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成人祝いのパーティー4

 遠くからフィラ様をキラキラとした目で見ていた女性陣が、実際に近くに来て挨拶をしようとした瞬間何かに耐えるように口を結ぶさまを見るのは愉快でなりませんわね。

 まったくフィラ様が文句のつけようもないほどに素晴らしいのは当たり前ですけれども、番であるわたくしの前でフィラ様に色目を使おうとする羽虫の存在には本当にうんざりしてしまいますわ。


「それにしても、まさか魔人を本日のエスコート役になさるとは、エッシャル大公女様もお人が悪い。わざわざ魔国からお越しいただかなくとも他にも適役がおりましたでしょう」

「まあ! フィラ様以上にわたくしのエスコート役に相応しい方がいらっしゃるのでしょうか? 申し訳ないですけれども思い当たりませんわね」

「エッシャル大公女様は我が国にとって大切な王族でいらっしゃるのですから、そのお手を取りたいと思っている者は多くおりましょう」

「当然ですわね。けれども勘違いしないでいただきたいのですけれど、王族とは国や貴族にとっての都合のいいお人形ではございませんの。言われるがままに頷くだけでしたらそこら辺の平民の赤子にでも出来ましてよ」

「魔国との繋がりの為に尊き御身を差し出すなど、臣下として痛ましいと――」

「差し出す? 貴方は誰に向かってそのような無礼な口を利いていらっしゃるのかしら? わたくしがもしフィラ様の元に行くことになったとして、その場合わたくしが納得しない、もしくは悲しみに暮れて向かうとでも思っていらっしゃるのかしら? そもそも、わたくしは物ではございませんので差し出すなんて単語が出てくる時点で、王族であるわたくしをどう思っているか透けて見えますわね。これ以上無駄なことを言って己の愚かさをさらしたくなければお控えになったら如何でしょう? それに、お連れのご婦人が随分青い顔をなさっているのに、その事を気にかけることも出来ない愚か者がわたくしの貴重な時間を奪うなど、随分と罪深いと思いませんこと?」


 わたくしの言葉に挨拶をしてきた貴族が顔を青褪めさせましたわ。

 何人目になるかはわかりませんけれども、このように自分を売り込もうとして言葉を誤ったりあからさまにわたくしを年若い小娘と侮った態度を取ってくる者がいて、正直面倒ですわ。

 けれどもこの挨拶も王族としての義務でございますし仕方がございませんわね。


「つ、妻の具合が優れないようでございますので、これにて失礼いたします」


 慌てた様子で離れればすぐに次の貴族がわたくしの前に現れます。


「ベイジョン伯爵、並びに夫人。そしてご令嬢まで駆けつけてくださり嬉しく思いますわ」

「この度は無事に成人を迎えることが出来たこと、臣下として嬉しく思います。エッシャル大公女様がいらっしゃればこの国もますます繁栄していくことにございましょう」

「あら、わたくしは確かにこの国の王族でございますけれども、だからと言ってわたくしにばかり責任を押し付けるおつもりなのでしょうか? お爺様の孫とはいえ、わたくしは現国王陛下の姪、言ってしまえば傍系であり王位継承権も第三位。通常であれば第一位であるクロトン様に期待をかけるべきではございませんの?」

「もちろん、優秀でいらっしゃるクロトン様への期待は当たり前の事でございますが、それに加えエッシャル大公女様がお傍にあれば安泰という物でございます」

「なるほど、確かにわたくしのような強者が傍に居ればクロトン様のお立場は確かなものとなりますわね。けれども、それを貴方がわたくしに願い出ることが許されると思っていらっしゃいますの?」

「それは」

「まさかとは思いますが、王族なのだから国の為に感情を殺して奉仕すべきだとでも思っていらっしゃいますの? そうなのでしたら、王族の手足となるべき貴族もそれに倣い、私欲をすべて捨てて人形のように粛々と国の為に働くべきですわよね」

「そのような事を言うなど、傲慢とも取られます。お言葉にお気をつけになったほうがよろしいのでは」

「言葉に気を付けるのはそちらではなくて? クロトン様が誰を伴侶にするかはクロトン様がお決めになる事であり、その手を取るかは相手が決めることでございましょう。政治的思惑がそこにあったとしても、最終的に『選ぶ』のが誰であるのかを理解していない愚か者が何を騒いだところで強者にとっては多少煩わしい羽音でしかございませんのよ」


 わたくしの言葉にぐっとこぶしを握り締めて、悔しそうな色を浮かべたまま挨拶をして離れていくと、また次の貴族が前にやってきます。

 この後、何人と挨拶をしなければいけないのでしょうか。

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