婚約いたしましょう16
魔国で一晩宿泊してから魔王陛下にご挨拶をいたしまして、ファンタリア王国の離宮に帰って来て、早速婚約の契約書を作成することに致しました。
契約内容を記載するスクロールには世界樹の葉を使って、何をしてもスクロール自体を損傷出来ないようにして、契約内容やサインをするインクには世界樹の樹液を使って何があっても劣化しないようにいたしましょうね。
スクロールもインクも今回は材料が特殊ですが作成自体はさして難しいものではございませんのでわたくしにとっては同時に作ることが可能ですわ。
わたくしの背後ではわたくしが錬金術でアイテムを作成するのを見つつも、先に契約内容を確認していただくために書き出したものを熟読していらっしゃるフリティラリア様がいらっしゃいます。
そんなに穴が開くほど熟読しなくても、無茶なことは書いていないと思うのですが、わたくしってそんなに信用が無いのでしょうか? 婚約者としてそれはそれで悲しいですわね。
「ちょっといいか?」
「はい、なんでしょうか?」
「この、契約対象者以外へ性的目的を前提とした接触をした場合、接触者に対して危害が即時下されるという部分だが」
「何か問題がありまして?」
「具体的に危害とは何だ?」
「さあ? 少なくとも体が弾かれるぐらいはあるでしょうけれど、いきなり死亡するという事はないと思いますわ」
「我は立派な成人男性なのだが、禁欲しろと?」
「発情を抑えるお薬を作成いたしましょうか?」
「…………いや、いい。それとこの、我の魔国での仕事を考慮し定期的な婚約者との交流は最低限行うが常日頃行動を共にする必要が無いというのは?」
「何か問題がありまして? わたくしの監視をするのだとしてもフリティラリア様には他にもお仕事がございますでしょう? 婚約したからといっていきなり束縛するような非常識な婚約者になるつもりはございませんわ。わたくしとしては三食昼寝付きで常にこちらの離宮に滞在していただいても構わないのですが、魔国の状況を考えますとそれも難しそうでしたのでそのようにしましたの」
「では、婚約者として品位を損なわない行動を心がけ、お互いの行動について品位を失わない物であれば口出しはしないというものは?」
「同じ理由ですわね。別に束縛するつもりもございませんし、お互いにある程度の自由を確保した方が円満な関係を築くことが出来ると思いますの。かといって、品位を損なうような行動はお互いの為になりませんし、そう判断できる行動であった場合は口出しをする権利が発生すると思うのは常識ですわよね」
「結婚契約への変更に関しては双方合意のもと新たに契約を結び直すという部分については?」
「いけませんか? 婚約と結婚では契約内容も変わるのは当たり前ですので、内容を見直すのは当然かと思いますの。長く婚約者として過ごしていればお互いに改めるべきところも判明すると思いますし」
「では最後に、婚約者との性器の挿入を伴う性交渉はブルーローズミアアステリ=アンデルフ=ファンタリア=エッシャルが十六歳の誕生日を迎えた後とする、というのは?」
「まさかとは思いますがそれ以前にわたくしに手を出すおつもりですの?」
「そこじゃない」
「別にこの国の習慣として十六歳で成人とみなされますので結婚自体は十六歳から出来ますけれど、昨今の王侯貴族は学園に通って卒業してから結婚をするのが主流ですので、結婚自体は卒業を待っていただければと思っているのですが、成長して魅力的になったわたくしを前にいつまでもフリティラリア様に我慢を強いるのはわたくしも申し訳なく思いますのでそのようにしましたのよ」
「我が君に対して性的魅力を感じないという可能性は」
「なるほど、フリティラリア様が性的刺激を感じるのは随分特殊な条件だと」
「どうしてそうなるんだ」
「先日言った通り、成長したわたくしは魅力的な美少女でございますもの。悪役令嬢であることを差し引いても二次創作界隈でとても人気でございましたのよ」
「はあ、まあ多少疑問に思う部分もあるがそこまで非常識な内容ではないし構わないだろう。この内容で間違いが無ければ婚約契約書にサインをする」
「わかりましたわ」
ふむ、お互いに浮気をさせないという点を修正されると思ったのですが黙認されましたわね。これ、性的目的を前提とした接触でなければいくらでも浮気が出来るのですが、気にならないというのでしょうか?
やはり数十年程度なら我慢出来ると思っているのかもしれませんわ。
数千年生きる魔人にとっては確かに瞬きの間かもしれませんが、不老の霊薬、作れるのですよね。
それに正直なところ、世界樹にユーザーデーターを抹消されない限りわたくしが死亡するという可能性も無いと思いますの。
だってわたくし強いのですもの。あの食事に混ぜられた程度の毒でしたらちょっとしたスパイス感覚ですので解毒の必要もありませんわ。
我ながらチートですわねぇ。転生特典って素晴らしいですわ。




