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乙女ゲームスタート2

 しばらくすると一人、また一人とクラスに人が入って来まして、わたくし達と同じように好きな所に着席していきます。

 貴族でしたら面識がありますが、流石に平民は存じ上げませんわね。

 攻略対象者を除いて。


「ブルーローズ嬢」

「あら、ホスタ様。御機嫌よう」

「学年首位おめでとう」

「ありがとうございます。もっとも、このわたくしが首位以外を取るなどございませんのでいちいち褒めてくださらなくてもよろしいですわよ」

「……そうか。そちらはイレイシー侯爵令嬢だね。少なくとも半年間はクラスメイトだ。よろしく頼む」

「よろしくお願いします」

「前期のS所属の女生徒は君たちだけらしい」

「あら、それはまた情けないですわね」


 そういえば、『花と星の乙女』ではヒロインがSクラスになった時、ヒロイン以外の所属女生徒はブルーローズだけだという物がありましたわね。

 手っ取り早い逆ハー環境ですわ。


「それで、君たちはクラス発表を見ていないようだけれど、なぜ?」

「指定されている制服の色で所属するクラスがわかっておりますのに無駄な行動をする意味を見出すなんて出来ませんわ」

「そうか。まあ、ある意味行かなくてよかったかもしれないな」

「そうですの」


 わたくしがそっけなく返しますと、ホスタ様は「理由を聞かないのか?」と困ったように聞いていらっしゃいました。


「お話になりたいのでしたらどうぞ? わたくしはクラス発表の場で何かがあったとしてもどうでもいいですわ」

「君の異母妹が――」

「わたくしに異母妹などおりませんわ」

「……自称君の異母妹が、複数の男子生徒に声をかけ、尚且つ「学園に来ればお姉様に会えると思ったのに、ここに居ないのは私を避けているからだわ。そこまで私を憎んでいるなんてひどい」と大声で叫んでいた」

「そうですの」


 オープニングにない行動ですので、スノーフレークさんにヒロインとしての記憶が入り込んだと言う事なのでしょう。

 お約束としましては、ゲームの攻略情報を使って攻略対象を攻略、悪役令嬢の糾弾ですが、『花と星の乙女』には悪役令嬢とも言われるブルーローズへの糾弾イベントなんてございませんので、大変意味不明な無駄な行動をなさっておりますわね。


「まあ、あれだ。事情をよく知らない者が勘違いするかもしれないが、その……気にしない方がいい」

「元々真実を見抜けない低俗な方々が何を言おうとも気になりませんわ」

「しかし、世論という物は大切だろう」

「その程度の物を操れずに何が王族でして? そもそも、その娘がわたくしの異母妹だという証拠がなにかあるというのでしょうか? お父様の愛人の娘だから異母妹? そうなのだとしましたら、娼婦が産んだ子供はお相手をした方すべての子供でございますわよね」

「あ、ああ……」

「下らない妄言など捨て置けばよろしいのですわ。その娘がこのSクラスに所属するのであれば関りも出てくるでしょうけれども、そうでないのなら王族のわたくしの選択科目と、平民の娘の選択科目が同じになるとも思えませんもの。あちらが関わってこない限りわたくしとの接点などございませんわ」

「そうだな。彼女の制服の色は黒だったし、平民だからHクラスだろう」


 Hクラスとなりますと、転生チートはなさそうですわね。

 それにしても、わかってはいましたけれどもSクラスに在籍なさる方に攻略対象が多いですわね。

 ご都合主義って素晴らしいと思いますわ。

 ホスタ様を気にするようになさっているスピエラ様の弟のブライモン卿も、オズウィン卿ももれなく攻略対象者ですわ。

 お二人は簡単に言えば、ホスタ様のご学友として選ばれている方々ですわね。


「あの、ご歓談中お声をかけるご無礼をお許しいただけますか?」


 そう言って話しかけてきたのは、一年のSクラス在籍者の平民でいらっしゃるヴァレイ商会会頭のお孫さんで、攻略対象者ですわ。


「貴方は?」

「パキラ=ヴァレイと申します。エッシャル女大公様にお目にかかることが出来、至上の喜びに存じます」

「そうですの。それで、無礼を承知でそちらから話しかけてくるほど重要なことが何かございますの?」

「折角同じクラスになれたという幸運に感謝と、そして、それとは別にエッシャル女大公様にお礼を伝えたくて」

「わたくしは貴方と初対面ですけれども、お礼とは?」

「エッシャル女大公様のおかげで、俺の妹の命が助かりました」


 おかしいですわね、『花と星の乙女』の設定では彼の妹は病で亡くなっているはずなのですが。


「わたくしは何かした覚えはないのですけれど、勝手に恩人のように扱われるのは迷惑ですわ」

「いいえ、エッシャル女大公様が医療機関発展の推進に助力してくださったおかげで、不治の病と言われていた妹は今も生きております」

「そうですの。それはよかったですわね」

「そして、エッシャル女大公様は妹の病を治療するための植物の知識もあると聞きました。能力不足の身ではございますが、どうかそのお知恵を俺にお分けいただけないでしょうか」

「医師にお尋ねになればよろしいですわ。専門家に尋ねた方がより良い知識が得られるという常識がわからないかたがこのクラスに在籍しているというのは嘆かわしいですわね」

「既に聞いています。妹の病を治療するには、近しい魔力を持った者が作った花が必要だと」

「ご存じならわたくしに尋ねる必要はないのではありませんこと?」

「俺は未熟者ですので、妹を完治させることが出来るほどの効果のある花を作り出すことが出来ません。お礼は何でもいたします、どうかご指導いただけないでしょうか」


 そう言って深々と頭を下げる姿に、わたくしは呆れた眼差しを向けました。

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