成人祝いのパーティー2
わたくしの成人を祝うパーティーで、王族が待機する部屋に入室したわたくしを見て、ホスタ様はソファーからずり落ちかけ、クロトン様は驚いたような顔をしたものの、わたくしをエスコートしているフィラ様を見て姿勢を正しました。
ネリネ様はわたくしのドレスをじっくりと眺めてにっこりと笑い、そのお兄様は好奇の目を向けてきましたがフィラ様の視線を受けて肩を竦め、他の国の王族(皇族)の方々もそれぞれ反応をいたしましたが概ねフィラ様の牽制に沈黙いたしました。
もともと何も話しておりませんけれどもね。
「楽にせよ」
緊張感を引き出したのはフィラ様でしてよ。
ともあれ、フィラ様の言葉に伯父様が笑みを浮かべて立ち上がり挨拶をした後に口を開きます。
「フリティラリア様、本日は姪のブルーローズのエスコートを引き受けていただきありがとうございます」
「問題ない。ロジーは魔国と個人的に親しくしているからな」
フィラ様がわたくしを愛称で呼んだことで一気にフィラ様に視線が向きましたわね。
「それに、ロジーの有能さは我の父である魔王も認めている。なあ、ロジー」
「ええ、人族であるとはいえ、このわたくしが認められないなどあるはずがございませんもの。フィラ様にも日ごろからよくしていただいておりますし、期待にこたえなければわたくしの矜持に関わりますわ」
あえてフィラ様を愛称で呼びましたら、あからさまに反応をなさる方々がいらっしゃいますわね。
もれなくなぜなのかはわかりませんがわたくしに対する好感度が高い方ですけれどもね。
「本日は責任をもってロジーをエスコートする故、貴殿らは心配なさらぬよう」
「それはそれは、ありがたくも頼もしいことですな」
あらあら、伯父様ってば目が笑っていませんわよ。
ここぞとばかりにわたくしという餌をぶら下げて、将来有望な若者を焚きつけようとなさったのでしょうけれどもそうはいきませんの。
だってわたくしがフィラ様の傍を離れてしまったら、婚約契約書の内容や霊薬を飲んでいるということがあったとしても、フィラ様に色目を使う羽虫がいるかもしれませんもの。
それに、勝手に盛り上がられて変に好感度を上げられても困りますわ。
「ところで、ブルーローズは主役ですが、まさかとは思いますがダンスをさせないなどとはおっしゃいませんよね?」
「問題ない。ちゃんと『ファーストダンスは』我と踊る故な」
「なるほど」
強調した部分を正確に読み取った伯父様が、笑みを深くしましたが、一瞬わたくしを見てきました。
わたくしを見ていらっしゃいましても、主役としてご挨拶などに忙しくなるかと思いますのでいらぬ行動は出来ませんのよ。
そして、ものすごく何かを言いたそうにわたくしを見てくる方々。
そのような視線を寄越されても迷惑ですの。
「しかし、まさか成人を祝うパーティーで黒のドレスを着るとは。随分思い切ったな、ブルーローズ」
「似合うであろう。我が贈ったものだからな。ロジーの日ごろの行いを考慮し、贈らせてもらった」
あ、今度こそ部屋の中の空気が凍り付きましたわ。
エスコートするとはいえ、家族以外がドレスを贈り、それを着て参加するなんて、特別な関係だと無言でアピールしているような物ですものね。
「ドレスを用立ててくださるというのは聞いてはいましたが。本当に、ブルーローズに良くしてくださっているようで」
「ああ、かけがえのない存在だと思っている」
そう言いながら甘ったるい視線を向けていらっしゃいましたので、わたくしもその笑みにこたえるようににっこりと微笑みました。
「ブルーローズ」
「なんでしょう、伯父様」
「一応我が息子たちに希望を与えて欲しいのだが」
「伯父様、わたくしは無駄な努力を否定する気はありませんけれども、どんなに努力してもどうしようもないものがあると言う事は知るべきだとも思っておりますのよ」
「そうか。だが一応は努力の目的にはなってやってくれ」
「それが王族としての義務の一つというのであれば、仕方がありませんわね」
ため息を吐きながらそう言いますと、伯父様は首を横に振り、幾人かの方々は闘志を燃やし、幾人かの方々は遠くを見つめました。
「ああ、大切なことを言い忘れておりましたわ!」
「なんだ?」
「言う必要はないとは思うのですが、思いあがった方がいらっしゃらないとも限らないので一応言っておきますけれど、フィラ様はそこら辺の低能の者に興味を示すことはございませんので、よくわきまえてくださいませね」
にっこりと微笑んで女性陣に向かって言いますと、そっと目をそらされました。
霊薬の効果がございますので、フィラ様の近くに行けば不快感を覚えますが、離れていればそうではございませんものね。
面倒事を避けるためにも牽制は大切ですわ。




