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これもまたお約束12(スノーフレーク)

 上半身を裸にして、下穿きを寛げたホスタの汚れた下半身を見て言われた通りに『動物』の血を少し混ぜておく。


「別に、既成事実っていうのを作っても良かったんですよ?」

「だめだよ。彼を脅す材料にはいいかもしれないけど、いざというときに不利になってしまう可能性があるからね。穢れていない体でいる方が便利なこともあるんだ」

「そういうものなんですか」


 すっかり乱されてぐちゃぐちゃになったワンピースを適当に纏いながら、面白そうに私の事を眺めてくるダチュラ様に生返事をした。

 ホスタのと私のが合わさった液体がしっかりホスタを汚していて、私の体にはダチュラ様がつけた跡がたくさん残ってる。

 これがあればホスタは私をもう無視できなくなるってダチュラ様が言ったから、これで攻略がうまくいくんだったら他の奴にもこの手が使えるんじゃないかしら。

 この方法なら私は悪くないし、責められる事も無い。

 私はダチュラ様に従っただけだもん。


「僕のスノーフレーク。そろそろホスタ殿下がお目覚めだよ。彼の体の上にその姿でまたがって……そう、いい子だ。僕は一度部屋を出るよ」


 汚れるから、ホスタの体の上に乗りたくはないんだけど仕方がないわよね。

 状況証拠っていうのを作らないといけないんだもん。

 そうしていると小さい呻き声を上げてホスタが眉間にしわを寄せながら目を覚ます。

 かすれた声で「なにが」と言っているので、口の端を持ち上げてホスタ様のお腹に手をのせた。


「ホスタ様。おはようございます」

「……え? エウヘニア嬢? どう、して?」

「どうしてって、ホスタ様が強引に私を襲ったんですよ」

「なっ、は?」


 青褪めるホスタが私の体を見て上半身を起こして、汚れた自分の体なんかを見てさらに顔色を悪くした。


「寝ていると思ってブランケットをかけようと思っただけなのに、腕をつかんで強引に押し倒してきて、初めてだったのに……痛いって言ってもやめてくれなかったじゃないですか」

「そんなバカなっ、そんなはずはっ」

「でも、ほら……証拠がこんなに」


 私は自分の体をなぞったり、血で汚れた場所を見せつけるようにする。

 その瞬間、扉を開けてダチュラ様が入ってきた。


「これは……。僕が出かけている間に何があったと、いえ、この状況は……ホスタ殿下、どういうことです?」

「しらなっ、わたしはなにもしていない!」

「スノーフレーク、どういうことだい?」

「ホスタ様が強引に……。私、やめてって言ったのに」

「ああ、僕のスノーフレーク、可哀想に。ホスタ殿下、このことが皆様に知られてしまったらどうなってしまうか……おわかりですよね?」


 ダチュラ様がそう言った瞬間、ホスタが私を突き飛ばした。


「キャアッ」


 音を立ててソファーから床に落ちて、ぶつけたところが痛くて思わず涙がこみあげてくる。


「ひどい、ひどいわホスタ様。こんな事をするなんてっ」


 そう言ってホスタを見上げると、ホスタは青ざめた顔のまま私の体を見下ろしている。


「ぁ……わたし、はっ」

「ホスタ殿下。王族として罪なき平民を手籠めにしたなんて醜聞が広まってしまったら、エッシャル女大公様の婚約者どころの話ではなくなってしまいますね」


 ここであの悪役令嬢の名前を出すの?

 気分が悪くなるんだけど。

 でも、ダチュラ様の言葉にホスタはビクリと震えた。


「ホスタ殿下、こうなってしまいましたしいっそのことこの状況を利用してはどうでしょう?」

「利用?」

「押して駄目なら引いてみろ、という言葉があります。今までエッシャル女大公様を気にかけていたホスタ殿下がそっけない態度をとって他の女性を優先するようになれば、あのエッシャル女大公様もホスタ殿下の存在価値に気が付くかもしれません」

「しかし……そんなことをしても」

「物は試しともいいますよ。駄目だったらまた別の方法を考えましょう? あと、そういう態度を取りながらもちゃんとエッシャル女大公様をフォローするのも忘れてはいけませんよ? やりすぎは禁物です」

「しかし」

「では、今起きていることをありのまま皆様にご報告しましょうか?」

「やめてくれ!」


 ホスタが叫ぶ。


「では、今後の方針は決まりましたね。スノーフレークも構わないね?」

「えっと、よくわからないですけどホスタ様は私の恋人になるっていう事ですよね?」

「そうだよ。これからは誰に文句を言われる事なくホスタ殿下のお傍に居る事が出来るよ。君が望むままに」

「嬉しい! でもダチュラ様、バーベナ様とカクタス様も私の恋人にしたいです」

「愛する僕のスノーフレーク。君のわがままを聞いてあげたいけれど、僕と一緒に居る時間が減ってしまったら僕は悲しいよ。僕がこの世界で一番君を愛していると忘れないで?」

「もちろんです」

「ああ、いいこだねスノーフレーク。さあ、その体を綺麗にしようか」


 そうして用意していた温かいお湯の入った盥とタオルを使って体を拭いてもらいながら、ホスタを見る。

 のろのろと自分で汚れた体を拭いているのを見て思わず笑いそうになった。

 悪役令嬢が邪魔しても、ヒロインである私には強力な味方が出来てちゃんと狙った相手は攻略出来るんだわ。

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