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これもまたお約束8

「つまり、ホスタの婚約者候補を絞り込む夜会にロジーと共に参加しろという事なのだな?」

「そうですわ。伯父様もそろそろわたくしとフィラ様の婚約に気が付く者が増えても構わないとおっしゃっておりますので、良い機会だと思いますの」

「我は構わぬが、我を婚約者にしていることでロジーが悪く思われるのでは?」


 フィラ様の言葉にわたくしは思わず首を傾げてしまいました。


「人族の国がどうなろうと我はどうでもいいが、この国では王族は多くの子を成すべきものだと言われているのだろう? 魔人と人族の子供は必ず魔人になる。人族の血は消えてしまう」

「それがどうかいたしまして?」

「ロジーが王族として政務をこなしているのは知っている。それが無駄になってしまうのではないかと思うのだが」

「まあ! その程度の事でわたくしの今までなしてきた事が無意味になるのでしたらそれまででございますわ。その結果この国が廃れようとも、それを選んだのはこの国の者でございますのでフィラ様がお気になさることはございません。大体、わたくしはお爺様の直系ではありますけれども伯父様の直系ではございませんの。王族とはいえわたくしの子供がもし人族で王家の色を持っていたとしても、王族として扱われるのではなく、王族の伴侶になるか、『守護』の資格持ちと結婚するか、高位貴族と結婚することになりますのよ」

「そうなのか?」

「そういうものなのでございます」


 そうでなければ王族が延々と増えていく事になりますもの。

 これに関しては暗黙の了解ではなくしっかりと国法で決められている事なのでございますわ。

 王族の血は予備も含めて増やしたい、けれども王族を無闇に増やすのは問題があるという苦肉の策なのでございましょうね。


「そうか。しかし夜会に参加となるとまたドレスが必要だな。どのような物がいいだろうか」


 考え始めるフィラ様に今回もわたくしが自分でドレスを用意する事はないのだと察してしまいました。

 別によろしいのですけれどもね。


「ダンスもございますので動ける物がよろしいですわ」

「そうか、わかった。我もいるのだし……ふむ、成人を祝うときとはまた趣向を変えるのもいいな。胸を覆っておきながら、横から手を入れれば触れる事が出来そうなデザインもいいかもしれない。だが、デコルテを出すというのも捨てがたい。いっそ薄いレースで覆うというのもありか」


 チラリズム、お好きですわね。

 紅茶を頂きながら一生懸命考えるフィラ様に自然と笑みが浮かんでしまいます。


「ところでフィラ様。こちらはもっと重要な事なのですが」

「ん? なんだ?」

「昨夜のような夜着がお気に召したのでしょうか?」

「ゲフッガフッ」

「まあ、大丈夫でして?」

「げほっ、あ、ああ……。で、なんと言った?」

「ですので、昨夜のような趣向の物がお気に召したのかと聞いておりますの。いつもですとそれなりの段階で全て脱がされますのに、昨夜はそうではございませんでしたでしょう? お気に召したのでしたら、今後はあのような趣向の物も増やしていこうかと思いまして」

「そ、うだったか?」

「ええ。随分お楽しみだったようでございますし、わたくしといたしましては男性の趣味嗜好の基準はフィラ様でございますので、今後の為にもぜひ教えていただきたいですわ」

「たっ、たまにはいいんじゃないか?」

「たまにですか。なるほど、加減が難しいのですね。わたくしもまだまだ学ぶべき事が多くていけませんわね」

「そういえば、似たようなデザインの夜着はあるが同じ物を見たことが無いような気もするな」

「基本的に使い捨てでございますわよ? お気に召していただいたデザインの物はデザインを再利用したりリメイクしたりしておりますけれども」

「………………………………ナルホド?」

「フィラ様のお好きな意匠を取り入れるのは楽しいのでこれからもがんばりますわね」

「そうか、いや、うむ。喜ぶべき、なのだろうな、うむ」


 フィラ様が微妙な顔をなさいましたけれども、以前この表情をなさった時にどうなさったのかと聞いたら照れているとおっしゃいましたので今も照れていらっしゃるのでしょうね。


「そういえば!」

「今度は何だ!?」

「世の中にはにほんぜめ? なるものの為にきくもん? を使った行為があるとフィラ様のお母様が先日教えてくださいましたわ」

「我にそのような趣味はない!」

「そうなのですか」


 また違った刺激で楽しめると教えていただいたのですが残念ですわね。

 せっかくアドバイスを頂きましたのに、今度お会いした時に謝罪しておかなくては。

 夜魔でいらっしゃるフィラ様のお母様は閨事には明るくていらっしゃるそうで、わたくしと婚約するまで特定の相手を作らず、女性と遊ぶ事もほとんどなかったフィラ様の事をそれはもう心配なさっていらっしゃったそうなのです。

 折角婚約者が出来たと思ったら人族の子供で初めこそ少々意地の悪い事をしてしまったけれども、わたくしの実力を知ってからはむしろなぜ人族なのかと残念がっていらっしゃいますわ。

 そういえば、まだ不老の霊薬の事はどなたにもお話ししておりませんけれど……まあいいでしょう、急ぐものではございませんものね。

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