成人祝いのパーティー3(クロトン)
各国の王族や皇族の待機部屋に入ってきたブルーローズ嬢を見て、思わず「うわぁ」と声が出そうになったのは仕方がない。
よく見れば肌と同じ色の布に刺繍が施されているものだとわかるけれども、一瞬見ただけだったり遠目から見ただけでは上半身裸に近い格好をしているように見えるのだ。
ホスタなんて驚きのあまりソファーからずり落ちかけているよ。
しかもフリティラリア様はめちゃくちゃこっちを牽制してくるし、圧力かけてくるし、ライバルにしては強敵すぎて逆に面白いよね。
勝てないってわかっている相手に勝負を挑む機会なんて立場上のこともあってほとんどないから、機会は逃したくないな。
僕と同じ考えの人は少数派みたいだけど、そっちの方が助かるよ。
強敵を前にして足の引っ張り合いなんて時間の無駄だからね。
だけど、今日のパーティーでブルーローズ嬢に対する虚像がそれなりに崩れる可能性はあるかもしれないな。
氷の大公女とか言われているブルーローズ嬢があんな蕩けるような笑みをフリティラリア様に向けるんだから、見せられた方は自分に向けられたものじゃないってわかっていても夢見ちゃいそうだよね。
ほら、一般的に男って目標が高い方が燃えるっていうし。
待機している間、宣言通りブルーローズ嬢を離さず、会話をするのもブルーローズ嬢か各国の王だけのフリティラリア様はどうあがいても魔人で人族の上位種族なんだよね。
しかも魔王陛下の息子とか、ブルーローズ嬢じゃなくても惹かれるよ。
人族と魔人なんて寿命や種族の関係上色々あるから、王族であるブルーローズ嬢は結局伴侶を持つことになるんだろうけど、伴侶になったら心の中で永遠にフリティラリア様と比べられるのか。
それはそれでやる気が出ちゃうな。
パーティーが始まって、最後にブルーローズ嬢とフリティラリア様が入場した瞬間、想像通りに会場全体が動揺で揺れた。
一つはブルーローズ嬢のドレス、もう一つは魔人が王族とはいえ人族の成人を祝うパーティーでエスコート役をしていると言う事だよね。
魔人自体を初めて見る人もいるんだろうな。
父様が挨拶をして、続いてブルーローズ嬢が挨拶をしたところから始まる来客による挨拶地獄。
私の時もそうだったけれども、挨拶をされる側も大変なんだよね。
笑顔をキープしつつ似たり寄ったりのおべっかに返事をするのって、精神的にも本気でしんどいんだよ。
中には自分の子供をぜひ伴侶にとかあからさまに言ってくる人もいるし。
まあね、私だってそろそろ伴侶は作るべきだとわかっているよ。
お爺様もひ孫の顔を見て死にたいとか言ってくるし。
でもねえ、最高の女性が身近に存在しているせいで、他のご令嬢がどうしても霞んじゃうんだよね。
…………ん? なんか変だな。
ブルーローズ嬢に挨拶をしているご婦人やご令嬢の様子がなんていうか、我慢している感じ?
ブルーローズ嬢は確かに友好関係が狭いけど、そこまで令嬢やご婦人からの評判が悪いって言うわけじゃないし、なによりもこういう場で主役である王族のブルーローズ嬢に対してそんな態度を取ったら下手したら不敬だって言われてもおかしくないんだけどな。
絶対に気が付いているはずのブルーローズ嬢はむしろ上機嫌だし。
「魔人とはいえ、あれだけの色男が横に居るのに一切そっちを見ないっていうのはどういう理屈なのかな」
隣で同じように様子を観察していたネリネ殿の言葉に、なるほど、原因はフリティラリア様の方かとも思ったけれども、魔人に恐怖しているという感じでもないよね。
「女性避けの魔道具を身につけているとか?」
「そんな魔道具聞いたことないんだけどな」
「人族には伝わっていない魔人の物かもしれないよ」
「じゃあ、どうしてブルーローズ嬢は平気なのさ」
「特定の相手には効かないとか?」
「実際に有ったとしたら随分と都合がいい魔道具だね。ぜひ使わせてもらいたいよ」
「いい加減、兄君を見習って女性のお相手をするべきでは?」
「産めよ増やせよは兄上をはじめとした他の兄弟に任せたいな」
その気持ちはわかるけど、我が国はホスタは完全にブルーローズ嬢にほれ込んでいるし、プルメリアは王族だけど色を持っていないから隔世遺伝するかは難しいところもあるんだよね。
そうなると、私が必然的に伴侶を多く持つ必要があるのはわかってはいるんだけどね。
期待されているのは、『守護』役に承認された女性を伴侶にすることだけど、気が向かない。
「それにしても、ブルーローズ嬢もほれ込むならもっと別の男にすればいいものを。よりにもよって魔人とは」
「魔人と人族の子供はもれなく魔人だから、仮に彼との間に子供が出来ても王族にはなれないね」
「俺としては、ブルーローズ嬢がフリティラリア様の一時的なおもちゃ扱いにならなければと思っているよ」
数千年生きる魔人にとって、五十年程度の寿命しかない人族なんて、確かに一時の気まぐれを向けるおもちゃ扱いであってもおかしくはないかな。
それにしても、ブルーローズ嬢はいったいどこで魔人と、というよりも魔国と接点を持ったんだろう?
こっそり出かけていることは知っているけど、流石に魔国まで行くような数日間国を離れると言う事はないはずなんだよね。
他国に行くときは大掛かりな王族(皇族)が管理する転移用の魔道具を使用する必要があるし、ブルーローズ嬢が公式記録以外でその魔道具を使ったことはないはずだから、余計に謎だな。




