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異母妹は存在しません1

 月日は過ぎていき、わたくしが十五歳の誕生日を迎える二日前にもたらされた訃報に、思わずわたくしの機嫌が下がりに下がったのは当たり前でございますわよね。

 『花と星の乙女』の開始時にヒロインである異母妹の両親が亡くなっている、すなわちわたくしの遺伝子上の父親が亡くなっていることは存じ上げておりましたが、よりにもよってわたくしの誕生日の二日前だなんて誰が予想出来ましょうか。

 当たり前ですが王族としては小規模ではあったものの開催予定だった誕生日パーティーは中止となりまして、わたくしは現在進行形でご参加予定の皆様にパーティー中止のお手紙をしたためております。

 これがもし病気でお亡くなりになったというのであれば、事前に何かしらの対策もとることが出来たのですが、死亡の原因が馬車で王都の外に遊びに行って賊に襲われたというものなのですから、この行き場のない怒りは何処にぶつければよろしいのでしょうか。

 調べたところによれば、相変わらずお渡ししている予算を食いつぶしているようでございまして、本来なら一緒に行くはずだったけれども丁度具合が悪くなってしまった娘を置いて二人だけでの一週間前後の旅行の最中というのですから、頭が痛いですわ。

 旅程を確認いたしましたら、どうやら返事の無かったわたくしの誕生日パーティーと完全に日程が被っておりまして、遺伝子上の父親はどちらにせよわたくしの誕生日パーティーには出席するつもりが無かったようでございます。

 そもそも、一応送っていた誕生日パーティーの案内をちゃんと見ているかも怪しいですわね。

 お金の無心をするとき以外、社交界に顔を出さないようでございますし、そのたびに遠回しに苦情を言われるわたくしの心労をいたわって欲しい物ですわ。


「ロジー、そろそろ寝ないか?」

「フィラ様は先に寝ていらっしゃっていいですわよ。わたくしはあと五通ほどパーティー中止のお手紙を書いた後にゆっくりとお風呂を頂いてから眠りますわ」

「なるほど、昨日もそう言って我と風呂に入ってはくれなかったな」

「だからといってわたくしがベッドに入った瞬間抱き込むのもいかがなものかと思いますの」


 昨夜は本当に驚いてしまいましたわ。

 起きていらっしゃるとは気が付いておりましたけれども、いきなり抱き込むようになさってきたので、ついうっかり反撃してしまいましたもの。

 軽く頭がはじけ飛びましたけれどもすぐに再生しておきましたのでフィラ様的には一瞬意識が飛んだ程度の認識のはずですわ。

 魔人ですし、頭の一つや二つが吹き飛んだぐらいではお亡くなりにならないのはいいですわね。

 以前も随分ひどいことを言われてしまって軽く五体を吹き飛ばしまして、魔国のフィラ様の部屋に放置して、朝になったら再生されるように世界樹でタイマーをセットした上でフィラ様が起きるまで誰も部屋に入らないようにと魔王陛下にお願いしたこともございますわ。

 まったく、胸を大きくしたいのならフィラ様のお母様に訊いてもいいなんて、将来のわたくしの姿のどこに不満があるのでしょう。

 大きすぎず小さすぎないジャストフィットの胸の良さがわからないなんて、しかもそれについて未来の義母に相談するなんて常識的に考えてわたくしに対して失礼極まりないですわ。


「いきなりでなければいいのか?」

「一緒に眠りたいのでしたら適当に本でも読んで時間をつぶしておいてくださいませ。わたくしは忙しいので構っている暇はございませんの」

「わかった」


 わたくしに言われた通りに大人しく部屋のソファーに座って適当に積まれている本を手に取った気配を感じ、わたくしも手紙に再度集中しようとしたところで背後から発せられた奇声に思わず手の中にある特別製のガラスペンを折ってしまいそうになりましたわ。


「なんですの。そのような奇声を出すだなんて、フィラ様はわたくしの邪魔をなさりたいのですか? そうなのでしたら今夜は魔国の自室にてお眠りあそばせ」

「すまない、だがこの本を無造作に置く方も悪いだろう」

「その本がどうかしまして?」

「表紙を見た瞬間、全身の肌の毛穴から何かおぞましいものが入り込んでくるような感覚がしたぞ」

「まあ! フィラ様の肌にも毛穴がございますのね!」


 ムダ毛一つないように見えますのに、驚きの告白ですわ。


「驚くところはそこなのか!? それで、この本は何だ」


 そう言って床に落とした本を指さしましたので、本が傷むと眉をしかめますとオニキスが無言で本を回収してテーブルの上に戻してくれました。


「恋愛小説ですわね」

「こんな禍々しい恋愛小説があってたまるか!」

「面白い内容でしてよ? 虚無と混沌の一方的な恋愛感情やそれに伴い生まれた増悪から誕生した物であったり、それを見守る時の語りであったり」

「作り話だとしても題材が悪すぎるだろう。筆者はっいや、いい、言うな、聞きたくないっ」


 フィラ様は全力で本から距離を取って息を整えるように深呼吸を何度かしてから壁に手を突いてうなだれてしまいました。

 本当に、面白い内容なのですけれども、フィラ様のお好みの内容ではないのかもしれませんわね。

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