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これもまたお約束10(ネリネ)

 あれ、生きているかな?

 ブルーローズ嬢が容赦ないのはいつもの事だけど、今日もいい切れ味だなぁ。

 というかさ、フリティラリア様がブルーローズ嬢の腰に手を回して離さない時点で普通に近づきたくないし、ホスタ殿が話しかけに行ってもフリティラリア様は一言も話してないって気が付こうよ。

 ブルーローズ嬢を相手にしているから話しかけても大丈夫とか、魔人相手に結構アウトな考えだけどなぁ。


「ロジー、ここはうるさい」

「それもそうですわね。ではホスタ様、常日頃貴方が口になさる王族としてのおふるまいをどうぞなさってくださいませね」


 そう言ってフリティラリア様にエスコートされたブルーローズ嬢が――


「こっちに来たね」

「逃げたい」


 目の前であの二人のナチュラルいちゃつきを見せつけられるとか、何その拷問。

 そもそも今回だって俺は参加したくなかったのに、クロトン殿の一人で逃げるなオーラが怖かったんだよなぁ。

 分からないでもないけど。

 こんな面倒な公務、俺が留学中の身とはいえ巻き込める物なら巻き込みたいよな。


「お前たちも参加しているのだな」

「はいフリティラリア様、父上の命令ですので」

「俺はクロトン殿に巻き込まれてここに居ます」

「そうか」


 フリティラリア様はそう言って鷹揚に頷くと体を傾けてブルーローズ嬢の耳元で何かを囁いた。

 ……………あ、やっばいものを見てしまった。

 いや、隠す気が無いからこのデザインなのか? 勘弁してくれ。

 ちらっと隣のクロトン殿を見ると、同じく気が付いたようでそっと視線を外している。

 いやぁ、レースが薄いから鬱血痕がよくわかるっていうか、布が無いところにもあるし、もう確信犯決定かぁ。

 ホスタ殿、これに気が付かなかったのか? 嘘だろ?

 っていうかいつまで内緒話を目の前でするつもりなんだろう。

 用事がないのなら見逃して欲しい。

 でもこっちから逃げたいとも言えないしなぁ。

 ……でも、言ってもいい気がする。

 俺達無視して目の前で本格的にいちゃつき始めているし、言ってもいい気がする。

 むしろ逃げたい。


「フィラ様、折角のドレスなのですからリボンを崩さないでくださいませ」

「このぐらいでは崩れないだろう。しかし、髪を結い上げるから背中は駄目だとオニキスに言われたが、少しは跡をつけても良かったのではないか?」

「前面と横に跡をつけて叱られたのにたりませんの?」

「ふむ、オニキスを怒らせるのは得策ではないか」

「オニキスは怒ったりいたしませんわ。叱りますけれども」

「なるほど、それもそうだ。しかし、こんなにしっかりと髪を結い上げなくてもよかったのではないか? 似合っているが、これでは解くときに苦労しそうだ」

「髪が痛まないようにしてくださいませね」


 そう言ってクスクス笑い合う二人を見て、俺とクロトン様の心は一つになった。

 逃げよう。


「ブルーローズ嬢、俺達はホスタ殿の所に顔を出してくるよ」

「そうだね、一応間引き役だし」

「あら、そうですの? お役目とはいえ大変ですわね。今回のホスタ様の婚約者候補の絞り込みには第三妃様が随分力を入れていらっしゃるとお伺いしておりますわ。見目はよろしい方が多いようで、ホスタ様も目移りしてしまうかもしれませんわね」

「そうだといいねー」


 本当に切れ味いいなぁ。

 そう思いつつ、二人の前からクロトン様と一緒に逃亡してホスタ殿の方に(行きたくないけど)行くことにした。


 しばらくホスタ殿のサポートとかに回っていたけど、メンタル弱いな、ホスタ殿。

 いつもの無駄に前向きな所は何処に行ったんだよ。

 会場の壁際でいちゃついているブルーローズ嬢とフリティラリア様をチラチラ見ないで目の前の令嬢達の相手をしてくれ。

 というかね、いくら遮蔽物があってギリギリ見えない感じになっているけど見えるから。

 絶対にわざとだろうけど、見えているから。

 他人の婚約者候補絞り込みの夜会で体に触り合ったりキスし合ったりとか、せめて休憩室でやってくれ。

 数人の子息が顔を真っ赤にして会場から逃げ出しているからっ。

 思春期の男子って大変だな! 俺はもう今日は感情が死んだけど!


「ホスタ殿下、先日の河川整備の論文を拝見しました。大変興味深く、我が家の領地でも取り入れたいと思うのですが、詳しくお話をお聞かせいただいてもよろしいですか?」

「私は奴隷市場を摘発した時のお話が聞きたいですわ」

「闇オークションの情報は何処から入手なさいましたの? ご自身で乗り込むなんて勇気がありますよね」

「王都内を巡回する騎士を増やしたのはホスタ殿下のご提案なのですよね。各所に詰め所を配置するようご提案なさったとも聞きます」


 必死にホスタ殿の気を引こうとしているご令嬢達、もう少し頑張ってくれ。

 なんとかホスタ殿を引き留めてくれ、もう少しでこの夜会も終わると思うから。

 というか、プルメリア嬢。

 君がホスタ殿を嫌っているのはよく知っているけれども、ナチュラルにホスタ殿を無視してクロトン殿といちゃつかないでくれ。

 あからさまにクロトン殿の伴侶の座を狙っているって周囲にまき散らさないでも、もう十分に分かったから。

 この中にクロトン殿の伴侶に名乗り上げる勇者は居ないから。

 あー、プルメリア嬢がクロトン殿の伴侶になったら妃になること間違いないだろうし、妃の序列も当たり前のように第一妃に上がるんだろうな。

 この子凄まじく可愛らしい容姿で頭脳も優秀なのに性格は淡泊というか、外面『は』いいんだよな。

 しかも、この様子だと学園卒業後に即行でクロトン殿の伴侶になれるように既成事実作りそうだ。

 クロトン殿もプルメリア嬢の事は嫌っていないようだし、お互いに外堀埋めてそうで怖いな。

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