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婚約いたしましょう4

「ではわたくしもご一緒させていただきますわ」

「は?」

「義両親への第一印象は大切ですわよね。お気に召していただけるように良い子でいますわ」

「いや、そうではなく」


 フリティラリア様の言葉に首を傾げてから、「ああ、そうですわね」と神妙に頷いてしまいました。


「そうか、わかってくれたか」

「手土産の一つも持たずにご訪問なんて失礼ですわね。けれども何がよろしいかしら? フリティラリア様のお父様やお母様は何がお好きでしょうか? お料理でしたらすぐに作らせますけれど」

「そうじゃない。なぜ君が来るんだ」

「だって、プロポーズしましたし。ご両親に許可を頂くにはわたくしもご一緒した方がいいですわよね」

「なぜプロポーズの話云々になっている。我は君が世界樹を見ることが出来るという事を父上に話に行くのだ」

「まあ! その程度の事でお忙しい魔王陛下のお手を煩わせるおつもりなのですか?」

「その程度の事じゃないだろう」


 でも、あの程度のスチルならいくらでも見ることが出来ますわ。

 そう考えて「そうですわ」とポムと両の掌を合わせて音を出しました。


「フリティラリア様、お手をお貸しいただけますか?」

「至極嫌な予感しかしない」

「あら、いい年をした殿方が僅か七歳の子供を恐れるなんて。わたくしとの間に子供が生まれたら子供に振り回されてしまいますわよ」

「なぜそうなる」

「将来の為にも今からわたくしで練習いたしましょう」


 そう言って無防備に手を差し出しますと、ものすごく躊躇った後にわたくしの手を握りました。

 ご自分の爪でわたくしの肌を傷つけないように気を使ってくださる辺りは紳士的で好感が持てますわ。


【世界樹システム接続開始】

―世界樹システム接続開始―

―認証開始―

―接続資格確認開始。繋ぐ者確認、天穿つ者確認、理の母確認―

―ユーザー名確認―

―繧ヲ繧」繧ケ繧ソ繝ェ繧「�昴Α繧ケ繝�ぅ繝シ繧ッ―

―エラー発生―

―ユーザー名の相違確認―

―接続資格保有者の生体ID確認―

―荵晏鴻蜈ュ逋セ荳牙香荳??蜊?卆荳牙香蝗―

―接続資格保有者の生体ID一致確認―

―接続資格保有者の生体パスワード確認―

―螟ゥ縺ョ蟾昴↓豕ウ縺千分縺ョ鬲―

―接続資格保有者の生体パスワード一致確認―

―接続資格保有者のユーザー名変更許可申請―

―ユーザー名変更許可申請許諾―

―ユーザー名再登録完了―

―ユーザー名再確認―

―ブルーローズミアアステリ=アンデルフ=ファンタリア=エッシャル―

―認証完了―

―オーダーをどうぞ―


 はぁ、面倒くさいですわ。

 ちょっと世界樹に接続するだけでこんな手間を取るなんて、本当に面倒で仕方がありませんわ。


【アイテムオーダー、世界樹の新芽の朝露】

―アイテムオーダー認証。配送先を選択してください―

【時鏡の錬金工房、フロストボックス】

―配送完了―

―オーダーをどうぞ―

【オーダー終了】

―認証。世界樹システム接続終了―


 そこでフツリと世界樹への接続が終了します。

 やはり接続している間はあのスチルが脳裏に浮かぶばかりですわね。

 こちらの世界に転生したのですから、変化があってもいいと思いますのに、なんだかつまらないですわ。

 さて、フリティラリア様にもしかしたらわたくしが見ている映像が見ていただけるかもと実験ついでに手を繋いでおりましたけどいかがでしたでしょう?

 ついででしたけれども後で作ろうとしている物の材料も手に入りましたわね。

 錬金術で作成するスキンケア用品は質がピンキリですが、世界樹の新芽の朝露を使用すると極上の出来になるのですわ。

 わたくしはまだ七歳。されど七歳。

 過剰なスキンケアは不要ですが、かといってスキンケアをしなくていいと言うわけではありませんの。

 化粧水、美容液、乳液、クリーム、パック、UVカットが一つで完了できるオールインワンジェルを作りませんとね。

 一人でうんうんと頷いていると、手を繋いだままのフリティラリア様がぎゅっとわたくしの手を力を込めて握っていらっしゃいました。

 あら、積極的ですわね。


「い、いい、今のは」

「世界樹に接続しましたの」

「君っ見るだけでなく、会話も出来るのか!」

「意思の疎通が出来なければ接続は出来ませんわよ?」

「君っ世界樹と意思の疎通など前代未聞だっ」

「意思の疎通をせずに、どうやって接続すればよいのですか?」

「そもそも、世界樹に接続など出来るわけがない」

「わたくしは出来ますわ」

「ぐっ……、君はおかしい」

「まあ! そのように言われましては流石にわたくしも傷ついてしまいますわ」

「それにっ、なんださっきのは! あれが世界樹か? いや、世界樹なのだろう。あのように神聖で荘厳で凛とした佇まいは他にない」


 え、ただのスチルでしてよ?


「しかし、君は世界樹に何かを要求していたな」

「ええ、スキンケア用品を作る為に必要な材料を」

「代償は何を支払った」

「だいしょう? 大小? あ、代償?」


 なんですかそれ。あ、いえ。イベントで上位に食い込むために廃課金しつつ走破して得た称号を使用しているので、ある意味前払いで代償を支払っていると言えるのでしょうか?


「時間とお金を前払いしておりますわね」

「そんな物程度で世界樹に何かを要求出来るわけがないだろうっ」


 フリティラリア様が唸るようにおっしゃいましたが、他に思い当たる物なんてありませんわ。


「まさか生命力を削っているわけじゃないだろうな? それとも魔力か?」

「いえ、ですので本当に――」

「こうしてはいられないな。世界樹に関しては我よりも父上の方がご存じだ」

「あの――」

「しかし困ったな。我は君に強制的に召喚された身だからな。世界樹に接続してあまつさえ意思の疎通をするとなれば君を連れて事情を説明するのが一番だが、転移に支障が出る可能性が」

「フリティラリア様。魔王陛下の所に転移すればよろしいのですか?」

「ああ。しかし、いかに魔国最上位女性統治資格保有者とはいえ簡単に魔国の結界の中に入ることは難しいな。我の魔力で包んで……」

「世界樹に接続すれば多分ですが『この世界』でわたくしが行けない場所はありませんわよ」


 未だに握られたままの手を見つめてから、フリティラリア様がわたくしの瞳を覗き込みます。

 これ、もしかして癖なのでしょうか?


「まさか、()()世界樹に接続するつもりか?」

「いけませんか?」

「命に係わる状況かもしれないんだぞ」


 あら、美形の真顔は迫力ですわね。

 でも実際、『花と星の乙女』でも世界樹を使ってマップ移動時間を短縮していましたし、問題はないと思いますのよね。

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