成人祝いのパーティー6(ネリネ)
わぁお。お爺様や父上には出来ることならブルーローズ嬢を皇国に取り戻せって言われているけど、無理なんじゃないかな?
相手が魔人っていうことを抜いたとしても、あの間に入り込んだら馬に蹴られると思うんだよね。
俺、まだ死にたくないな。
しっかし、お爺様の最愛であるブルーローズ嬢のお婆様は、吐息一つで異性を魅了したとかなんていう眉唾物の伝説の持ち主だけど、納得した。
あれは駄目だろう。卑怯だ。
見込みがないってわかっていても、自分に向けられたものじゃないってわかっていても引き寄せられる。
でも、美しい青薔薇は棘でガッチガチに守られてるよな。
「おい、ネリネ」
「なんです、兄上」
「こちらのご令嬢達がお前に話があるそうだ」
ちっ、面倒くさい。
兄上は女性を侍らせても苦にならないのかもしれないけど、俺には向いてないんだから巻き込まないでほしいんだよね。
「俺に話? なにかな?」
それでも、皇国の皇子としてにこやかに対応すれば嬉しそうに令嬢達が一気に距離を詰めてくる。
うわぁ、こわぁ。
「学園ではなかなかお話しする機会が無いのでお話ししたくて。留学していらしたのはお国の方針だそうですね」
「そうだね。両国の交流を今以上に深めるためにと勧められてね」
父上たちの本音は、ブルーローズ嬢を伴侶にして皇国に連れてこいっていう目的なんだろうけど、俺としてはせっかくの機会だからファンタリア王国の魔法の研究を見聞したい。
ブルーローズ嬢は、出来れば伴侶にって言う感じだけど、あの様子を見ると難しそうだな。
王族としての義務で複数の伴侶を持つかもしれないけど、絶対にフリティラリア様と比べられるし。
俺は別に構わないけど、意味不明なプライドを持っているやつだったらたまったもんじゃないだろうな。
ただでさえ、王族(皇族)だけが複数の伴侶を持つことが正当化されていることをよく思っていないやつらもいるし。
まったく、こっちだって好きで種馬扱いされているわけじゃないってのに。
でも、種馬ならまだましか。
女性なんてすさまじい負担だろうし、その証拠にブルーローズ嬢のお婆様も母君も子供を一人しか残せていない。
うちもなぁ、皇族としての瞳を持たない子供は早々に高位貴族に養子に出されたりするからな。
自分の子供が皇族の瞳を持って生まれなかったことで、その子供を追い詰める者が出たり、精神的に病んでしまう妃が出たので、皇族の瞳を持たない子供は死産だったと言う事にして早々に養子に出すことが暗黙の了解になったらしいよ。
それが無い分、ファンタリア王国の方がまだ平和かなぁ。
「実は、私も来年度から学園に通うんです。ネリネ殿下に色々教えていただきたいです」
「そうなんだ」
「学園ではネリネ殿下とクラスが違いますのでなかなかお会いすることが出来ませんけれど、いつも気にしておりますのよ」
「そっかぁ」
「私はネリネ殿下よりも上の学年ですので、何かわからないことがありましたらいつでもご遠慮なくお尋ねになってください」
「ありがとう」
名も知らぬ令嬢とよろしくやるつもりはないんだよね。
そもそも、同じクラスって、俺はSAクラスだけど君たちは何処のクラスなわけ?
興味も無いから聞かないけどね。
「それにしても、同じ学年にエッシャル大公女様がいるなんて、なんだか恐れ多いですわ」
「ふーん」
「お茶会では何度かご一緒させていただきましたが、やはり近寄りがたくて。作り物めいたあの微笑など、まるでお人形のようではございませんか」
「そっかぁ」
「エッシャル大公女様を褒める方もいらっしゃいますけれど、あのように冷たい印象の方のどこがよろしいのかしら」
「どうだろうねぇ」
そりゃあ、君たちと違ってずば抜けた美貌とか、才能とか、血統じゃないの?
俺が言うのもなんだけど、ブルーローズ嬢以上の女性って居ないよ。
フリティラリア様がお気に召すのも仕方がないよね。
っていうかさ、さっきからエッシャル大公女様って言っているけど、この後その呼称もなくなるってわかっている?
成人したって言う事は、家を正式に相続出来るって言う事なんだよ。
つまり、ブルーローズ嬢は今行われている貴族の挨拶が終わった後に行われるエッシャル女大公への任命をもって、正式に女大公になるんだから、いくら学園がある程度の実力主義とはいえ、身分制度がある以上君たちが気軽に近づける人物じゃなくなるんだよ。
自分が持っていない物を持っていることを僻んでそんな風に悪口を言うのはやめた方がいいと思うな。
自業自得だから注意はしないけどね。
「それに、魔人とあのように一緒に居るなんて。恐ろしいわ」
「それよりもあのドレスですわ。あんなはしたないデザイン、私にはとても着ることが出来ませんわ」
「人族の上位種族である魔人の事を悪く言うのはよくないと思うな。それにブルーローズ嬢のドレスはフリティラリア様がご用意したものだし、そんな風に言う物でもないね」
「えっ、そっそうなのですか」
慌てたように視線を彷徨わせる令嬢を一瞥して、にっこりと笑顔を浮かべる。
「あのドレスを着こなせるブルーローズ嬢はすごいと思うな。普通だったらドレスに負けるのに、全然そう見えないよ」
彼女と君たちは、そもそも格が違うんだから身の程をわきまえた方がいいよ?




