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最推しが尊い8

「ブルーローズ嬢、来ているよ」

「そうですわね」


 式典が終わり、歓談会に移ったところ真っ先にスピラエ様がいらっしゃいまして、先ほどのこともあり周囲の視線を感じながらわたくしは特別な関係など何もないというように平然と声をかけます。


「スピラエ様、この度は魔法師団第三師団長ご就任おめでとうございます」

「ありがとうございます。我が主の為、魔法師団第三師団は今まで以上に活躍してみせましょう」


 我が主、というところで意味深にわたくしを見るのをやめていただきたいものですわね。

 隣にいるクロトン様が面白そうに視線を投げてきておりますわ。


「ブライモン卿はブルーローズ嬢の魔法の家庭教師をしていたのだったな」

「私のようなものでは分不相応でございましたが、ありがたいことにホスタ殿下がおっしゃる通りブルーローズ様とそのご友人の魔法の家庭教師を務めさせていただいておりました」

「親しくしていると言う事か?」


 ホスタ様、面倒くさくなりそうなことを口になさらないでいただきたいものですわね。

 空気の読めない男は価値が下がりましてよ。


「お名前で呼ぶことをお許しいただく程度には」

「そうか。貴殿は弟のバーベナが成人した暁には正式に家督相続権を放棄すると聞く。先ほどの事といい、何ゆえにそこまで魔法師団にこだわるのだ?」

「お守りすべきものがあるからでございます」

「王族を守るのは近衛騎士の役目であるが、貴殿は近衛騎士の領分を侵す気か?」

「まさか。ただ、お守りする方法は一つではないというまでにございます」


 ホスタ様、いい加減空気を読んでいただけるとうれしいのですけれどもね。

 スピラエ様は読んでいらっしゃいますのにこの場でズケズケとそのような質問をなさるなんて。


「ホスタ、ブライモン卿の言っている言葉は何も間違ってはいないよ。それに、ブライモン卿が誰に忠誠を誓っていようとも、父様がそれを認めたうえで第三師団長への就任を認めたのだから、私達が口を出すべき問題ではない」

「兄上……。わかりました」


 クロトン様ってば遅いですわ。

 そう思って視線を向ければ、「なんのことかな?」とでも言いたげな視線を返されてしまいましたわ。


「では、私は他の方にご挨拶に参りますので失礼いたします」


 そう言って離れていったスピラエ様をクロトン様が涼しい顔をなさって見送りましたが目が笑っていませんわよ。


「随分な挑戦状だね。相手にとって不足無し、と言いたいところかな」


 そうですわね。わたくしにだけ挨拶をなさってホスタ様とクロトン様にはご挨拶なさいませんでしたものね。

 クロトン様に至っては会話すらしておりませんもの。

 客観的に見ても思いっきり喧嘩を売っておりますわよね。わたくしの婚約事情を知らないかたから見れば、わたくしは婚約者候補を『見定めている』状態なのですもの。

 でも、わたくしも二次性徴を迎えフィラ様が番だと判明いたしましたので、他の殿方に惹かれると言う事はないのですよね。

 番だと判明してからのフィラ様の溺愛ぶりは凄まじいものがございますが、今思えば兆候はありましたわよね。

 てっきり無自覚の幼女趣味だからだと思っていたのですが、フィラ様は一度わたくしが成長した姿を披露した際にお気づきになっていたそうで、はっきりと番だと判明した際にそれを聞かされ、わたくしの機嫌が悪かったこともありその日の夜は寝室から追い出しましたわ。

 わたくしを混乱させないための気遣いだと言い訳をされましたが、どうせわかる事なのですから初めから言っていただきたかったですわよね。

 本気でフィラ様が幼女趣味なのではないかと心配していたわたくしの時間を返していただきたいですわ。


「ブライモン卿は年が離れすぎている」

「ホスタ、そんな事を言ったら王族の男は若い伴侶を求めるなって言う事になるよ」

「そういうわけじゃ……。わたしはただブライモン卿はブルーローズ嬢に相応しくないのではないかと」


 むっとしたように言うホスタ様に、まだどこか子供っぽさが抜けきらないと思いつつも、これでも大分成長したと思ってしまいますわ。

 とりあえず、以前のように子供特有の自分の中の正義感を振りかざすことはなくなりましたし、周囲の言う事をちゃんと聞くようになりましたし、一方の意見だけを聞かず双方と第三者の意見を聞き検証することが大切なのだと言う事を学んでくださいました。


「ブルーローズ嬢、彼は早速ご婦人に囲まれているようだけど、いいのかい?」

「構いませんわ。スピラエ様が優秀で魅力に溢れる人物であることはよく存じております。むしろ今までご婚約者がいらっしゃらないことの方が不思議でございましょう。別にご婚約を斡旋するつもりもございませんが、かといってご婚約なさるのでしたら心の底から応援致しますわ」

「はは、それって私達にも適応するよね」

「当たり前ですわ」

「ブルーローズ嬢、わたしは――」

「やあ、ブルーローズ嬢。久しぶりに会ったけれど相変わらず可愛らしい、いや、ほころび始める薔薇のように美しいというべきかな?」

「ネリネ様、御機嫌よう。集まってくる貴族避けにわたくしを利用するのはおやめになっていただきたいと申し上げておりますでしょう? 貴族の十人や二十人、皇族なら華麗にさばいていただきたいものでございます」

「俺は誠実だからね」


 笑顔でウインクなさるネリネ様に呆れた視線を向けた後、わたくしはご婦人に囲まれたスピラエ様に視線を向けご婦人方の娘や親類のご令嬢を結婚相手として薦められているであろう姿に密やかに応援をいたしました。

 それにしても、やっぱり魔法師団長の礼装姿はいいですわね。

 尊みが深いですわ。

 もちろん、戦闘時の正装も尊いのですが、普段見る機会が少ない姿というのはそれだけで眼福というものにございます。

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