思い…出した!(スノーフレーク)
夢を見た。
板の上で色鮮やかに動く映像。それを操作する私。
ロングセラーの乙女ゲーム『花と星の乙女』は定期的に新人登録キャンペーンをしていて、私はそのキャンペーンの広告で目にしたキャラクターに惹かれてなんとなく登録したユーザーだった。
後発組の利点は、先人たちが集めた攻略情報を苦も無く利用できる点だと思う。
私だって、出来る限り有利になるように登録時の名前や誕生日を操作した。
流石に過去のイベントでの景品や称号、限定ガチャ魔法とかボイスなんかは手に入らないけど、それでも沢山いる攻略対象を攻略するだけだったら攻略サイトを見て行けばいいからそんなに難しいことはなかった。
そもそも、百人近い攻略対象をコンプリートしようとか考えてなかったし。
いわゆるランカーと呼ばれる人達みたいなプレイをしようとしなければ、ヌルゲーと言えるものだとも思えた。
だって、ランイベはランカーが何とかしてくれるし、ガチャにお金をかけるのも勿体ないから無料分だけで済ませたけど、数人の攻略対象者に狙いを絞れば好感度上げなんてすぐに終わったわ。
期間限定ガチャとか、家具や魔法のガチャに心が惹かれないわけじゃないけど、ソシャゲに課金してもお金の無駄でしょ。
賢い私はそんなことしなかったわ。
そんな中、『花と星の乙女』ユーザーなら一度は見ておけと言われる最古参でありヘビーユーザーの動画や生放送を見るたび、ソシャゲに人生捧げるとか馬鹿なんじゃないかと思った。
もっと生産的なことに時間とお金を使えばいいのに。
そんな風に考えながら、ほぼ惰性のように毎日ログインをして無料ガチャを引くだけの日々が過ぎていって、いつものように歩きながらゲームをしていた時、悲鳴が聞こえたと思った瞬間私の体に衝撃が走って空中に吹き飛ばされて地面に叩きつけられた。
私の前世の終わりは、そんなあっさりとしたものだった。
何かに特に夢中になると言う事も無く、平凡な、言い方を変えればつまらない人生。
もし生まれ変わるなら、もっと違う、恵まれた幸せな人生がいい。
神様って、居るんだ。
起きてすぐに思った感想がそれだった。
前世で恵まれない人生を過ごして、不幸に事故で死んだ私の願いを叶えるためにヌルゲーの『花と星の乙女』のヒロインに転生させてくれたんだわ。
設定通りに異母姉で悪役令嬢のブルーローズとは別に暮らしていて、一人暮らしか。
うーん、前世を思い出すまではこの生活に嘆きながらもそれなりに暮らしてたけど、いいじゃない、一人暮らし。
前世では親が結婚もしていないし、職場も近いんだから絶対にするなってうるさくて出来なかったから憧れてたのよね。
それに、『誰が用意したのか』しらないけど、料理本とか基本学習用の本とか、生活に関係する本は『ゲーム通り』に揃ってるから序盤としては問題ないわ。
食事は、確かにお屋敷に居た時は高級料理って感じのものを食べてたけど、別に私は普通の食事でも文句はないわ。
むしろ、市場が近いから自炊しなくても買ってくればいいわけだし、コンビニって言うよりは商店街?
どっちにしろ自炊する手間が無ければそれでいいわ。
うーん、今日から『花と星の乙女』の舞台の学園生活か。
プロローグではヒロインが遅刻して入学式の会場に入って注目を集めるのよね。
その時に攻略対象の教師キャラに注意されるけど、ヒロイン力で見逃されて入学式が終わってクラス発表を見に行って同学年の攻略対象と何人か遭遇だったわね。
私が『花と星の乙女』を始めるきっかけになったホスタもここで遭遇するんだけど、あいつも出てくるのよ、悪役令嬢のブルーローズ。
入学式を乱したことに嫌味を言われて、どのクラスなのか聞かれてまた嫌味を言われるのよ。
仕方ないじゃない、初期ステータスじゃどう頑張っても下のクラスから始まるんだから。
ホント、ブルーローズって嫌味よね。
異母妹に優しく出来ない上に王族だとかいう立場のせいでホスタとの好感度イベントで登場してくるのよ。
他の攻略キャラでも登場するけど、なんであんなに嫌味なのかしら。
あーあ、ホスタ達に会えるのはいいけど、ブルーローズに会うのは憂鬱。
あっ、一応ステータスを確認しておこうかな。
家の自室の勉強机で出来るのよね。
ネグリジェのまま寝室を出て勉強部屋に行って机の前に行くけど、パネルがあるわけでもないし、どうやってステータスを確認するの?
「ステータスオープン。……とか?」
冗談で言うと、目の前に半透明なスクリーンのような物が浮かび上がって見慣れたステータス画面が表示された。
って、低っ! なにこのステータス!
一気にやる気なくなったわ。
誰よ、スノーフレーク=エウヘニアなんてダッサイ名前つけたやつ。
もっとましな名前にしなさいよね。誕生日だけでも変えればもっとましな適正値ランクだったかもしれないじゃない。
はぁ、ヌルゲーとはいえ、ホスタの好感度上げにはそれなりの能力が必要なのに。
せめて前世で私がつけたユーザー名の……ユーザー名、なんだっけ?
とにかく、前途多難すぎて萎えるわぁ。




