表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/119

婚約いたしましょう12

「嫁姑問題でございますか?」

「ええ、前世では体験できませんでしたのでどのようなものが待ち受けているのかと期待していたのですが、放置しかされないなんて、とても残念でなりませんわ」


 こちらの客室に置いて行かれて数時間、婚約契約の内容を考えるのもひと段落したところでのどの渇きを覚えたので、わたくしのメイドを呼び出しましてお茶を淹れてもらいましたけれども、例えばメイドは用意しつつも提供するお茶や食べ物に毒を混ぜて晩餐会で醜態を披露させるとか、ご本人が乗り込んできて自分の息子にはわたくしのような小娘はふさわしくないとネチネチ嫌味を言うとか、見目麗しいご令嬢達を引きつれて来て息子といつも仲良くしていてとわたくしに嫉妬心を抱かせるとか、無理難題を言いつけて来て出来ないのかと馬鹿にしてくるとか、そう言った面白そうなことを期待しておりましたのにまさかの放置なんてあんまりですわ。


「主様、通常の七歳児のご令嬢は一人で部屋に放置されたら心底困り果ててしまうのが普通なのではございませんか?」

「そうですの?」

「恐らくは」

「なるほど、この放置にも考えがあっての事でしたのね。確かに、七歳児が遊び道具も無く興味を引かれる本も無くただ部屋の中に放置されるのは困ってしまうかもしれませんが、わたくしのように想像力豊かな子供には何の意味もないと思いませんこと? 多少喉の渇きを覚えた時に困ってしまう程度ですわ」


 わたくしの言葉にメイドのオニキスが無表情ながらも呆れたように息を吐き出しました。

 前世の記憶を取り戻してわたくしが真っ先に行ったことは置かれた環境の確認で、転生特典である施設や道具、家財、人材に不具合が発生していないことを確認して、七歳から生活の拠点にする離宮で働く予定だった使用人を全て他の部署に異動させて、わたくしに隷属している人材だけで離宮の運用を開始いたしました。

 もちろんわたくしに忠誠を捧げてくれている使用人もいますけれども、様々な事を考慮すると通常の使用人がわたくしに仕えるのは難しいのです。

 エッシャル大公女の為に用意された離宮は完全に前世で惜しみなく課金をして作り上げた拠点そのものでございますので、下手に踏み入れると文字通り命に関わりますもの。

 ですから昏睡状態から目覚めて離宮に引っ越しをする際に、お爺様に使用人に関してはわたくしに采配をさせていただけるようお願いをいたしまして、わたくしが選んだ(という事にした)六人の使用人で運用しております。

 お爺様には少なすぎると言われましたが、体調がすぐれない中あまり人が多いと気が滅入ってしまうと言って押し切りましたわ。

 離宮で働く使用人はわたくしに隷属している宝石の精霊でございまして、家事はもちろんの事、事務仕事も戦闘もこなすことが出来るように長い時間をかけて育て上げた人材でございます。

 人族でも亜人でも魔人でもなく宝石の精霊ですので、本体である宝石を持ち歩いているわたくしが呼び出せばいつでもどこでも呼び寄せることが出来ますし、依り代にしている本体から切り出した宝石を離宮に置いてありますので離宮に戻る事もすぐに出来ますのよ。


「それにしても、気合を入れたドレスはフリティラリア様のご趣味ではないそうですの。抱き心地が悪いと言われてしまいましたわ」

「元々が誕生日パーティーで椅子に座ってニコニコとお祝いの言葉を受けるだけのお人形に徹する用に作られたもので動き回ることを想定していないドレスでございますし、抱き上げるなどもってのほかでございます」

「多少の移動は想定してありますわよ」

「ええ、歩いた際に揺れるスカート部分は主様の愛くるしさと相まってまさに大輪の青薔薇そのものにございます」


 転生してから知ったのですけれども、わたくしの使用人達はわたくしへの忠誠というか信奉がちょっと過剰な気も致しますわ。

 わたくしが愛らしいのは事実ですけれどもね。

 お茶を頂いていると客室の扉が三回ノックされましたので、オニキスが返事をいたしますとフリティラリア様がいらっしゃったようですので部屋の中に入っていただきました。

 身支度をなさったのか先ほどまでのお洋服とは違って正装でございますわ。


「……君の離宮で見たメイドだな」

「オニキスですわ。お茶を飲みたかったので呼び出しましたの」

「母上がメイドを手配したはずだが」

「この部屋を見てそう思うのでしたら、観察眼と状況把握という項目を辞書で引いたうえで勉強し直すことをお勧めいたしますわ」


 わたくしの言葉に客室の中を確認したフリティラリア様は深くため息を吐き出しました。


「すまない。普段はこんな稚拙な事をなさる方ではないのだが、ここの所父上が政務にかかりきりで構ってくれずにストレスが溜まっているのだろう」

「いえ、嫁姑問題はむしろ歓迎なのですが、どうせやるならもう少し手ごたえのある方法を選んでいただきたいものですわ」


 この未消化な気分は晩餐会でぜひとも発散させていただきたいものですわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ