあるとしみじみして、日当たりのいい場所にベロニカ様と一緒に席を取れば、わたくしの数少ない親しいご令嬢も集まっていらっしゃって、それなりに楽しく学園初日の昼食を頂いておりましたら、突然そんな声をかけられましたわ。


「あら、スノーフレークさん。まさか平民の貴女から声をかけられるとは思いませんでしたわ」

「私達、二人きりの姉妹じゃないですか。そんな事を言うなんて、やっぱり私の事を憎んでいるんですね。だから、私を家から追い出したんですね!」

「わたくしは貴女と姉妹になった覚えはございませんし、使用人でもない無関係の平民を別邸に住まわせるような不用心な真似をするわけがございませんでしょう。そもそもわたくしが貴女を憎む? 何を思ってそのような妄言をおっしゃるのかしら? 貴女がわたくしに勝るところが何か一つでもございますの?」

「わ、私がお父様に愛されていたからっ」

「まあ! あのような遺伝子上の父親の愛情などのしをつけて差し上げましてよ。わたくしをこの世に生み出すために遺伝子提供をしたと言うだけの功績しかない、働きもしない金食い虫の身の程知らずなんて願い下げですわ」

「私はずっとあのお屋敷で暮らしていたのに! 仲のいい使用人とも離されて、いきなり一人暮らしをしろって放りだされて、どれだけ大変な思いをしたか! お姉様には人の心が無いんだわ!」

「ご両親が亡くなってからの数ヶ月間、貴女が言う所の親しい使用人が貴女に生きて行くための術を教えようとしたのに、それを拒否なさったのは貴女ですわよね? 新しく住むための家も平民街の一等地の治安のいい場所に用意いたしましたし、一人暮らしには十分すぎる広さの家ですわよね? それに、貴女が分不相応な贅沢をしなければ学園に通って卒業するまでに衣食に困らない、むしろ余裕が出るほどのお見舞金を差し上げましたわ。一人暮らしがお嫌なのでしたら、使用人をご自分で雇えばよろしかったのではございませんこと? それとも、お父様の愛人である元娼婦の娘である平民の貴女に、わたくしがそこまで手配して差し上げなくてはいけませんの?」

「両親を亡くした子供の面倒を家族が見るのは当たり前です! お姉様は私の姉なのだから、私の面倒を見るのが当たり前じゃないですか」

「あらまあ。両親が亡くなっているのはわたくしも同じですわよ? それで、同い年のわたくしが面倒を見るのが当たり前? 随分とご自分に都合がいい事をおっしゃいますのね。そもそも、何度も申し上げておりますが、わたくしは貴女が妹であると認めておりませんし、欠片も思っておりませんの」

「酷いっ! そんなに私の事が憎いんですか!? 家族なのにどうしてそんなに憎むことが出来るんですか!」

「家族? わたくしは貴女といつ家族になったのでしょう? 幻想を抱くのは勝手ですけれどもわたくしに迷惑をかけないでいただきたいですわね。今回で二回しかお会いしていない貴女にわたくしは迷惑こそ感じますが、憎しみなどこれっぽっちも抱いておりませんわ。自意識過剰も大概になさっていただけます?」

「でもっ――」

「それと貴女は理解していないようですが、実力主義のこの学園にも身分制度はしっかりございますの。平民でHクラスである貴女が、王族の女大公であるSクラスのわたくしに許しもなく話しかけてくる時点で、ご自分の低能さを知らしめているようなものでしてよ」

「ひ、ひどいわっ!」


 スノーフレークさんはそう叫んで両手で顔を覆って泣き始めました。

 迷惑極まりないですわね。


「何の騒ぎだ」

「さあ? そちらの平民が不敬にもこのわたくしに勝手に難癖をつけて来て勝手に泣き始めたのですわ」


 やって来たホスタ様に簡潔に説明をいたしますと、ホスタ様は周囲に視線を巡らせて軽くため息を吐き出しますと、一緒にいらっしゃったご学友にスノーフレークさんを立たせてこの場から連れて行くように指示を出しました。

 わたくし達の座っているテーブル席の隣にご自分の分の食事が乗ったトレイを置いてから、お二人がスノーフレークさんに優しく言葉をかけて連れて行きましたので、やっと静かに食事が出来ますわ。

 友人達と食事を再開し始めたわたくしをホスタ様がじっと見つめていらっしゃいましたが、そのまま無視をしておりましたら「食堂の食事を食べるんだな」と呟かれましたけれども、わたくしに向けている言葉なのかは不確かでございますので無視いたします。

 その後、中々戻ってこないご学友を待つのを諦めたのか、ホスタ様が食事を始めましたので視線を感じることも無くなり、下品にならない程度の会話を友人としつつ和やかに食事をしていたのですが、随分時間をかけて戻っていらっしゃったホスタ様のご学友がわたくしを睨みつけてくるように思えるのですが、下らないことをなさる前に冷めてしまった料理を召し上がったほうがよろしいと思いますわ。

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