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最推しが尊い3

 スピラエ様による初めての魔法の授業と申しますか、楽しいお話が終わりまして一足早くベロニカ様がお帰りになるとわたくしはスピラエ様とこの場に残されてしまいました。

 本来ならベロニカ様とご一緒にラピスラズリに付き添われて離宮からお帰りになるはずだったのですが、どうにもこの離宮に興味が出てしまったと言う事で少々ご案内することになったのでございます。

 ベロニカ様も「その気持ちわかります!」と言って何度も頷いていらっしゃいましたわ。

 それにしても、ご案内すると申しましてもどちらをご案内すればよろしいのでしょうか?

 庭園には花壇などもございますが、小川もございますし、ちょっとした森もございますので迷ってしまいますわね。


「どうかしましたか?」

「いえ、一口に庭園をご案内すると申しましても何分それなりの広さがございますので、どちらにご案内すべきかと考えておりましたの」

「なるほど。この離宮には随分と空間拡張の魔法が施されているようですからね。本当に素晴らしい技巧です。ぜひ施した方にご教授いただきたいぐらいですよ」

「まあ、ほほほ。わたくしや使用人は慣れておりますので迷うという事はございませんが、慣れないと庭園内や温室などで迷子になってしまいますので、くれぐれもわたくしや使用人が傍に居ない時は『道』から遠くに行かないようになさってくださいませね」

「その方がよさそうですね。これだけ空間魔法が施されていればどこに迷い込んでしまうかわかったものではありませんので」


 流石はスピラエ様ですわね。ご理解が早くて助かりますわ。

 けれども本当に困ってしまいますわね。管理を任せているアメジストの腕がよいのでどこも見栄えがしますし、何をお気に召すかは人それぞれでございますわよね。

 『花と星の乙女』でのスピラエ様は風鈴花を好んで育てていらっしゃいましたけれど、今の時点でもご興味はございますかしら。


「スピラエ様は何かお好きな植物はございまして?」

「そうですね、お恥ずかしながらそう言う方面にはあまり詳しくないのですよ。学園時代も魔法の研究に忙しくしていましたので」

「そうですの。ではなにかご興味のある事は?」

「興味ですか? そうですね、今研究しているのは音魔法による魔物との遭遇率の増減ですが、興味とは少し違うかもしれませんね」

「なるほど」


 少し違うとはおっしゃっていますが、研究なさっていると言う事は興味があると言う事でしょうし、音魔法に関係すると申しますか、音に関係するとなれば森の中にある泉ですわね。


「ご案内する場所が決まりましたわ」


 わたくしはそう言いますとすっと椅子を立ちあがってにっこりと微笑みました。

 本日は天気がいい事もございましてお勉強をしていたのは東屋でございましたので、日傘を手に取って東屋を出ますと、そのまま歩いていきます。

 背後からスピラエ様が付いていらっしゃる気配がいたしますのでそのまま迷いなく『道』を外れてしばらく歩きますと、いつの間にか木々に囲まれた森に入り込みました。


「これは……。なるほど、確かに迷い込んでしまったら危険ですね」

「ええ、ですので離れてはいけませんわよ」


 クスリと笑って歩き続けて行けば音がだんだんと無くなっていき、コポコポと水が湧き上がる音だけが聞こえてくるようになりました。

 木々が生い茂っている中、ぽっかりと開いた空間に見えてくるのは直径十メートルほどの泉でございます。

 泉は透明でありながら底が見えず、けれどもその中心からコポコポと常に新鮮な水が湧き出ておりまして、この泉の水はポーションや魔道具の作成に使用したりも致しますのよ。


「これは憩いの泉と申しまして、この泉の水を使用して作成するポーションや魔道具に興奮状態や混乱状態や緊張状態の緩和や解除効果を付加することが出来ますの。それに、この泉の音を聞くだけでも同じ効果を得ることが出来ますわ」

「それはすごいですね」

「魔物との遭遇率の増減の研究とはまた違った物ではございますが、このような物も面白いと思いますわ」

「ええ」


 わたくしの背後から聞こえてくる声が、今までよりも幾分和らいだものに聞こえるのはきっとこの泉の効果でございましょう。


「ところで、スピラエ様はちゃんと眠っていらっしゃいますか?」

「え?」

「第三師団のように最前線でご活躍なさる方々は、戦いの地より戻っていらっしゃっても心身ともに緊張状態が続き、あまり深い眠りにつくことが出来ないともお伺いしておりますので」

「ご存じでしたか。おっしゃる通り未熟者故、切り替えがうまくいかずにあまり眠れていないのです」

「未熟者だなんて思いませんわ。それだけ全力で戦っていらっしゃると言う事ですもの」


 けれども、最推しが睡眠不足で目の下にクマを作ってしまうかもしれないという状況はあまり嬉しくないのも事実ですので、のちほど安眠効果のある魔道具を贈らせていただきましょう。

 スピラエ様個人にではなく、第三師団の方々全員に贈るのであれば特別扱いと思われる事も無いでしょうし、問題はありませんわね。

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