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異母妹は存在しません3

 喪中につき誕生日は遺伝子上の父親の葬儀の準備に明け暮れ、誕生日の翌日に葬儀を執り行う事となりました。

 あれでも一応次期エッシャル女大公代理でございましたので、参列者も多くいらっしゃいまして、わたくしはその対応に追われつつも『お呼びでない客』が余計な事をしないように見ておりました。

 貴族に紛れて高級品の黒いドレスを着て目元をハンカチで押さえながら今は大人しくしておりますが、そのままおかえりいただきたいものですわ。

 と、思っておりましたのに、棺に献花する際にワンワンと泣いて縋りつき、「私がもっと止めていれば」とか「一人にしないで」とか「大好き、愛してる」とか「これからもお父様の愛を忘れない」とか「見守っていてね」とか「どんなことがあっても負けない」とか「もう一人っきりになっちゃうのね」とか言っておりますけれど、後ろが詰まっているのでそういうのは後にして欲しいですわ。

 周囲にいらっしゃる方々も呆れた視線を向けておりますわよ。

 ああ、一部の方は同情的な視線を向けておりますわね。

 高級なドレスを着ている上に棺の中に居る遺伝子上の父親に向かってお父様なんて言っておりますので、我がエッシャル大公家に関りがある、あえて言うのであれば娘だと思う方が少なからずいるのでしょう。

 喪主であるわたくしは棺の横でエッシャル大公女として挨拶をしておりますので、姉妹だと思うのでしょうが、本当に姉妹なのでしたら今まさに泣き縋っている娘がわたくしの横に並んでいるべきだとご理解なさるべきですわ。

 いい加減に大声で泣きわめくのをやめていただきたいと思っていると、ようやく棺から離れまして涙でぐちゃぐちゃになった顔のままわたくしの前にやってきました。


「お姉様、ですよね。初めまして、スノーフレークです。これからは二人っきりの家族として――」

「わたくしに妹などおりませんわ」


 言葉を遮る形できっぱり言うと、驚いたように涙を止めて信じられないというような目で見つめられてしまいました。


「どうしてそんな事を言うんですか? やっぱり、私が愛人の娘だから認めてくれないんですか? でも、お父様もお母様も亡くなってしまって、私にはお姉様しかいないんです」

「我がエッシャル大公家の別邸に父が居候させていた娘がいるのは存じておりますが、元娼婦の愛人が産んだ娘を妹と認めるなど、わたくしには出来かねますわ。そもそも、愛人とその娘の分際で我がエッシャル大公家の予算を食いつぶしておりましたのに、よくもそのように厚かましく堂々としていることが出来ますわね」

「そんな! 私はお父様の娘です! 家族なんだから一緒に暮らすことはなにもおかしくありません!」

「そうですか。わたくしも貴女方の家族ごっこを止めたことはございませんでしょう? 働きもしないのに毎月予算が足りないなどと喚いていたようですが、そのドレスも我が家の予算を使って仕立てたのでしょう?」

「お姉様がもっと私達に気を使ってくれれば全部解決するってお父様もお母様も言っていました」

「貴女のご両親にも言いましたが、なぜ我が大公家の別邸に居候している者に気を使わなくてはいけませんの?」

「だって、家族なんですよ」

「お話が繰り返しておりますわね。お父様は貴女に贅沢はさせていたようですけれども教育は施さなかったのでしょうか?」

「なっ」


 図星なのか、わたくしの言葉にヒロイン、スノーフレークさんが顔を赤くしました。


「そうそう、わかっているとは思いますけれどもお父様がお亡くなりになりましたので貴女は大公家の別邸から出て行っていただきますわ」

「どうしてですか!」

「逆に、どうして出て行かなくていいと思っていらっしゃいますの? 使用人として雇っていただきたいと思っているのでしたら下女として雇う事を考えないこともございませんけれども」

「私が下女なんてっ」

「あと、不必要なドレスや装飾品も回収させていただきますわね。平民には不要なものでございますもの」

「ひどい! お姉様には血も涙もないんですか!?」

「厚顔無恥よりはましだとは思いますが、わたくしだって非人道ではございませんのでお父様の自称娘にはお見舞金として住むための家とそれなりのお金はお渡ししますわ。孤児院に身を寄せることにならなくてよかったですわね」

「家? だったら今の家でいいじゃないですか」

「エッシャル大公家に何の関係もない貴女をなぜ別邸とはいえ我が家に住まわせなければいけませんの? 未だにはき違えているようですけれども、貴女にはエッシャル大公家の血は一滴も流れておりませんの。本来なら身一つで追い出されてもおかしくございませんのに住家と見舞金を差し上げるのですから感謝していただきたいぐらいですわ」


 わたくしの言葉にスノーフレークさんは「ひどい」と大声を出してしゃがみ込みましたが、迷惑なので第一騎士団の方に命じてご退場いただきました。

 はあ、『花と星の乙女』ではヒロインの人となりや人生の背景はあまり描写されませんでしたが、現実ですと面倒極まりないですわね。

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