表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
113/119

これもまたお約束7

「ブルーローズ嬢、一緒に座ってもいいだろうか」

「お断りですわ。そもそも、六人掛けのテーブル席にホスタ様たちが座り切れると思っていらっしゃいますの? ああ、もしかしなくてもホスタ様はバーベナ様とカクタス様からご一緒に食事を摂ることを拒否されてしまったのでしょうか? それはお気の毒でございますわね。だからと言ってわたくしがホスタ様とご一緒させていただく理由には一切なりませんけれども」

「そうか」


 そう言ってホスタ様は隣のテーブル席に座りましてバーベナ様とカクタス様といつも通りに食事を開始なさいました。

 まったく、なんだというのでしょうね。


「ホスタ殿下の婚約者候補を絞る夜会が行われるそうですよ。対象者は学園に通う方からデビュタントをすませたご令嬢と幅広いとのことです」

「デビュタントが基準とは、それはまた随分と思い切ったことをしますね」

「国王陛下のお妃様のどなた方がご懐妊なされば別ですが、王族男性はホスタ様以外となりますと年齢が開いてしまいますから。『守護』に任命されたご子息も参加なさるとか」

「なるほど、『守護』の方まで広げるのでしたらデビュタント済みのご令嬢まで年齢を下げても納得がいきますね」

「幼い頃から婚約者を決めることに関してはメリットもございますがデメリットもございますわ。多感な時期になれば誘惑も多くございますし惑わされる方が出てしまうのは歴史が証明しておりますもの。クロトン様も伴侶をお決めになったのは最近でございます。それだけ次代への対応は慎重にしていらっしゃるのでしょうね。お選びになった伴侶のほとんどが問題なくそのまま妃になれそうとの事でございますもの」

「お妃様に選ばれないのはやはりあの方でしょうか?」


 基本的に血統も能力も優れている方が伴侶になりますが、わたくしの遺伝子上の父親のように血統だけで選ばれたり、能力だけで選ばれたり、見た目を重視して選ぶ場合もございます。

 生物的本能が適度に血を攪拌しているのかもしれませんわ。逆に本能的に血統にこだわったりもしているようですけれどもね。


「クロトン殿下の第一妃様になるのはどなたでしょうね」

「一番の伴侶候補であり第一妃候補でいらしたナスタチウム妃は国王陛下の第六妃になりましたしね」

「ソレイユドール公爵令嬢がいいと思います。伴侶になる前は近衛騎士としてお傍にいらっしゃいましたし気心も知れているのでは?」

「確かに。でもルーフリー伯爵令嬢も捨てがたいですよ。何といっても淑女のお手本とまで言われるヘンリアス侯爵夫人が手放しでほめたたえるほどですから」


 四人が楽し気に話をしている横のテーブルでは、いつものようにスノーフレークさんがホスタ様たちに一方的に話しかけているようでございます。

 本日はフィリアス先生も参加なさっていらっしゃいますね。

 まったく、教職員採用担当者があまりにも毒されすぎていて随分大掛かりな処置を取る事になってしまって面倒でございましたわ。

 けれども、フィリアス先生の手管に落ちている方はまだいそうですわね。

 今のところは生徒への被害は出ていないようでございますけれども、そういった分別はあるという事なのでしょうか?


「婚約者か、僕が言うのもなんだけど結婚相手を決めるのは大切ですよ。責任がある立場ならなおさらですね」

「でも、ダチュラ様は結婚してないですよね」

「僕には君が居るからね。僕の心をつかんで離さない悪い子だ」

「やだー、ホスタ様達の前でそんな事言ったら可哀想ですよ。あっ、そういえば見てくださいよホスタ様。このワンピース素敵だと思いませんか? ダチュラ様が買ってくれたんですけど、この刺繍とか細かくて素敵ですよね。えっとなんとかっていう高級店で作ってもらったんですって」

「気に入ってもらえてなによりだ。あそこの店のオーナーとは色々と親しくしていてね。スノーフレークに似合う物をまた仕立ててもらおう」

「本当に? 嬉しいです! ドレスじゃないのはちょっと気に入らないですけど、クラスで私だけドレスだったら皆が気を遣っちゃいますよね。私って周りの人の事を気にしちゃって遠慮がちな所が欠点ですね」

「Hクラスだけじゃなく平民クラスなら仕方がないね。いっそ家の養女になれば貴族クラスに入る事が出来るけど」

「本当ですか! あ、えーっと……」

「ふふ、冗談だよ。貴族とはいえうちはしがない男爵家だ。我が家では君を満足させてあげる事は難しいよ」

「も、もうっ。私は贅沢なんて望まないですよ。前みたいに普通に暮らせればって思ってるだけです」


 その前みたいって、まさかとは思いますがエッシャル大公家の資産を食いつぶして贅沢をしていた頃の事を言っているわけではございませんわよね?

 聞こえてくるお話ですと、今は使用人もやとっていらっしゃるそうですし、平民としては十分に贅沢なのではないのでしょうか?


「今の生活もいつまで続くやら」

「え? バーベナ様、何か言いました?」


 ボソリと呟いたバーベナ様の言葉にスノーフレークさんが聞き返しましたが、バーベナ様は返事をなさいませんでした。

 そういえば不敬罪で訴えると言っていらっしゃいましたものね。

 訴えが成立したら賠償金を支払う義務がございますが、大丈夫なのでしょうか?

 もうお渡ししてしまっているお金をどう扱われても構いませんが、遺伝子上の父親やその愛人のように足りないからもっと用立てろなんて世迷言を言わない事を願いますわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ