婚約いたしましょう3
フリティラリア様とのお話し合いは継続しておりますが、なかなかプロポーズに応じていただけません。
成長したわたくしは、公式のデータですと身長156cm、体重は42kg、バスト86のDカップ、ウエストは55cm、ヒップは82cm。
花が綻んだような緩やかにウェーブのかかった甘やかなピンクブロンド、月を溶かしたような琥珀色の瞳、白磁の肌は傷やシミ一つなく絹のように吸い付く肌触り、桃色に色づく唇は思わず吸い付きたくなる瑞々しさ、人を惹きつけるようにほんのり色づいた頬、それでいてほっそりとした長い手足のバランスの取れた体型の淑女然として気高く妖艶なキャラクター。
お買い得だと思うのですよね。こちらの世界には青田買いという言葉はないのでしょうか?
わたくしと婚約してくだされば、この離宮に住んでいただいて三食昼寝付きですし。
この離宮、実は拠点も兼ねておりますので個人の部屋が欲しいのでしたら空間操作でいくらでもご用意出来ますし、生活にも困らないと思いますのよね。
目が覚めてから今までこの離宮で働いていた使用人は全て他に移動させてわたくしの信頼出来る存在を配置しましたが、食事も腕のいい専任の料理人がいますので他に比べても良質なものをご提供出来ると思いますし。
離宮といっても、『花と星の乙女』で廃課金して揃えた温室や庭園、錬金工房がありますので手狭に感じることはないと思いますし、もし思うのでしたら何とかする所存なのですけど、後はどうしたらプロポーズを受けていただけるのでしょうか。
「………………はっ!」
「今度は何だ」
「世界樹への接続権は如何でしょう」
「は……?」
フリティラリア様がぽかんと間抜けな声を発しました。
いえ、わたくしってイベントの称号で『理の母』とか『天穿つ者』それから『繋ぐ者』という物もいただいておりまして、この三つを利用することにより世界樹への接続が出来るのです。
この三つの称号を揃え持っているのはわたくしが知る限りわたくしだけですので、これはかなりの交渉材料なのではないでしょうか。
神世界、地上、地下世界を繋ぐという設定である世界樹への接続権は、『花と星の乙女』の世界ではアイテム作成材料の取得や移動時間の短縮ぐらいでしか使えないほぼ死にシステムでしたが、フリティラリア様でしたらわたくしよりもうまく活用していただけるかもしれません。
「世界樹に接続って、何を馬鹿な……父上だって出来ないんだぞ」
「現役の調停者ですのに?」
「歴代の調停者でもだ」
……それって、死にシステムだから使っていないだけでは?
本当に大した効果はないのですけれど。
世界樹に接続するぐらいなら、課金でそろえた道具や家財を使った方が余程楽で便利ですし。
けれども、うーん。世界樹への接続権でも駄目だとなってしまいますと本当に手札が無くなってしまいますわね。
「世界樹への接続なんてありえないだろう。君、まさかとは思うが世界樹を見たことがあるのか?」
「それは何とも言えませんわね」
世界樹に接続する時にスチルで世界樹が出てきますが、実際に世界樹の傍に行って見たのかと言われると違う気がしますもの。
「見たと言えば見ましたが、『ちゃんと』見たのかと言われるとそう言うわけではありませんわ。だって、接続する時は世界樹の画像だけが映し出されるだけでしたもの」
「それは見たというんだ。言っておくが世界樹を見ることが出来るなんて調停者でも正式に就任する一度だけだぞ」
「手抜きですわね」
「いや、そうじゃないだろう」
スチルを流すぐらい、チャチャっといくらでもしても良いと思うのですが、この世界の調停者に対してその手間を惜しむなんて、わたくしからしたら手抜きにもほどがありますわ。
そう思いつつもフリティラリア様を見ると、何かを考え込むように拳を軽く握って口元に当てています。
なんでしょう?
「この件は父上に話させてもらう」
「なるほど」
確かにいくら魔人が力が上の者に絶対服従とはいえ、婚約ともなればやはり多少なりとも手続きがあるのかもしれません。
わたくしも、このプロポーズを受けていただきましたらすぐさまお爺様にご報告するつもりでしたもの。